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そうだ、王子辞めよう!〜婚約破棄(する側!?)から始まる転職活動(自称)無能な王子は廃嫡を望む!?〜【コミカライズ連載中】  作者: にゃんパンダ


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第75話「断捨離作戦⑤」

「あれだけ危ないことはしないで下さいとお願いしたのに、何故約束を破ったのですか!リアン様!」


 赤騎士が珍しく私に向かって声を荒げている。


「いや、でもエロ豚を回し蹴りでぶっ飛ばしたのは赤騎士、君じゃ……」


 それに対して一応反論を試みるが……。


「リアン様!そんなことはどうでもいいのです!」


 そんな理不尽な……。


「えぇ……」


 ダメだ、この鎧は何も聞いてはくれない……そ、そうだ!


「レオニー!君ならわかってくれるよな?」


 私は頭脳明晰な美人スパイに一縷の望みを託し、レオニーの方を見るが、


「殿下!ご自分のお立場をお考え下さいませ!……それに、もしも殿下に何かあったら私……」


 深刻そうな顔でお小言を言われてしまった。


 そうだよな、私に何かあったらレオニーの責任問題になってしまうもんな、管理職は大変だ。


 すまんなレオニー、心配掛けて……。


 って、はぁ……こちらもダメだったか。


 まさに孤立無援。


 私は板の間に正座の状態でスパイと赤い鎧にお説教をされていた。


 既に一時間近く経つのだが、流石に疲れた……。


 周りの目も痛いし……頼む、誰が助けて……。


 誰に向かってという訳ではないのだが、虚な目をした私が心の中でそう呟いたその時、横から声がした。


「あのー、失礼しまーす」


 思わずそちらに顔を向ければ、そこには尋問以来であるノエルが恐る恐る、という感じで立っていた。


 良かった、このちびっ子生きていたのか。


 訓練でイビリ倒されて病んでないか心配していたのだが、取り敢えず元気そうで安心だ。


 そんなことを考えているとノエルが、


「お取り込み中ごめんなさい、セシ……じゃなかった。赤騎士様とレオニー様に手紙を預かって来ました」


 そう言ってノエルは鞄から二通の手紙を取り出し、二人に手渡した。


 そして、それを読んだ赤騎士は、


「ふむふむ、なんと!これはいけません。全く、フィリップ様の分際で私のリアン様に歯向かうとは愚かな……いいでしょう、私自ら鉄槌を下してやります!」


 勇んでそう言うと、勢い余ってそのままクシャッと手紙を握りつぶした。


 赤騎士の奴、どうかしたのだろうか?


 一方、レオニーは淡々と内容を確認して、


「ノエル、ご苦労様。内容は了解したわ。では今から一緒に殿下の護衛にあたって貰うから。いいわね?」


 さっきとは打って変わって、いつものクールな表情でノエルに告げた。


「了解しました、レオニー様!お兄ちゃん、ボクに任せてね!」


 ふむ、どうやら護衛が増えるらしい。


 つまり、手紙の内容は護衛の増強か。


「ああ、宜しく頼むよノエル。あと、伝令ご苦労様」


 そう言って私は似非スマイルを浮かべながらノエルの頭を優しく撫でてやった。


 すると、彼女は気持ちよさそうに、もっともっと、とせがんできので、


「よしよし」


 更に撫でてやった。


「えへへ〜」


 するとノエルはまるで猫のように身体を私にスリスリしながら喜んでいた。


 そんなノエルを見ながら思ったのは、ああ、猫飼いたいな。


 そうだ、自由になったら猫を飼おう!と、思い付いたところで、赤騎士が唐突に話し掛けてきた。


「リアン様、大変申し訳ございませんが、今からお暇を頂けないでしょうか?」


「え?今から?」


 休み?どういうことだ?


「はい、実は……えーと、そう!近くに親しい知人が住んでいまして、折角なので会いに行きたいなぁ、と」


「ああ、別に構わないが……」


 ふむ、赤騎士は内容は兎も角、いつも真面目に働いてくれているし、構わないだろう。


「ありがとうございます、殿下。明日の朝には戻りますので」


 そうか……え!?朝には戻る……だと?


 え、ええっと、それはつまり……そういうことだよな!?


