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そうだ、王子辞めよう!〜婚約破棄(する側!?)から始まる転職活動(自称)無能な王子は廃嫡を望む!?〜【コミカライズ連載中】  作者: にゃんパンダ


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第81話「断捨離作戦11」

 ルグラン軍が奇襲を受ける少し前、同司令部の天幕内。


 司令部用の大型の天幕の中では、いくつものランタンが輝き、そこに映し出されるのは、テーブルを囲みながら上等な酒を片手に談笑する男達の姿。


「あっはっはっは!全く、愉快だ!」


 一番豪奢な服を着て上座にふんぞり返った肥満体の中年男が上機嫌に叫んでいた。


 男がそう言うと、他の男達も口々に同意する。


「はい、ボドワン様。我々を裏切ったバカ王子に目にもの見せてやれるのですからな!」


「いや、全く馬鹿な奴です。あれだけ我々が誠意を見せてやったのに裏切るとは!」


「そうです、しかも公衆の面前で婚約者を、あのスービーズ公の一人娘を侮辱するなど……正気の沙汰とは思えませんよ」


 などと。


 するとそれを聞いたボドワンと呼ばれた男が言った。


「皆んな、すまんな。全ては私のミスだ。阿呆だから御しやすいと考えてアレを担ぎ上げたが、まさか阿呆過ぎて廃嫡されるばかりか、道連れに我々に牙を剥くとは……」


 そして、他の男達に謝罪したのだった。


 しかし、それを責める者はいない。


「いいえ、皆で決めたことですから、ルグラン侯を責めることなどしませんよ」


「それにアルマン男爵が上手くやってくれたお陰で、こうして元婚約者のセシル=スービーズを使って奴を討てるという最高のショーを見られるのですから……寧ろお釣りがきますよ!」


「そうです!しかも今後は第二王子フィリップ様へ上手く鞍替えすることも出来そうですし……今回の件はあの方が知らせてくれた上、兵員や物資の支援までして下さったのですからな!今後も良い関係を期待出来るでしょう」


 それらの意見を聞いたルグラン侯ボドワンはニヤリと笑い、満足げに頷いた。


「うん、そうだな。皆の言う通りフィリップ様は話の分かるお方のようだ。一時はどうなることかと思ったが、これで今後も安泰だな!あっはっはっは!」

 

「「「はっはっはっは!」」」


 と、そこでルグラン侯が異変に気付いた。


「ん?何やら外が騒がしいような……?」


 彼がそう思った瞬間、血相を変えた伝令が飛び込んで来た。

 

