第57話「尋問③」
「お兄ちゃん……って呼んでもいいですか?」
ノエルが上目遣いで、恐る恐ると言う感じで聞いてきた。
「え?お兄ちゃん?」
え?何でお兄ちゃん?
「うん、ダメ……かな?」
更に甘えるように聞いてくる。
困ったな……。
あ、どうもリアンです。
いきなり意味不明な展開で皆様は混乱されているでしょうから説明致しましょう。
一言で言うと、尋問したら義妹が増えました。
ええ、私も意味が分かりません。
ですが、これが事実なのです。
まあ、私の作戦がマズかったと言うか、ハマり過ぎたと言いますか……。
内容を冒頭から説明すると………。
さて、レオニーも頼んだ通り頑張ってくれたようだし(寧ろやり過ぎ?)、私も張り切って行こうか。
そう、意気込んで尋問室のドアを開けた私は……穏やかな笑顔を浮かべながら中に入った。
部屋の中には私を襲ったノエルという少女が、真っ青な顔で座っていた。
可哀想に、ガタガタ震えている。
よっぽどレオニーが怖かったようだ。
そして、私は椅子に座ると穏やかに彼女に話しかけた。
「こんにちは、初めまして。悪逆王子のマクシミリアンだ」
「あ、悪逆……王子。ああ、ボクもう、ダメだ……」
あれ?滑ったかな?
ノエルは私の顔を見た途端に絶望に打ちひしがれていた。
えぇ……、そんなに凶悪な顔をしているのかな?一応顔だけは自信があったのだが……。
「はは、嫌われてるね……。私は君と話がしたくて来たんだよ」
「ボク……と話?お、前と話すことなんかない!」
怯えながらも必死に抵抗するノエル。
健気だなぁ、きっと根はいい子なんだろう。
「まあまあ、落ち着いて。私は君をとって食おうと言う訳ではないよ」
「え?」
苦笑しながら話す私に、ノエルは困惑している。
「話がしたいだけだし、嫌なら無理に話すことはないよ」
「え?ええ?」
と、そこでノックが聞こえ、メイドが一人入ってきた。
「ちょうど、お茶も来たようだし、休憩にしようか。疲れただろうし、昨日から何も食べてないだろう?」
「え?うん……」
そして、紅茶とアップルパイを運んできたメイドはそれらを粗末なテーブルに準備して退出した。
ノエルはそれを呆然と見ていた。
さて、少しサービスしてやるか。
「砂糖はいくつ入れる?」
「え!?さ、砂糖!?いいの?」
ああ、そういえば砂糖は高級品だからな。
驚くのも無理はないか。
「じゃあ二つ入れておくから、足りなければ自分でね」
私は勝手に角砂糖を二つ入れると、ティーカップを彼女の前に差し出した。
「うん」
おずおずとそれを受け取ったノエルはゆっくりと口を付けた。
「美味しい……」
すると彼女は思わず笑みを浮かべた。
甘く温かい紅茶に思わず緊張が緩んだのか、素直な感想が出たようだ。
「あと、昨日から何も食べてないだろう?アップルパイもあるよ」
「えっ?本当にいいの!?」
「ああ、勿論。さあ、どうぞ」
私がイカサマスマイルと共にそう勧めると彼女は夢中で食べ始めた。
さて、ここで皆様の疑問にお応えしましょう。
何故、私が自分を殺しに来た者に優しくするのか、と。
今、お前がロリコンだからだろう?と思った方、違います。
私は至ってノーマルです!
で、答えは、ちょっと試したいことがあったからだ。
グッドコップ・バッドコップ(良い警官・悪い警官)と言う言葉をご存知だろうか。
これは映画やドラマで良くある方法なのだが、辞書的には以下の通りである。
「悪い警官」は対象者に対し、粗暴な非難や侮辱的な意見、脅迫などの、攻撃的かつ否定的な態度を取り、基本として対象者との間に反感を作り上げる。これにより、対象者に同情的な役割を演じる「良い警官」の活躍の場が整えられる。「良い警官」は対象者に対し支援や理解を示すように見せかけることで、基本として対象者への共感を演出する。また、「良い警官」は対象者を「悪い警官」の締め上げから庇護する。
対象者は「良い警官」への信頼感や「悪い警官」への恐怖から、「良い警官」と協力関係が結べるのではないかと思い込み、結果として「良い警官」へ協力するために、色々な情報を話してしまう。
出典 Wikipedia
要は、対象の人物を路地裏でチンピラ役の仲間に襲わせたあと、自分が正義の味方として助けて信頼を得るようなイメージだ。
で、これをやってみよう思い、こんなことをしているのだ。
だから私は、レオニーにノエルを軽く?脅させ、今はこうしてスマイルと紅茶とアップルパイのセットを提供している訳だ。
さっきから少しずつ態度も軟化してきた気がするし、順調ではないだろうか?
と、そろそろ彼女がアップルパイを食べ終わったようだ。
笑顔を浮かべる彼女は、空腹と恐怖から解放されて、少しリラックスしてきたようだ。
「さあ、話をしようか」
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