 赤騎士だって、若い女性だもんなぁ。


 私は考えついた結論に動揺しつつ、無理やり暖かい笑顔を浮かべて続けた。


「そうかそうか、ゆっくりしてくるといい」


「?……はい」


 何だか本人は不思議そうな顔をしているが。


 そうだ、日頃の暴走の罰に、少しからかってやるか。


「それにしても、君も隅に置けないな」


 と、私はニヤニヤしながら言った。


「え?」


 赤騎士は何のことですか?とばかりに

キョトンとしているが、


「まさか君に男がいたとはな」


 私の次の言葉で盛大に動揺し始めた。


「ええ!?そんな、ち、ちがっ……」


 そして、私は更に言葉を被せていく。


「それならそうと遠慮せずに言ってくれればいいものを。一晩と言わず、もっと時間をあげられたのに」


「あ、あの!だから、違います!私には貴方しか……」


「ははは、隠すな隠すな」


 ああ、赤騎士をからかうの楽しいかもしれない。


「うう〜」


 お、赤騎士が恥ずかしがってるな。


 照れなくてもいいのに。


 と、そこでレオニーとノエルが口を挟んできた。


「あ、あの……殿下、その辺でやめた方が……」


「お兄ちゃん、ダメだよ……」


 が、残念ながら少し遅かったようだ。


「朝帰りだもんなー、いいなぁ若いって」


 と、私が言ってしまったところで赤騎士の様子が明らかに変わった。


「……だから、違うのに……ぐすん」


「あれ?」


 あ、これって……。


「うう……酷いです、リアン様……」


「ええ?」


「私……うっ、ぐす……そんな軽い女じゃ……ないです!う、うわーん!」


「あ……」


 ああ、やってしまった。


 まさか、あの赤騎士が、近衛歩兵や暗殺者を指先一つで倒せる赤騎士が、色恋沙汰をからかわれただけで泣き出すとは!?


「殿下、流石にこれは……」


「お兄ちゃん、酷い……」


 そして、女性陣からの視線が痛い。


 ああ、どうしよう……と、思った瞬間に赤騎士が本格的に泣き出してしまう。


「うわーん!酷いです!あんまりです!私、あの日からリアン様の為に頑張ってきたのに!ちゃんと頑張って女の子らしくして生きてきたのに……こんなのってあんまりです!もう嫌ぁ……えーん……リアン様のバカ……バカバカバカ!」


「……」


 どうしよう、もの凄く悪いことをしてしまったような気がする……。


 それにしても何故、女子を泣かせてしまうとこんなにも罪悪感があるのだろうか?


「「じとー」」


 そして、レオニーとノエルの視線が更に刺さる。


 わかった、わかったよ。


 仕方ない、赤騎士を慰めてみるか。


 でも、どうやって?


 と、そうやって考えながら赤騎士に近づいたその時、無意識に身体が動いた。


 私は意識した訳でもないのに、気がつくと自然な動作で泣きじゃくる赤騎士の頭に右手を乗せ、優しく撫でていた。


「ぐす……リアン様のバカぁ……ふぇ!?」


 それに気付き、驚いている赤騎士に私は優しく声を掛けた。


「すまなかったね、セシル」


「ええ!?リ、リアン様!?」


 ん?あっ、やばい!慰めようとして他の女性の名を言ってしまうとは……最低だ。


 全く、相変わらず私は無能もいいところだな。


「重ね重ねすまないな赤騎士、今のは忘れてくれ」


 どうしようもないし、取り敢えず謝罪はしておいたが……。


「リアン様、あの……どうしてその名を?」


 いつの間にか泣き止んだ赤騎士はそこで素朴な疑問を投げかけてきた。


 うーん、本当に何故なのだろうか?


 一体これは……あ、そうだ!


 思い出したぞ!


 確かあれは……。


「昔、同じように幼馴染の女の子を慰めたことがあってね、その所為かな」


「あの、それって……」


「そう、それがセシルだよ」


 ああ、懐かしいな。


 あれは彼女の母親、ナディア夫人が亡くなった時のことだった。


 葬儀の後、姿が見えなくなったセシルを探し、ようやく庭の片隅で彼女を見つけた時のこと。


 そこで私が声を掛けると、振り返った彼女は驚くべきことに泣いていた。


 何をバカな、と思われるかもしれないが、セシルはそれまで一度も、それこそ母親の亡骸の前でさえ涙を見せたことはなかったのだ。


 そう、それまでの彼女は人前で絶対に涙を見せない強い子だったのだ。


 因みに私がセシルの涙を見たのは、その時と今回の婚約破棄騒動の時だけ。


 そんな強い彼女が泣いているのを慰めた時、今と同じように頭を撫でていたのだ。


 あ、そうそう。


 これもついでに今思い出したのだが、当時のセシルは、今と違い元気いっぱいに暴れまわっていた。


 そう、言うなれば、暴れん坊令嬢!