「申し上げます!東側の丘より、敵から奇襲を受けてございます!」


 それを聞いた面々は一瞬で今までの余裕は消え去り狼狽した。


 そんな中でいち早く反応し、伝令に詳細を問うたのはルグラン侯だ。


「何?敵だと!?まさかあのバカ王子が勘づいて奇襲を?不味いな、不意を突かれたか、仕方ない。急ぎスービーズ家へ援軍の要請を……」


 と、言いかけたルグラン侯に伝令が言いづらそうに告げる。


「い、いえ、それが……敵は……白百合の家紋を……」


「な、何っ!?まさか、スービーズ家が裏切ったのか!あの小娘!」


 それを聞いた男は驚愕し、続いて激怒してドン!っと両手でテーブルを叩いた。


「い、如何されますか!?」


 狼狽た配下の男がお伺いを立てるが、


「どうするもこうするもないわ!あの連中相手に、しかもこの状況で勝てる筈なかろう!全軍を囮にして逃げるぞ!」


「は、はい!で、どちらに?」


「うむ、ストリア方面に向かおうと思う。今までの不正で貯めた金で優雅な隠遁生活が出来る筈だ」


「「「なるほど……」」」


「決まりだな。では今から直ぐに各々屋敷に戻り、支度をせよ!その後、皆でストリアに向かうぞ!」


「「「はっ!」」」


 と、全員が同意した。


 そして、その中の一人が早速動きだす。


「では全軍に可能な限りの足止めを命じます!後は我々の馬の用意をさせ……ぶわっ!」


 男がそう言って外に出ようとした瞬間、何かに弾き飛ばされたかのように天幕の中に飛んで来た。


 そして、酒や料理の乗ったテーブルを派手にひっくり返し、更に横にいた他のルグラン侯配下の男達も巻き込んで盛大に転がった。


「な、何ごとだ!?くっ、と、兎に角、逃げなくては……」


 突然の事態にルグラン侯は狼狽た。


 しかも、今ので彼以外は全員直ぐには動けない。


 と、そこで入り口から声がした。


「その必要はない。お前達の行く先は地獄と既に決まっているのだから」


 それに続いて両手にまだ血が滴るダガーと何かを持った黒装束の女が一人入って来た。


「だ、誰だ貴様!?……はっ!そうか、あのバカ王子の隠密だな?」


「私の前であのお方を愚弄するとはいい度胸だな」


 それに対して冷たいが、明らかに怒気を孕んだ声で女は返した。


「黙れ!この私が隠密程度にやられるものか!」


「ほう、ではどうする?」


「くく、余裕だな?だが、直ぐに後悔させてやる!こんなこともあろうかと、大金を払って千人斬りの異名を持つ凄腕の浪人を雇っているのだ!」


「……」


「バラバラにして魚の餌にしてやる!先生!お願いします!」


 しかし、誰もその声に応える者はいない。


「せ、先生!?おいっ!誰か!……くっ、まさか逃げたのか?あの役立たずめが!」


 その姿を無表情で見ていた女はそこで手に持っていたものを男の方へ放った。


「先生とはコレのことか?」


 女が投げてよこしたそれは地面に落ち、ゴロゴロと転がってルグラン侯の足で止まった。


「は?何を言って……ひぃ!?」


 男は足元のそれをよく見た瞬間、自分がさっきまで先生と呼んでいた浪人の首だと気付いて青ざめた。


「……それでどうする?ルグラン侯」


 女は淡々と問うてきた。


「あ、ああ……くっ!わかった!金をやる!そうだな……五千万やろう!だから命だけは助けてくれ!」


 ルグラン侯は抵抗を諦めて、女を大金で買収することにした。


「ほう、五千万か。つまりそれが貴様の命の値段という訳か」


「どうだ?不足ならもっと出しても……」


 男は必死に交渉するが、


「不要だ。その代わり、殿下に今ここで謝罪しろ」


 それに対して女は意外なことを要求してきた。


「は?謝罪だと?」


 予想外の返答に男は困惑し、聞き返した。


「ああ、誠心誠意、殿下に歯向かったこと、暴言を吐いたことを謝罪するのだ。そうすればこの場では殺さないと約束してやる」


 女の言葉に希望を見出し、


「そ、そんなことでいいのか!?分かった!……殿下、申し訳ありませんでした」


 ルグラン侯はその場でここにはいない殿下に向かって形ばかりの謝罪をした、が。


「貴様、舐めているのか?地面に這いつくばって、頭を擦り付け、誠心誠意謝罪をするのだ。でなければここでお前を殺す」


 そこで女を怒らせてしまい、ルグラン侯は慌てた。


「わ、わかった!私が悪かった!ちゃんとやるから!」


 男はそう言って、ガバッと両手を地面につき、頭を擦り付けながら叫んだ。


「偉大なるマクシミリアン殿下、このような愚行に走り、また殿下のことを不敬な言葉で罵った我々をお赦し下さい!申し訳ありませんでした!」


 それをゴミを見るような目で眺めていた女は、


「うむ、いいだろう」


 そう言って薄く笑った。


「そ、そうか!では……」


 その言葉を聞いて自分の命が助かったと安堵したルグラン侯が、顔を上げ、パァっと表情を明るくした瞬間。


 女は息を吸うような自然な動作で両手のダガーを投擲し、男の両手を地面に縫い付けた。


「……は?ぎ、ぎゃああああああ!」


 ルグラン侯は一瞬、何が起きたか理解できず、少し遅れてやってきた激痛に凄まじい叫びを上げた。


「な、何故だ!?これでは約束が違う!」


「安心しろ。約束通り『この場では』殺さない。この場では、な」


 相変わらず、薄く笑ったまま女は冷たく言い放った。


「何に!?私を騙したのか!ふざけるなぁ!」


 男はそれを聞いて激昂したが、女は気にせず話し続けた。


「黙れ下郎。貴様の罪がそれぐらいで許される筈がなかろう?迎えが来るまでそうして殿下に詫びていろ。そして、後から必ず生きたまま切り刻んでやるから楽しみにしていろ」


「う、うう……うおおおおおおおお!」


 こうして男はセシル一行が到着するまでそのまま強制土下座を続けたのだった。


 そして、少しして朝日が顔を出し始めた頃にセシルが到着し、天幕の前に立つ女を見て言った。


「あら、急いだつもりでしたが、やはりレオニーに先を越されてしまいましたか」


「良いところを奪ってしまい、申し訳ありませんでした、セシル様」


 セシルの言葉にレオニーは謝罪した。


「いえ、構いません。で連中はどこに?」


 セシルは苦笑しながら目当ての連中について尋ねた。


「はい、中におります」


 レオニーにそう言われ、天幕の中に入ったセシルが見たものは、両手を地面に固定され土下座したまま呻くルグラン侯と、気絶したまま簀巻きにされている配下達の姿だった。


「これは……」


 セシルはそこで驚いていた。


「はい、連中は不敬にもリアン様に暴言を吐いていましたので、反省が必要かと思いましたので」


「驚きですね、まさか……貴方がこんなに優しかったとは!てっきり原型を留めていないかと思ったのですが……」


 そこで彼女は疑問を口にした。


「ああ、そのことですか。実は初めはセシル様の仰る通りにしようかと思ったのですが、それではリアン様のお目汚しになってしまいますので自重致しました」


 それを聞いたセシルは、合点が入った、という感じで喜んだ。

 

「あ、なるほど!流石はレオニーです。リアン様はお優しくて繊細ですから、そんなものをお見せするべきではありませんね。危ないところでした、お手柄ですよ!」


「はい、ありがとうございます」


 その言葉にレオニーは微笑み、そして、セシルが言った。


「ではレオニー、手土産も出来ましたし、リアン様の元へ帰りましょうか!」




 こうして私達は、半刻も掛からずにルグラン軍の野営地を制圧し、あっという間にパーティーはお開きとなったのでした。


 その後、私は部隊の半分を事後処理に残し、また野営地のこの有様を知ってストリア方面へ逃亡した敵の後詰二千がいると、国境付近にいるストリア軍に遣いを出しました。


 そして、私はこの場を部下に任せ、手土産を馬に繋ぎ、ズルズルと引きずりながら一路リアン様の元へと向かいました。


「えへへ、リアン様、褒めてくれるかなぁ?」


 数時間後、リアン様と合流し、私は一部をぼかしながら、一連の経緯をお話ししたのです。

お読み頂きありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] 千人斬りの浪人さんご愁傷様でした。楽な職場かと思いきや事故っちゃった感じですかね…… レオニーのモデルってSO3のネルだったんですね~、言われてみればって感じです。 DC版でメイド服カラー…
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