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フリップ伯爵の訪問 ①

マリアンヌ視点に戻ります。

 夜会の次の日、フリップ伯爵がいらっしゃるそうで、私も兄様も同席するように言われました。


「お嬢様、フリップ伯爵夫妻と長男シードル様がお見えになりました。応接室へいらっしゃるようにとのことです。」


 シードル様がお見えになるということは、第一夫人がご一緒なのかしら?


「フリードリッヒ様のお母様がご一緒です。」


 さすがユリね、顔を見ただけで私の言いたい事がわかるなんて!でしたらどうして、シードル様がご一緒なさってるのかしら?行けばわかりますわよね。


「わかったわ。」


 応接室へ向かうと、そこには、フリップ伯爵、第二夫人、そして、シードル様が座ってらっしゃいました。席へ着こうとすると、お父様がフリードリッヒ兄様と一緒にいらっしゃいました。


 席を立とうとする3人を制して、リマンド侯爵は席に着き、フリードリッヒとマリアンヌに座るように促す。全員が席に着いたところで、思い詰める様な表情をしていたシードル様が口を開いた。


「マリアンヌ嬢、知らなかったとはいえ申し訳なかった。婚約破棄の原因が、リフリードがジュリェッタ嬢に想いを寄せたことだとは。それも、2人が出会った場所がリフリードの魔法学の先生の家。私が、先生の家に行くとき私の従者を付けていれば、手遅れにはならなかったものを。」


 シードル様は悲壮な顔をしながら、頭を下げて下さいました。


「頭をお上げ下さいシードル様、私もリフリード様に自分では気が付かない間に傷つく言葉を沢山言っていましたわ。

勿論、一方的に婚約破棄されたことは傷付きました。でも、婚約を破棄されて、フリードリッヒ様と過ごして気付くことができましたの。あのまま、リフリード様と過ごしていても、きっと何処かで壊れてしまいましたわ。これで良かったのです。」


 ここ数日、兄様と一緒に過ごして感じたことを素直に伝えました。私の言葉にシードル様は顔を伏せたまま何か考えてらっしゃるみたいです。


「で、母さんがどうしてここにいるんだ。」


 フリードリッヒが不思議そうにフリップ伯爵に尋ねると、その言葉にフリップ伯爵は夫人と不思議そうに顔を見合わせた。


「手紙に書いていたでしょう?まさか、読んでいないのですか?」


 夫人は呆れたという風にフリードリッヒに尋ねた。


「ああ、そう言えば、近衛兵団の寄宿舎から帰る日に手紙を貰ったな…。いや、どうせ大した事じゃないだろうから…。」


 フリードリッヒは罰が悪そうに頭をかいた。夫人は溜息を吐き言葉を続ける。


「読んでないんですね。今度、殿下に治癒魔法を教える仕事を拝命したと書いたんですよ。我が家は、代々、王族に治癒魔法を教える仕事をしていますので、今回は私が選ばれたと書きました。」


 そう言えば、陛下に治癒魔法を教えたのは、兄様のお婆様だとお母様、言ってらっしゃいましたわね。


「そうだったんだ。」


 兄様、本当に手紙読んでいらっしゃらなかったんですね。


「今日は、皇女様と一緒にお城へ向かうので、こちらへ出向いたのよ。」


 夫人はやれやれという風にフリードリッヒを見た。


「そういう事。いや、兄上に親父、母さん、よくわからない面子でいらっしゃったので何事かとね。」


「別室で皇女様をお待ちしてもよかったんですけど、マリアンヌ様に会いたかったので、お二人とご一緒したの、マリアンヌ様、益々お綺麗になって!」


 ふふふと楽しそうに夫人は笑いました。


「まぁ、嬉しいですわ。先生!先生もお変わりなく。」


 私に会う為に此方で待ってくださってるんでしょ!嬉しいに決まってます!


 ノックがあり、リマンド侯爵夫人が入って来た。


「ポリーナ、お久しぶり!なかなか会えなかったから寂しかったわ。フリップ伯爵、ポリーナの一人占めは宜しくありませんわよ。ポリーナは私のでしたの、たまには返していただきませんと!」


