表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/324

4話「奇襲」

 侍従が重厚なドアを開け、入室を促される。


 私が部屋に入ると非常に攻撃的なオーラを放つ父上と宰相がいた。


 うわぁ、怖い。


 小心者の私は思わず逃げたくなるが、そこをぐっと堪えてまずは挨拶。


「皇太子マクシミリアン、お呼びにより参上いたしました」


「うむ」


 硬い表情の父上が答える。


「して、用件はわかっているのだろうな?」


 抑揚の無い声で問われる。


 そして、無言、無表情の宰相ことスービーズ公爵が、怖い……。


 だが、しかしここは進まねば!


「はい、婚約破棄の件について、ですね?」


「うむ」


「では、まず話の前に……」


 私は居住まいを正す。


「この度は、突然の婚約破棄で国王陛下、宰相閣下、並びに多くの関係者、そして……元婚約者セシルに多大なご迷惑をお掛けしたことを深くお詫び申し上げます。申し訳ありませんでした」


 そして私は深々と頭を下げる。


「う、うむ」


 あまりに素直な謝罪の言葉に訝しむ国王と宰相。


 私の態度に戸惑っているようだな。


 まあ、普通はさっきのテンションのまま鼻息荒く乗り込んで来て、喚き散らすと思うよなぁ。


「その様子なら少しは頭が冷えたようだな。やっと現実を理解したか。では早速、婚約破棄の撤回を宣言する段取りとお前に対する罰だが……」


 冷静に現実を受け入れた私が考え直したと思い込んだ父上が続けようとするが、私はここで話を遮る。


「致しません」


 私は淡々と告げた。


「……何?」


 一瞬固まり、次いで理解できないと言う表情をした後、憤怒を露わに激昂した。


「貴様!いい加減にしないか!まだ、あの小娘との婚姻を諦められぬか!一体どれだけ……」


 恐怖で意識が飛びそうになるが、なんとか堪えて平静を装いながら私は答える。


「それも致しません」


「迷惑を掛ければ……何?」


 憤怒から一転、もう訳がわからないよ!というまるでキュー○ーみたいな顔をしている。


 よし、今だ!


「そして、提案があります」


「?」


 益々、訳がわからないという顔の王、そして宰相。


「提案?提案だと!?この期に及んで何を言うか!自分の立場が分かっている……」


 そこで再び激昂しかけた王に対して、今まで静観を決め込んでいた無表情な宰相が初めて口を開いた。


「陛下、落ち着いて下さい。何やら殿下にもお考えがあるようですので、まずはお聞きになって見ても良いのでは?」


 と、父上を宥めつつ、下らない内容だったらわかってんだろうな?的な視線をこちら向けてくる。


 ああ、死にそう。


「あ、ああ。そうだな。構わぬ、申してみよ」


 落ち着きを取り戻した父上が先を促してくる。


 さあ、此処からが正念場だ!


「はい、では申し上げます。一ヶ月の猶予の後、私を廃嫡して頂きたく存じます」


「「!?」」


 流石の彼らも唐突な廃嫡の提案に、意表を突かれたようだ。


 トラトラトラ、奇襲は成功だ!

「自ら廃嫡を願い出るなどと…一体……お前は何を考えておるのだ?」


「はい、それも含めて全てをお話し致します……全ては無能な私が悪いのです」


「「?」」


 よしよし、何とか興味を引けたようだな。


「そして、全ては……この国、ランス王国の為なのです!」


さあ、ショーの始まりだ。

お読み頂きありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