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美人侍女の憂鬱 ②

アナスタシア目線まだ続きます。

 城の正面の西は庭園になっている。四季折々の花が楽しめる素敵な場所。 


 そんな素敵な場所で、今、会いたくない人に私は捕まってます。最近、上手く避けてたのに。よりによって、こんな目立つ所で捕まるなんて、最悪。


「ですから、フリードリッヒ様は私のことが好きなんです。」


 もう、私のことは諦めてよ。


「どういうことだ。君は、俺と結婚する予定ではないのか!」


 確かに、結婚してって言われたわよ。はいって言ったわ。でもただの口約束じゃない。手紙書いただけで、何でこんなに責められなきゃいけないの!


「ですが、頂いた手紙には返事をするものでしょう」


 ああ、もう。


 あっ、彼方からフリードリッヒ様がいらっしゃるわ。この様子を聞き付けて来てくださったのね。


 もう、この際はっきりとアナスタシアが好きだ、お前は諦めてくれって、セルゲイに言って下さい。そしたら、私もフリードリッヒ様の方が好きなの、ゴメンなさい。セルゲイ様、貴方も素敵な方を見つけてって言うわ。


「そいつは、何処のどいつだ!俺がハッキリと話を付けてやる。俺の婚約者に粉を掛けるなと言ってやる!」


「近衛騎士のフリードリッヒ・モリス・フリップ様です。あちらにいらっしゃいます」


 フリードリッヒ様が此方へ来ます。イライラしてらっしゃいますわよねゴメンなさい、私が美人なせいで迷惑かけて。


「おい、お前がフリードリッヒだな。」


「ああ、そうだが。何か用かい?」


「俺は第一部隊所属のセルゲイだ。単刀直入に言おう、アナスタシアは俺の婚約者だ。粉を掛けないで貰いたい。」


「失礼ながら、粉を掛けた覚えはない。彼女の方からちょくちょく手紙を貰ってね。迷惑だからもう寄越さないでくれと返事をしたのだが。それでも、手紙を寄越してくる。鬱陶しいことこの上ない。婚約者なら、しっかり捕まえておいてくれ」


 ちょっと、どういうこと?

 

 薔薇のチョーカーを購入される位私のことが好きなのではないの?


「どういうことだ、アナスタシア!お前の言っていることと全く違うぞ!フリードリッヒは、お前が言い寄ってくると言っているじゃないか!!」


 まって、フリードリッヒ様は私が好きなはずよ。


 目に涙を浮かべて、アナスタシアはセルゲイを上目遣いで見る。


「違うの、違うの、フリードリッヒ様が嘘をついているのよ。貴方が怖いから…」


 遠目でも争っているのが丸分かりなのだろう、近衛兵隊長がフリップ伯爵と共に慌ててやってきた。


「一体どうしたんだ、騎士ともあろう者が城の正面で喧嘩とは!」


 怒気をはらんだ声で一喝した。


「自分は第一部隊所属セルゲイであります。この、フリードリッヒ殿が、私の婚約者に言い寄っているので、止めるよう促しておりました」


「本当かね、フリードリッヒ」


「いいえ、彼女とは口を利いたこともありません。手紙が送られてくるので、もう送らないよう注意を促す返事を書いたのが一度だけです。どうぞ、調べて頂けましたらわかります。丁度、ここに先程届いたアナスタシア嬢からの手紙があります。まだ封を切っておりません。宜しければこれもお調べ下さい。」


 手紙の束をカバンから出し、アナスタシアからの物を近衛兵隊長へ渡す。


「いやー!」


 何それ、昨日出したわたしの手紙、封も切られてない。


 それを近衛兵隊長へ渡すなんて


 酷いわ。酷いわ。


 アナスタシアが崩れ落ちる。頭を抱えて泣き出した。


 そんなつもりじゃなかったの。

 

 そんなつもりじゃなかったの。


 近衛兵隊長はアナスタシアを侍女長の元へ連れていった。


 アナスタシアは侍女長と近衛兵隊長にたっぷり絞られ、2週間、離れの塔での生活を命じられる。


「ご迷惑をお掛け致しました。この子は、悪い子じゃないけど思い込みが激しくて」


 侍女長は溜息をつきながら、近衛兵隊長へ謝る。


「処分を考えなければ、なりませんね。」


「第一部騎士団長がいらっしゃいました」


 セルゲイが第一部隊に所属しているため、彼は、第一部騎士団長を呼びに行った。部屋には、第一部騎士団長、侍女長、近衛兵隊長そして、セルゲイ。セルゲイが見守る中、3人が、今回の騒動をどう収めるか話し合っている。


 第一部騎士団長がセルゲイに真剣な顔を向けた。


「セルゲイ、アナスタシア嬢と婚約しているのは本当か」


「はい。婚約しています。第一部騎士団長に届けた通りです」


 騎士は、婚約が決まると自分の所属する部の騎士団長へ届ける義務がある。命を落とすかもしれない仕事だ。もしそうなれば、婚約者にも義援金が支払われるからだ。


「では、今回の騒動はお前にも責任がある。アナスタシア嬢と婚姻後、ウィリアムズ辺境伯父の部隊へ配属する。」


「はい。ご配慮、ありがとうございます。」 


 セルゲイは、3人に頭を下げた。


 アナスタシアは、侍女長からこのことを聞いた。寛大な措置らしい。本来なら、アナスタシアはひとり辺境へ送られ、労働者として生活する。しかし、セルゲイが結婚してアナスタシアの身元引き受け人になってくれたおかげで、セルゲイと共に辺境へ行く。身分は騎士の妻だ。


 納得がいかない。セルゲイには、感謝するけど。


 2週間の謹慎後、結婚迄の半年は元の持ち場に戻れると言われた。

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[良い点] 話は面白い [気になる点] 正直なところ・・・ 視点の使い方がおかしいところが・・・多い 自分の母親を「侯爵夫人」としたり、アナスタシア視点で、「アナスタシアを侍女長の元へ連れて行った」と…
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