表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
106/114

事件の結末 ②

 少し静かになった館内に投影機から、宰相閣下の声が聞こえる。


 まだ、お父様とジュリェッタ嬢お話しされていたのね。


『ああ、先読みの力は証明されたわけだ。だが、君が女神の使徒と決めつけるには時期尚早でね。何せ、その力が君のためにしか働かないのなら、そうとは言い切れないだろう?女神は愛と慈しみの神だからね。意味がわかるかな?』


『わかりません。先読みの力が証明されたのならそれでいいじゃありませんか』


「先読みの力でございますか。」


 祭司が慌て出し、神父達が騒めき立つ。


「ジュリェッタ嬢の治癒魔法の能力も持て余しておりますが、その上、先読みの方とは頭が痛い限りでございます。」


「そうだな、取り扱いが難しい。彼女は凄く奔放で常識にも疎い。ルーキン家に任せていたのだが、今やかの家にも手に余る存在だろう。」


 陛下は困ったように話してはいるが、然して困った様子はない。


『こんな所、早く出たいんです!』


 耳をつんざくような声が投影機から響き渡る。


『こんな所とは、これでも、我がリマンド侯爵家の客人用の離れなんだが。ここには、私の母も王都に来た際に泊まる。妻も友を呼びここでお泊まり会を開いているんだが。それに、貴女には、メイドを三人に下男二人をつけているではないですか。』


 また、部屋が騒めき立つ。


「メイドに下男までつけて貰って待遇が気に入らないとは。」


「自分を何様だと考えているんだ。」


「リマンド邸の離れは賓客をお泊めする場所なのだろう?立派な作りだと聞き及んでいますぞ。」


「自分を女神の化身と勘違いしているのでは?」


「たかが、一介の元冒険者風情が、かのリマンド邸にケチを付けるとは嘆かわしい。」


「あんな者が、女神の化身なわけがない、悪魔の遣いだろう。」


「鎮まれ」


 ジュリェッタへの不満がヒートアップする会話を陛下が制す。


「マリアンヌ嬢の無罪は証明された。もう、屋敷へ帰って良い。フリードリッヒ、彼女を送ってやりなさい。祭司、神父、そして司法省の者は残りジュリェッタ嬢の処罰についてこれから話し合うとしよう。他の者は自分の持ち場へ戻れ。」


 いつの間に横へいらしたのか、フリード様が私の手を取りエスコートして下さる。


「陛下、感謝申し上げます。」


 フリードの言葉に慌ててマリアンヌも、陛下へ礼を述べ礼をして謁見の間から騎士達と共に出て行った。


 フリード様と共に先程の部屋へ戻ると、ユリが泣きながら出迎えてくれた。明るくは振る舞ってくれてはいたが、随分と心配をしていたみたいで、顔は涙でぐちゃぐちゃになっていた。


「ユリもう大丈夫よ、貴女も少し休みなさい。寝られて無かったんでしょう?私は少しフリード様とお話をするから、安心して。」


 ユリはチラッとフリードリッヒを見ると、しゃくり上げたままこくりと頷くと隣の部屋へと消えて行った。


 いつもは冷静沈着なユリがあんなに泣くなんて、私のこと随分心配してくれてたのね。少しの間、ゆっくり休んでくれたらいいけど…。


「無事、疑いが晴れてよかった。だが、ジュリェッタ嬢は君が金髪であることを知っていた、だが…。」


 そう、何故陥れるようなことをしたのか…。あのまま、記帳だけ残って証言をとれる人がいなければ私は反逆罪で死刑になっていた可能性があるわ。


 ぶるりと身震いがする。


 ただの嫌がらせにしては度が過ぎているわ。まがりなりにも、城の侍女から貴族としての最低限の教育は受けたはず。婚約者であるリフリード様を取られ、その上で、フリード様が彼女のものにならないからといって…。まさか、そんな理由で…。


 崩れそうになる身体を、フリードリッヒが優しく支え、ソファーへ促す。


 キャサリンの話を聞く限りでは、ジョセフ殿下や砂漠の国に第二皇子にも媚びていたようでしたわ。女友達は、ハンソン様が依頼したキャサリンのみ。クラスのみならず、学年の女子にジュリェッタ嬢に良い印象を持つ者は居ないのでは?と、キャサリンは言っていた。


 マリアンヌと婚姻の可能性があった男性が尽く、ジュリェッタと懇意になっている。マリアンヌはフリードリッヒもそうなるのではと、不安に駆られる。一度こっ酷くリフリードに捨てられたことが、大きな傷となってマリアンヌの心に残っていた。


「大丈夫かい、マリー。」


 優しく抱きしめるフリードリッヒに、身体を預けて静かに眼を閉じた。何も言わないマリアンヌをフリードリッヒは優しく抱きしめる。


 私からリフリード様を奪ったのだから、そのまま二人で婚約でも婚姻でもすれば良かったのに。私とフリード様の婚約の話が上がると、リフリード様ではなくフリード様を追いかけまわすなんて!