 そういえば、何故かこの日を境にセシルは公爵令嬢らしくお淑やかになったんだよな。


 可哀想に、余程ナディア夫人の死が堪えたのだろう。


 閑話休題。


 恐らく、その時の記憶で無意識に目の前にいる赤騎士の頭に手を置いてしまった上、セシルの名を呼んでしまったのだろう……ああ、なんてことを!


 これでは逆効果、きっと彼女は更に泣き出して……あれ?


「そうですか……覚えていてくれたのですね。リアン様、あの……一つだけお聞きしてもいいですか?」


 そこで赤騎士は穏やかな声で聞いてきた。


「ん?ああ」


「あの……その、お、幼馴染のセシル様のことは今でも、す、好きでしゅか!?」


 噛んだな……。


「ん?ああ、好きだよ」


 ああ、寧ろ嫌いになる要素などないからな。


「ふぇ!?そ、即答……えへへ、そうですか〜、そうなんですか〜」


 それを聞いた赤騎士は、今度は急に喜び出した。


 そして、見えない筈なのに、なんだかとても嬉しそうで、幸せそうな顔をしている気がした。


「?」


 私が困惑していると、今度は赤騎士が突然衝撃的な言葉を放った。


「あ、あの……私も大好きです!」


「!?」


 び、びっくりした……。


「ではリアン様、時間が無いのでこれで失礼致しますね!ご機嫌よう!」


 そう言い残し、彼女はそのまま部屋を出て行ったのだった。


「やったー!生きてて良かったです!ああ、幸せです……。では、リアン様の為に頑張りましょうか!敵を滅ぼしに出陣です!」


 そして、最後に廊下から去り行く彼女のそんな声が聞こえたのだった。


「……ええっと、赤騎士は復活したのかな?」


 取り敢えず、横にいたレオニーに聞いてみた。


「はい、もう大丈夫かと」


 すると、微笑を浮かべながら肯定してくれた。


 ふぅ、良かった良かった。


 これで一安心……と、思ったところでノエルが顔を赤くしながら言った。


「うわぁ、お兄ちゃん大胆」


「大胆?何が?」


 わからない、どういうことだろう。


「だって、さっき好きって……」


 ああ、なるほど子供なら間違えるのも当然だな。


「あれが大胆?私は幼馴染のセシルのことを、好ましい(like、favorite)と言っただけなのだが」


 私は苦笑を浮かべならがノエルに答えてやる。


「「え?」」


 何故かここでレオニーまで驚いていた。


「流石にあの流れで、異性として好き(Love)かどうか、何て聞かないだろう?」


「「……」」


 え?今度は無言?


「え?違うのか?ということは……あれは愛してるかどうか、と聞いていたのか!?」


「「はい、恐らく……」」


 ああ、やってしまった。


 だが、ということは、


「だったら赤騎士も大胆だな。『私もセシル様のことが大好きだ』などと、カミングアウトするとは」


「「は?」」


「まさか、実は赤騎士が百合だったなんてなぁ……」


 驚きである。


「「ええええ?!」」


 何故二人とも目を見開いてそんなに驚いているのだろうか?


 今の話からすると、当然結論はそうなるだろうに。


 いやー、まさか赤騎士が百合だとは驚きだったな……ん?ということは……!


「謎は全て解けた!」


 キリッ!と、私は思わず何処かの名探偵のようなセリフ吐いた。


「「?」」


「つまり、赤騎士とセシルは恋人同士なんだ!」


「「はああああああ!?」」


 この二人、さっきから驚くばかりで何も喋っていないような気がするな……。


「それで全ての説明がつくのだよ。まず、最近になって撤回されたセシルとフィリップの婚約の仲介、これはセシルには赤騎士という恋人が既にいたので不要だったのだ。次に、赤騎士のお泊まりだが、スービーズ公爵領はここから近い。今から禁断の逢瀬を楽しむのだろう。そして、赤騎士が泣き出してしまったのは、セシルという女性の恋人がいるのに、男の恋人がいると勘違いされて悲しくなって泣いてしまったに違いない!どうかな?」


 そこで私は自信満々で二人にドヤ顔をしてみせたのだった。


 だが反応は……、


「えーと、何というか……セシル様が不憫過ぎます……」


 レオニーは天を仰ぎ、


「ああ、セシル様が可哀想……」


 ノエルは悲壮な顔をしていた。


 ……あれ?

お読み頂きありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] セシルと赤騎士の百合ってセシルと赤騎士が別個体として存在してたらこの国崩壊待ったなしだろ…… セシルが幼少期暴れん坊令嬢だってことを思い出したしそろそろセシル=赤騎士に辿り着きそうだけどセ…
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