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リマンド侯爵夫人の夜会 ③

 本日は、久々のダンスレッスンです。お母様主催の夜会で無様なダンスは出来ませんもの!兄様も一緒に練習することになりました。私、ダンスは好きなんですよ、夜会も。ただ今迄、領地の特産品の知識や、それの取引先、分家の成り立ちやその家族、領民のことを学習するのに忙しくて、夜会にあまり参加できなかっただけで。


 私のダンスの先生はセバスです。領地からわざわざ来てくれました。お抱えの楽団も呼んで本格的なレッスン。


「城の舞踏会では基本、警護だったからね。久しぶりだから踊れるかな」


 なんて兄様は仰ってます。


「そんなに暫くぶりですの?」


「ほら、基本的にはうちは兄上が参加すれば問題はないから。うーん、何年ぶりだろう」


 ダンスホールには、セバスと何故かセルロスとユリが待っていた。


「セバス、わざわざ来てくれてありがとう」


「お嬢様のレッスンは他の者には任せられません」


「セバス、また、宜しく頼むよ」


「フリードリッヒ様、このセバスにお任せ下さい。夜会迄にはしっかりと仕上げさせて頂きますぞ」

 

 セバス、張り切ってますね。頼もしい限りです。


「お手柔らかに頼むよ」


 お兄様は苦笑いを浮かべてます。


「お嬢様、フリードリッヒ様、今回はセルロスとユリも一緒にレッスンに参加することをご了承下さい」


 後ろで控えていた二人がぼそっと溢す。


「本当に参加するんですね」


「うわー、マジか」


 セバスが後ろの二人を見て、にっこりと笑う。


「ひっ」


 ユリとセルロスは小さな悲鳴をあげた。


 楽団が素敵な音楽を奏でる中、セバスの激が飛ぶ。


「ユリ、ステップがズレておる」


「ハイ」


「セルロス、背筋を伸ばして!」


「ハイ」


「お嬢様、ユリ、ターンはもっと優雅に」


「ハイ」


「わかりましたわ」


「ユリ、セルロス、二人はお嬢様とフリードリッヒ様のお子様が生まれたら、ダンスを御教えすることになるのですぞ。こんな動きでどうするんです。」


 セバス、何気にとんでもない事をサラッと言ってます。 

 私、ステップ踏み間違えそうになりましたわよ。

 それより、ビックリしたのが誰も突っ込まないことです。


「フリードリッヒ様、顔が硬いですぞ」


「セバス、余裕がないよ」


 私は兄様のリードで踊ります。久しぶりと仰ってましたが、全くそんな感じは致しません。すごく踊りやすいです。流石、騎士様、私がヘトヘトでも全く息が上がっていらっしゃらない。


 二時間程度の練習をみっちり行いました。


「楽団の皆様、ご苦労様でした。あちらに、お茶をご用意いたしますので、片付けがお済みになりましたらどうぞ、お寛ぎ下さい」


 セバスは恭しく頭を下げて楽団の皆様を誘導し、疲れて座り込んでいる二人に指示を出す。


「セルロス、ユリ、だらしない。何時迄もへばってないで直ぐに皆様にお茶をお持ち致しなさい」


 セルロスとユリは急いでホールを後にした。


 鬼とか、悪魔とか小さい声が聴こえる気がするのは気のせいでしょうか?


「全く、あの二人は、侯爵家の使用人として鍛え直す必要がありますな」


 セバスが溢しましたが、聞こえなかったことに致しましょう。

 

「お嬢様、とてもお上手でしたぞ」


「ありがとう」


 セバスにお褒めの言葉を頂きました。とても嬉しいです。


「フリードリッヒ様、少しステップをお忘れです。夜会迄練習をされるのが宜しいかと存じます」


 フリードリッヒは苦笑いを浮かべ、マリアンヌを見る。


「ああ、わかったよセバス。情け無いな、君の足を踏まないように気をつけるので一杯一杯だよ。マリー、良かったら夜会までダンスの練習に付き合って欲しいんだけど?」


 全く、そんなことないと思いますけど。凄くお上手でしたのに、でも、努力を惜しまない人は大好きですわ。


「はい、喜んでお付き合い致しますわ」


「マリーと毎日踊れるなら、ダンスのレッスンも楽しみだ」


 兄様はニコニコ御機嫌です。私も兄様が好きか検証しなければなりませんし良い機会です。しっかりお付き合い致しますわ。


「お嬢様、フリードリッヒ様、この後そのまま旦那様の執務室へ一緒に御同行下さい」


 セバスは優しいおじいちゃんの顔から執事に戻り二人に告げる。マリアンヌとフリードリッヒは無言で頷いた。


 大事な話があるのね。


 セバスと共に侯爵の執務室に入る。


 リマンド侯爵は腕をまくり上げ難しい顔をして、書類を片手にクロウに指示を出していた。机の上には書類が積み上がっている。


「旦那様、お嬢様とフリードリッヒ様を御連れ致しました」


 セバスが恭しく頭を下げると書類の山から顔を上げた侯爵が此方をみる。その顔はいつもの優しい顔に戻っていた。


「ああ、セバスありがとう。二人ともかけてくれ」


 マリアンヌとフリードリッヒは勧められるまま執務室のソファーに座ると絶妙なタイミングで侍女がよく冷えた果実水と紅茶を運んできた。


 流石セバス、いつ指示をだしたのかしら?セバスの卒のない動きにいつもながら感心するわ。 


 ダンスで渇いたのどを果実水で潤す。


 はぁ、生き返りますわね。ダンスの後の果実水は格別です。


 侍女が下がると、侯爵とセバスもソファーに座った。

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