 リマンド侯爵夫人は、フリップ伯爵を軽く睨むとフリップ伯爵夫人の手を取った。


「お久しぶりで御座います、皇女様。」


 確か、フリップ伯爵夫人はお母様が城にいらっしゃったときの側仕えだったと聞いていました。かなり、お気に入りだったんですね。


「リマンド夫人、申し訳ないが、ポリーナは今は私の妻なんですよ。」


「だから、たまにと言っているのです。本当は、ここに一緒に住んで貰いたいのに…」


 まだ、何か言いたそうなお母様を制して、先生は促します。お母様の扱いが上手です。


「皇女様、お城へ向かいませんと、御約束のお時間になってしまいます。」


「そうね、わかったわ。」


 フリップ夫人の言葉に促され、2人は部屋から出て行った。


 嵐のようね、お母様。


 私が物心つく前にフリップ伯爵夫人が、我が家に一緒に住んでらっしゃった理由がこれでハッキリわかった気が致します。


 やれやれというふうに、セルロスの入れたお茶に口をつけてリマンド侯爵が口を開いた。


「さて、本題に入ろう。フリップ伯爵が来たということは、家庭教師がどこと繋がっていたかがわかったんだな。」 


「はい、リフリードの家庭教師を探したシードルから話した方が良いと思いましてな、それで一緒にきたんです。さあ、シードル」


 フリップ伯爵がシードルに目で合図すると、シードルは意を決したように、ポツポツと話し始めた。


「実は、リフリードは最近まで全く魔法が使えませんでした。努力せずに使えないのなら心配しなくても良いのですが、かなり熱心に練習していました。母もかなり心配をしていて…。それで、使える伝手を全て使い、沢山の人に手紙を書き教えて頂いたのが、ミハイロビッチ魔道士です。元子爵で、魔法学園の卒業生ということで連絡を取り、家庭教師になって頂きました。」


 リフリード様、魔法は苦手と仰っていらしたのですが、全く使えなかったとは初耳です。それも、かなり努力なされてたと…。


 本来、新興貴族でない限り、貴族同士の婚姻で生まれた子供は教えなくても魔法が使えるのが普通だ。使えないということはまず無い。この年で使えないのは魔法が使えるはずのない平民の子か、貴族と魔力の無い者から産まれた場合のみだ。


 それは、皆様かなり焦られたはずです。使えないなど有ってはならないことなのですから。


「ミハイロビッチ様のお母様は新興貴族家から嫁がれたので、全く魔力のない方だったらしく、ミハイロビッチ様も魔法を使えるようになるのに苦労されたとか…。それでも、魔法学園に入学され良い成績を収められたと聞いて、藁にもすがる思いでたのんだのです」


「リフリードが魔法を全く使えなかったというのは本当なのか?」


 リマンド侯爵は、伯爵に尋ねた。フリードリッヒも知らなかったらしく驚きを隠せないでいる。


「私もその事実を知ったのは、恥ずかしながらリフリードの婚約破棄後なのですが、本当です。全く使え無いのはあってはならないことなので、妻がリフリードに苦手だと言えと言っていたみたいで…、ほんの一部、妻の側近の2名のみが知る事実でした。苦手ならば、人前で使うのは心苦しかろうと誰もリフリードに魔法を強要する者もおりませんでしたので。」


 伯爵は、大きな溜息を吐いた。その場は重い雰囲気に包まれる。これは、リフリードの出生が疑われかねない事実だ。


「私も、フリードリッヒもどちらかと言うと魔法は得意な方でしたので…、それで、意固地になって中々人前で魔法を使うことが出来ないと思っていました。それが本当に魔法が使えないと聞いた時は衝撃的でした。」

 

「それで、俺に手紙が来たのか…。」


 フリードリッヒは小さく息を吐く。


「ああ、その事実を知って、慌てて魔法学の家庭教師を探したという訳だ。」


「で、ミハイロビッチ魔道士は誰の紹介だ?」


 侯爵は話の核心を突く。


「はい、クシュナ夫人の紹介です。紹介というより、クシュナ夫人からミハイロビッチ魔道士は若いのに素晴らしい魔道士だと伺って、それで、こちらで調べて依頼しました。」


 クシュナ夫人、たしかルーキン伯爵が好意を寄せてらっしゃる美しき未亡人。ここで繋がりましたわ。


 侯爵は言葉の先を促す。


「どこで、クシュナ夫人と会ったかね?」


「ルーキン伯爵邸で会いました、父の代理で道の整備に関する話し合いがルーキン伯爵邸であり、ルーキン伯爵を待つ間に通されたサロンに先にクシュナ夫人がいらっしゃって、そこで…」


「ルーキン伯爵とミハイロビッチ魔道士はお知り合いですの?」


「彼自身がというより、彼の故父がルーキン伯爵と親交があったといったほうがよいな」


 フリップ伯爵が私の質問に答えて下さいました。


「ミハイロビッチ魔道士のお父様がですか?」


「ああ、ミハイロビッチの父が領地を売った相手がルーキン伯爵だ。」


 では、ミハイロビッチ魔道士が爵位を返上されたことを知ってらっしゃった…。クシュナ夫人は意図的にシードル様にミハイロビッチ魔道士のことを話された?でも、そもそもリフリード様が魔法を使えないことは知らなかったはず。では、シードル様が魔道士の家庭教師を探しているという情報だけで?ミハイロビッチ魔道士をシードル様に紹介した?ミハイロビッチ魔道士はルーキン伯爵と仲間?


 わからないわ。




 


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[良い点] フリップ伯爵だったり、フィリップ伯爵だったり、どちらですか?
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