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事件の結末 ジュリェッタ

 どこで失敗した?ゲームで断罪されるのはマリアンヌだった。


 ルーキン家からの手紙は、寄親であるリマンド家の令嬢であるマリアンヌを陥れようとしたとして、養子縁組を破棄するとの通知だった。


 そして、学園からもう一通、退学通知書。


 これで、学園に通う手立ては無くなっちゃった、手紙の様子じゃあジョゼフ殿下との婚姻の話も立ち消えたようだし。


 はーぁ、どうしようかな、フリードリッヒはもう騎士では無いから流石に会いに行けないし。気晴らしに街をふらつこうかな、良い手立てが見つかるかも知れないし。


 服を選び支度をする、最近は、ナタリーやメイド達がしてくれていたが自分一人でとなると、貴族らしい服を着ることが出来ない。


 どうして、貴族の服って背後ボタンやコルセットなど一人で着られない物が多いのよ!バルク家にもメイドは居たのに、今は誰も雇っていないみたいだし…。お父さんが戦争に行く前に暇をだしたのかな。

 

 イライラしながら、やっとの思いで服を着て髪を整える。


 貴族になる前は全く気にもならなかった装いも、ナタリーやルーキン家、リマンド家のメイド達に整えて貰っていると、今の自分の格好が酷く惨めなものに思えてくる。


 そう言えば、フリードリッヒに会ったのは、この決して褒められたものでは無い格好の時ばかりだったな。もしかして、それがいけなかったのかな?フリードリッヒはお嬢様であるマリアンヌが好きだったのよね、会った私の格好は町娘が良いところだったわ。出会いかたを間違えてたんだ。


 外套を着てフードを被る。淑女教育をまともに受けたため、従者の一人も従えてない自分が惨めに思えたからだ。


 新しく、メイドと下男くらい雇わなきゃ、これから、自分の手足として働いて貰わなきゃならない。どこに頼みに行けばいいんだろ…。リマンド邸では、孤児院の子を雇ってた、でもそれは避けたい。孤児院なんて庶民以下でしょう、侮られるわ。そうだ、ギルドで聞いてみよう、あそこなら多少は顔が利くもん。


 ジュリェッタは意気揚々とギルドへ向かった。


 おかしいな、なんだか私を見る目が違う感じがする。普段なら、皆が駆け寄って来てくれていた。何か困って無いかい?バルク男爵は元気かい?と、気軽に声をかけてくれる。でも、今日は違った、ジュリェッタが入ると一斉にこっちを見たが、皆あからさまに目を逸らし、コソコソと話し始める。声を掛けようとするとさっと避けられる。


 そう、私の前世でよく起こったこと。一番古い記憶は、小さい頃一人で公園へ遊びに行ったとき、そこには、同じくらいの子とそのお母さんであろう人達。一緒に砂場で遊びたくて近づいたら、さっと子の手を引いてブランコの方へ行っちゃった。砂場に居た他の子達も手を引かれて他の遊具へ。


 ブランコへ行くとそこに居た子達は蜘蛛の子を散らすようにいなくなった。直接何か言われたわけじゃない、大人達はこっちをチラッと見て、何か囁き合っているだけ。でも、すごく居心地が悪かったのを覚えている。 


 ギルド職員に視線を向けると、あからさまに逸らされる。


 これ、あきらかに歓迎されて無い、話しかけるなってことだよね。


 ジュリェッタはギルドでの情報収集を諦め、市場へ向かう。何処かで食事をして、食品庫の補充もしておきたい。本来なら、先に下男とメイドを雇って彼らに行かせればいいのだが、どこで紹介して貰ったらいいかわからない、冒険者ならまだしも、貴族の婦女子が一人で三食大衆食堂に入るわけにもいかない、ましてや、自分は冒険者の中でも有名人だ、外食に頼れない以上ある程度は購入しておくべきだ。まあ、貴族のお嬢様は自分で荷物すら持たないけど。日傘だって侍女がさしてたし。


 見た目がアレで容量もあまり多くないけど、アイテムボックス持っていて良かった。流石に、肉や野菜を肩にかついでウロウロするわけにはいかないもんね。


 途中のドレスを買ってくれる古着屋で、家から持ってきたドレスを二着売る。市場で従者を紹介してくれる所を教えて貰えれば、その足で向かう予定だったからお金がいる。


 なんだろ、街の人達から敵意を感じる。ギルドほどはあからさまではないが歓迎はされていないな。


 何があったんだろう?私、何をしたっていうの?


「人殺し!お父ちゃんを返せ!」


 小さな子供に石を投げつけられる。コントロールが甘かった為、石はジュリェッタの横に転げ落ちた。


 その子は、慌てた様子の祖母であろう老女に手を引かれて路地に姿を消した。老女の去り際にジュリェッタに向けた憎しみの籠った目に脚が震える。

 

 周りをよく見ると、先程の老婆と同じ殺意のこもった視線を幾つか感じる。ジュリェッタは怖くなって家へ走って帰った。急いで家へ駆け込み鍵をかけ、全ての部屋のカーテンを引く。


―――人殺し!


 先程の子供の言葉が頭から離れない。


 違う、違う、違う、私は人殺しなんかじゃない!


 私が売る様に頼んだのは痛み止め!麻薬なんかじゃない!それに、この事件の犯人はゲラスおじさんで処理されている。まさか、ゲラスおじさんが私に頼まれたって言葉が世間に出回っている?でも、そんなこと信じる人がいるかな?どう考えても、私の方が信頼があるし、なら、どうして、街の皆はゲラスおじさんの言葉を信じた?

 

 情報が欲しい、籠もっていても仕方ない。


 ジュリェッタは覚悟を決めて、街娘が着る服に着替え髪を編み込みフードを目深に被り、銀貨を麻袋に入れポケットに突っ込んだ。


 この髪は目立つからね。


 こっそりと裏口から出て市場を目指す。なるべく街の人達の話に注意深く耳を傾けながら…


 彼方此方から聞こえてくる話は、戦局と回復薬事件のこと、総指揮官として宰相閣下であるリマンド侯爵が直接辺境へ向かったというものだった。回復薬事件はジュリェッタが示唆したことになっていた。噴水の広場の投影場で、ジュリェッタと宰相閣下の遣り取りが映し出されたと知った。


 不味いな、これじゃ出歩けない。


 市場で、なるべく顔を隠して仮面とカツラ、冒険者用の古着屋、眼鏡、侍女のお着せ、生活に必要な物を買い揃える。


 冒険者仲間には裏切り者のレッテルを貼られている可能性がある。これから冒険者に戻るにしても、ソロでやっていかなきゃならない可能性の方が高いし、ギルドからも倦厭されるだろう。下手をすれば、傭兵を率いているお父さんにも影響がでる。誰も、お父さんについてこなくなる可能性がでる。


 上手くいかなかったのはこんなに早く、戦争が起こったからよ!


 冒険者仲間が使えないとなると、次に頼るのは不成者ね。あまり関わりは持ちたくはないけど背に腹はかえられない。彼らを雇うにはお金がいる。


 ジュリェッタは家に帰ると、クローゼットからドレスをアイテムボックスに詰められるだけ詰めて、侍女のお着せに着替えてカツラを被る。これなら、ドレスを売っても目立たない。侍女の振りをしてドレスを売りお金を作る。夜にでも彼らとコンタクトを取ろう。でも、その前にこの状況を打破する為の作戦を練らなきゃ。



 

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