「ベッドで少し休むかい?侍女を呼んでコルセットを外して貰おう。」


 マリアンヌをソファーに預け、侍女を呼びに行こうとするフリードリッヒの袖を引く。


「お願い、もう少しこのままで…」


 気が付いたときには部屋の中は薄暗くなっていた。


 どれくらい眠ったのかしら…


 横に温もりを感じ、薄暗い中目を凝らすとフリード様の顔があった。


 瞼と長い銀色まつ毛がモーブの瞳を覆い、微かに入る月明かりが白い頬を優しく照らす。少し動くと、束から溢れた長い銀髪がサラリとマリアンヌの頬を優しく撫でた。


 美しいお顔。


 見惚れていると、フリードリッヒの瞳がパチリと開いた。見つめていたのが恥ずかしく感じ慌てて顔を背けると、フリードリッヒはクスリと笑ってマリアンヌの髪を一房手に取り口付ける。


「耳まで、真っ赤だ。」


「ち、違うわ。」


 顔を背けたままこっちを向こうとしないマリアンヌに、フリードリッヒはクスクス笑いながら身体を起こし軽く伸びた。


「さ、リマンド邸へ帰ろう。ユリが馬車で待っている。」


 えっ、荷物は?


 辺りを見回すとマリアンヌの私物は一切見当たらない、いつの間にか馬車へ積み込まれたようだ。


 一体、いつの間に…


 帰りの馬車の中でコトのあらましを聞く。なんと投影機は噴水の広場の物も稼働したらしい。


「もう、街でジュリェッタ嬢を崇めるものもいないだろう。これで、彼女の人気は地に堕ちたよ。マリーを陥れようとしたんだ、リマンド家と縁続きであるルーキン家もジュリェッタ嬢を切らざるを得ない。」


「では、ジュリェッタ嬢の処罰はどうなるのですか?」


「取り敢えず平民への降格が決まった、それと魔法学園も退学となる。他は協議中とのことだ、何せ今は戦争中であり、バルク男爵も今は戦地へ赴いていらっしゃるしね。」


 上皇陛下が殿下と共にメープル騎士団を率いて出兵したとは聞いてはおりますが。


「戦局は如何なのですか?」


「あまり思わしくないみたいだ。第二騎士団は健闘しているが、メープル騎士団が悪戯に先鋒隊の傭兵の数を減らしているみたいだ。」


 バルク男爵率いる傭兵達が切り開いた道をメープル騎士団が攻め込む、せっかく切り開いてもうまく攻め込めて居ないのでしょう。自分可愛さの上皇陛下と、初陣の上ヘタレな殿下ではどちらも先頭をきって攻め込むのは難しい。対して、アーシェア国の軍法は厳しいと聞く、皆死ぬ気で攻めてくるのだから結果は火を見るよりも明らかだ。


「勝てそうですの?」


「わからない、ただ、第二騎士団と衝突していないということは、まだ、砦の前で食い止めてはいるようだ。バルク男爵の安否が心配だな、彼が死ねば傭兵達の統率が取れなくなるからな。」

 

 第二騎士団が参戦したら、第一騎士団も戦地へ向かう手筈となっている。そうなると、国境を守るのは辺境伯の私軍、王都を守るのは近衛騎士団のみとなり、他の敵国から狙われる可能性が出てくる危うい状態となる。


「メープル騎士団にも被害は出ておりますの?」


「ああ、既に死者も出ている状態だ。」


 魔法騎士揃いで最強と謳われるメープル騎士団から死者が出るということは、この戦争が楽な戦いではないことを物語っている。


「では」


「ああ、リマンド家一族でもハンソン卿を頭として出陣の準備を進めているところだ。」


 ああ、メープル騎士団が全く機能していないのですね。お父様の予想通りでしたわ、陛下が率いていらっしゃれば違ったでしょうに…。


「宰相閣下が軍略を考えられている、負けるはずはないさ。」


「では、お父様は軍師として辺境へ向かわれるのですか?」


「もう発たれたはずだ。ジュリェッタ嬢との話し合いが終わったらすぐに向かうと仰せだったから。」


 行かれる前にお目にかかりお礼を申し上げたかったな。


「そうですか、ジュリェッタ嬢はいつまで我が家に…。」


「安心して、王命が下ればすぐにでもバルク家に戻されるよ。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