49話「用心棒②」
私の用心棒として赤騎士を雇ってから数日が経った。
正直、出会いが衝撃的過ぎて不安しかなかったし、早々に理由を付けてご退場願おうかと思っていた。
だが、驚くべきことに実際は……、
「殿下、こちらの書類の決済と、対象の貴族を調査中の諜報員から報告が上がってきておりますのでご確認をお願い致します」
とか、
「協力を仰ぐ貴族への根回しですが、誠に勝手ながら私の伝手を使い済ませておきました。あとは形ばかりの話し合いをすれば簡単に合意を得られるかと」
とか、
「明日の午後の殿下のご予定ですが、先日殿下が中々アポイントが取れないと仰っていたシモン伯との約束を取り付けておきました」
とか、超有能だった!
と言うか、貴族に簡単に根回し出来たり、アポイントを取れる伝手って凄くない!?
赤騎士って何者なんだ!?
と、驚かされっぱなしの私。
え?そもそも何で用心棒がそんな秘書みたいなことやってるのかって?
あ、えーと、それは……では初めからご説明致しましょう。
あの鎧、もとい彼女を雇った直後から。
「では、今から宜しく頼む、赤騎士」
「はっ!この身にかえてお守り致します!」
私の社交辞令に対して生真面目に返す赤騎士。
ま、まあ近くに居るだけだし、大丈夫だろう。
取り敢えず、仕事だ。
だがその前に、立ちっぱなしは大変だろうし退屈だろうから座ったらどうか?と赤騎士に尋ねたのだが、
「いいえ、殿下の護衛として何の不満もありません!……寧ろ近くで好きなだけ殿下を見ていられますからご褒美……何でもありません」
と、言われてしまった。
最後の方はよく聞き取れなかったが。
で、仕方なく仕事を始めたのだが……気まずい!
さっきから斜め後ろに立っている赤い甲冑からの視線が気になって仕方がない!
何とかならないだろうか、何か……そうだ!動かないなら動かせばいいんだ!
と、言うことで、仕事を与えてみることにしたのだ。
だが、素直に言うことを聞くかわからなかったので、まずはお茶汲みから頼んでみた。
ここで、「騎士の誇りに掛けてそのような低俗な仕事はしない!」とか言われてたら解雇してやろうかと思ったのだが。
実際に頼んでみたら二つ返事で、しかも何だか凄く嬉しそうにやってくれた。
「殿下、珈琲をお持ち致しました」
素早く無駄の無い、しかも優雅な所作で準備してくれた。
不思議なのは、鎧越しで表情はわからないはずなのに、彼女が笑顔な気がしたのと、私の好みを言った覚えは無いのだが、ちゃんとブラックで準備され、砂糖とミルクは初めから用意されていなかった。
その時私はこいつ出来る!と思った。
そして、次は簡単な事務作業をお願いしてみたのだが、その時は私から離れるのは嫌だと言われてしまった。
護衛として熱心なのはわかるが、そこまで何時も近くに居なくても、と思うのだが?まあ、いいか。
そこで空いているデスクを私のデスクの横に持ってくることで解決し、色々仕事を願い(押し付けて)してみたのだ。
すると何ということでしょう。
彼女は非常に優秀で、任されたことを手早く正確に、テキパキとこなしてしまった。
それを見た私は、ちょうど人手不足なこともあり、これは良いとばかりに彼女を秘書代わりに使うことにしたのだ。
と、言うことで冒頭のような感じになった訳だ。
その様子はさながらバリキャリだ……鎧さえ着ていなければ。
赤騎士の加入は仕事の面では非常に助かるのだが、真紅の鎧が横で作業する姿は非常にシュールだ。
まあ、意外とみんなすぐ慣れたが。
あ、ここで一つ皆様の疑問にお答えしよう。
赤騎士の護衛の仕事はいいのか、と。
答えは、大丈夫だ、問題ない。
少し考えてみればわかるが、そもそもここは暗部職員の巣窟で、しかもエースナンバーのレオニーまで横にいるのだ。
暗殺者なんて近寄る前に逆に消されてしまうに違いない。
つまり、元々護衛の必要など皆無。
今回は上の強力な推薦(後から確認したら私を心配した父上の命令らしい)だから仕方なく雇っただけ。
だから、座らせているより、どんどん働かせて有効活用してやろうと言う訳なのだ。
本人も楽しそうだし、私も助かるし、これぞwin-winの関係というやつだ。
そんな感じで一見上手くいっているように見えたのだが……。
お読み頂きありがとうございました。




