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城にて ②

「勇者の娘であるジュリェッタ嬢は、治癒魔法が使えますのよ。それも、王族並の。陛下が、謁見の際に確認されましたので事実ですわ。巷で、聖女と言われているそうですわよ。」


 皇后陛下が不思議そうにおっしゃっていらっしゃいます。


 それも、そのはずです。王族と同じく使えるのであれば、上皇陛下又は、上皇陛下のお兄様の子供である必要があるからです。

 

 貴族の者の中にも治癒魔法が使える者も居る、王族の血が入ってる人達だ。しかし、血と同じく、治癒魔法の力も比例して弱くなる。その上、王族であれ特別な鍛錬をしなければならない。マリアンヌの母や、ジョゼフ殿下はその特別な鍛錬を積んでいない為、治癒魔法が使えない。


「ジュリェッタ嬢は何色の髪と、何色の瞳ですの?お父様かおじ様の子なら、金の髪に青瞳のはずですわ」


 お母様やジョゼフ殿下、陛下もそうです。王族の男性の子供であれば金髪碧眼は必ず遺伝する。


「ワシは、身に覚えはないぞ」

 

 疑われたおじい様は必死ですわね。


「水色の髪に、赤い瞳ですわ」


 皇后陛下はだから不思議ですのよと首をかしげる。


 治癒魔法を使えるものは黄色系統の髪と青系統の瞳を持つ。それは、市井の者でも同じだ。


「羨ましいですわ。」


 と侯爵夫人が溢すと上皇陛下が呆れる。


「お前は、鍛錬をしていないだけだろう。」


「でも、マリーは治癒魔法使えますわよ。ルーン文字も読めますし、語学だって堪能です」


 お母様、それ、お母様が威張ることではありません。それも、おじい様相手に。


「やはり、ジョゼフを支えられるのはマリアンヌしか居らんと思うのだが」


 おじい様、今日はジョゼフ殿下をかなり推しますね。ジョゼフ殿下、王族ですから見た目は素敵ですよ。まさにリアル王子様です。でも、中身がリフリード様より酷いですもの、努力がお嫌い、私の一番嫌いなタイプです。


 私は、努力して治癒魔法を使えるようになったのです。文字も!語学も!


「無理ですわ、お父様。我がリマンド侯爵家でも、お金も手も掛かる穀潰しを2人も養えませんわ。私ひとりでも夫は大変そうですのに。それに、ろくでなしの世話をさせる為に、マリーの教育に力を入れたのではありませんわ。」


 お母様、ご自分のことをお金も手も掛かる穀潰しって。


 確かに我が家は、家令や侍女、下男、下女の雇用や采配など本来なら奥様がやるべき仕事もお父様がやってらっしゃいますわね。


 お母様のお仕事は夜会への出席、お茶会への出席、夜会の催し(出す料理の選定、ドレス選び、招待状の作成)、お茶会の開催。全て、お金のかかることばかりです。でも、それも侯爵夫人として大事なことなのです。


 それにしても、ジョゼフ殿下のこと、ろくでなし呼ばわりされていますね。よっぽどお嫌いなのですね。


「しかし、マリーが駄目となると…、他の侯爵家に婿入りさせるか。しかし、スミス侯爵家は皇后の兄が継いだばかりだしの、他の2つの家は軍家だ。文官にするなりして、城に置くか、だが…。どれも、なかなか難しくてなぁ。それに、王族の婚姻は侯爵家の娘と決まっておるからなぁ」


 おじい様は困っていらっしゃいますわね。


「おじいたま、ダメ。マリはボクのなの」

 

「殿下ありがとうございます。でも、殿下が大きくなられる頃にはマリーはおばさんですよ」


 殿下、かわいい。かわいいわ。天使だわ。


「それでも、いいもん」


「ありがとうございます、マリーは嬉しいです」


 そんな、うれしいこと言われると顔が緩みっぱなしになってしまいますわ。


 もしかして、フリードリッヒ兄様も今の私と同じ気持ちで、私に接していらっしゃるのでは?


 なら、あの恥ずかしい言葉も、態度もわかる気が致します。


 不意にノックする音と共に、陛下とジョゼフ殿下が入って来た。


「姉さんと、マリーが来ていると聞いたんで、ジョゼフも連れて来たよ。あっ、マリー、堅っ苦しい挨拶はいらないからね」


 ああ、噂をすればなんとやらです。


「陛下、ジョゼフ殿下、ご無沙汰しております」


「久しぶりだね。どうしても外せない用事があってね、遅くなってしまったよ」


 2人は椅子に腰を降ろす。


「マリー、勇者の娘の件は、皇后に聞いたかい?」


 陛下が難しい顔をして尋ねられます。


「はい、先程伺いました」


「よし、話は早い。魔法学校は魔力の強い者、高位の魔法が使える者は15〜20歳の間の一年間、必ず通う義務があることは知ってるね」


 マリアンヌはうなづく。


 魔法学校は、半年毎を単位としている。2期編成だ。1月入学して12月卒業か、7月入学して、6月卒業のどちらかを選べる。AクラスからZクラスまでの7クラスがあり、成績や魔力を加味してクラス編成が行われている。成績優秀者は、魔法省への就職も可能だ。

「ジュリェッタ嬢も通うことになった。マリーは今回のごたごたのせいで、正式な婚約をしてからの入学だからジュリェッタ嬢の半年後になるな。リフリードはどうするか聞いてるかい?」


「はい、リフリード様は当初の予定通り、この冬入学されます」


「そうか、少し安心したよ。実は、ジョゼフもこの冬に入学する。本来なら、フリードリッヒを護衛にと考えていたのだが、彼が君の婚約者になったのでそれが出来なくなってね、別の者に任せることになったのだよ。ジョゼフは人見知りだからね」


 へー、ジョゼフ殿下もこの冬入学ですか。治癒魔法は使えるようになったんでしょうか?私には関係ありませんが。


「良かった。マリアンヌと一緒に入学でなくて!」


 ジョゼフ殿下は、声高々に言った。


「お前と一緒の教室なんて最悪だからな!」


「そうだよな。マリーは優秀だから、比べられたらキツイよな。本当、女なのが勿体無い、男なら、義兄の次の宰相決定なんだが」


 陛下、ジョゼフ殿下の気持ちに気がついてません!

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