断罪 ②
今回、短いです。
沿道には街じゅうの人が立ち並び、大歓声の中を騎士達が隊をなして城へ向かう。若い女達は花を撒き黄色い歓声をあげる。子供達は、目を輝かせ羨望の眼差しで観る。王都は今、正に祝福ムード一色に染まり、王都は歓喜の色で包まれる。
そのパレードを意気揚々と行進するバルク男爵を、憎しみを込めた目で睨む一人の男がいた、ゲラスだ。
ゲラスはジュリェッタの甘言に乗り全てを奪われた。やっとの想いで手に入れたギルド職員と言う地位も、長年努力して得た冒険者仲間からの信頼も、依頼を通して得たルーキン家からの信用も全てを一瞬にして失った。
ゲラスの歳では、もう冒険者としてのし上がることは不可能だ。待っているのは悪党に堕ちる道か、野垂れ死に。悪党に堕ちたとて、捕まって拷問にかけられ殺されるのがオチだ。
皆に勇者として奉られ、羨望の眼差しで見つめられる元仲間。お互いに唯一の相棒として長年助け合った相手。昔、襲った貴族の馬車に乗っていた令嬢に惚れて、妻にしたがったあいつに譲り俺は手を貸した。その礼がこれか、娘をけしかけ俺を破滅の道へと導くことか!どうせ地獄に堕ちるなら道連れにしてやる!
短剣を握りしめ機会を伺う、癖は覚えている。狙うはいつも防御の甘い首だ。竜殺しなんて持て囃されているが、実力も頭も俺の方が数段上だ。
様子を伺い短剣を構える。タイミングを見計らい、バルク男爵の喉を掻っ切る、赤い血飛沫があたり一面に舞い、背中に鈍い痛みを感じたかと思うと石畳が目の前に近づいて来た。
キャーーーー!
女性の甲高い叫び声が響き渡り、辺りが騒然と成る。行進が止まり、兵士達が遺体を運び出し、水を撒き血を洗い流す。
再び、何事も無かったかのように、騎士達は行進を始めラッパの音が響き渡る。女性や子供達が二階の窓や道の脇から花を撒き始める。徐々に歓声が戻り、先程の事件など無かったかのように王都は祝福ムードに包まれた。
涙を流し唇を噛み締めて、その様子を物陰から見詰める若い女性が一人。粗末な灰色のローブを纏い、フードを目深に被り、顔は木製の白い仮面で覆っている。
彼女はそっと一人、裏通りを城のある方へ歩いて行く。手には冒険者時代に愛用していた杖を携えて。
後二話くらいで終わりの予定です。




