47話「次の課題」
あ、皆様、おはようございます?
多分、まだ主人公のマクシミリアンです。
今は明け方、オフィスで仕事をしているところです。
徹夜で。
実はただでさえ時間が無いのに、アホな脳筋近衛歩兵がオフィスを荒らしてしまい、仕事がストップ、その結果残業になりました。
あの野郎……折角昨日は早めに寝られると思ったのに!
私の睡眠時間を返せ!
ああ、愚痴っぽくなりまして申し訳ありません。
皆様は何故こんなに時間が無いのか不思議に思われるでしょう。
実は、今大事な作戦の直前なのです。
その名も、「断捨離」作戦。
この国からゴミ同然のダメ貴族共を纏めて掃除しまおうと言うところから取りました。
そして、この作戦の成否は、私の人生を左右するのです。
絶対に失敗出来ません。
ですから、出来ることは何でもやらなければなりません。
と言うことで、やる事が山積みなのです。
暗部のスタッフに加えて、各省庁からも応援を貰い、全力でやっているのですが、いかんせん規模が規模だけにそれでも戦力が足りません。
お陰で私も部下達もオーバーワークで死にそうです。
これは、士気向上の為にまた宴会を企画してやらねば……費用はメルシエ家持ちで。
さて、ではどうしてこんな状態なのか説明を致しましょう。
時は少し遡り、安月給の暗部と傷ついたレオニーを宴会に送り出した翌日から。
「おはよう、諸君。昨日は楽しめたかな?」
「「「おはよう御座います、殿下」」」
「はい、心置きなく楽しませて頂きました」
こころなしか、みんな艶々している、良いことだ。
さあ、働け。
「そうか、それはよかった」
「ただ」
「ただ?」
と、そこでピエールが何かを言いかけるが、
「レオニー様が大変なことにな……むぐっ!」
「黙りなさいピエール、死にたいの?」
「も、申し訳ありません」
強制的にレオニーに黙らされ、引きずられていった。
まあ、酒の席での痴態を上司に知られたくないよなぁ。
レオニーは、酒癖が悪いのだろうか?
実は、笑い上戸か、泣き上戸か、人生について語り出すとか、はたまた脱ぎ出すとか!?……ある訳ないか。
そして私は珈琲を片手に考えを巡らせ始めた。
さて、仕事を始める前に、一度状況を整理しよう。
一つ目、アネットのコモナ行きの件はほぼ片付いた。
何とか取引は纏まったし、コモナ側に外交ルートで打診したアネットの嫁入りも好感触だ。
姿絵をだいぶ盛ったし。
併せて情報統制も豊富な資金のお陰で順調。
そして、アネットの花嫁修業だが、これは私がここを去ってからも暫く掛かるし、もうノータッチでいいだろう。
あと、そう言えばアネットから苦情が来ていたな。
何でも、第二の実家であるルフェーブル侯爵家では毎日早朝から馬で凱旋門まで散歩に出かけるので早起きが辛いとか、侯爵の趣味である金細工に付き合わされて面倒いとか。
まあ、健康的だし、手に職が付いて良いのではないだろうか。
頑張れアネット。
では、次だ。
セシルとフィリップの婚約。
これも早く進めないと行けないのだが……正直、手を付けたくない。
何故なら、面倒だから。
そして、超気まずいから。
まずフィリップは優秀だが、プライドが高く、明らかに無能な私を見下している。
それが露骨に態度に出るから会うのは嫌なんだよな。
はぁ、だが目標達成の為、我慢するしかないか……。
まあ、大好きなセシルとの婚約話を持ち掛ければ嫌でも飛びつくとは思うが。
うん、何とかなるな。
問題は……セシルだな。
ああ、どうしよう。
兎に角気まずい!
実は私がいきなり婚約破棄を宣言してから一度も会っていないのだ。
と言うか、そもそもどのツラ下げて会いに行けばいいのやら。
顔を合わせた瞬間引っ叩かれる事ぐらいは覚悟しないとなぁ。
いや、もしかしたら前世で流行った倍返し!で土下座か?
廃嫡の集まりでセシルに「やれー!マクシミリアン!」とか、「詫びろ詫びろ詫びろ……」とか言われるのかな?
まあ、別に自分が悪いし土下座ぐらいするけども……。
安い男ですみません……。
で、土下座はいいとしても、何より困るのが、セシルだけは金や贈り物でどうにかなる相手では無いことだ。
公爵令嬢だから何でも持ってるし、一体どうやってご機嫌を取ればいいのやら……。
唯一のカードは、意中の相手である弟フィリップとの婚約の斡旋。
これで何とか許しては貰えないだろうか。
まあ、私のことは死ぬ程憎いだろうが、話の内容を聞けば何とか承諾はしてくれるとは思う……けど不安だ。
兎に角、一度セシルときちんと向き合わないとな。
だが、これと併せてもう一つ困ったことがある。
我が義妹、マリーだ。
実はマリーとも婚約破棄を宣言してから一度も顔を合わせていない。
こんな時に一番相談したい相手なのだが……きっと怒ってるよなぁ。
実の姉のように慕っているセシルを目の前で傷付けられて、平気な訳はないし……。
それに愛くるしく純粋で優しいマリーのことだ、私の所為できっと傷ついたに違いない……ごめんよ、マリー、ダメなお兄ちゃんで……。
もし、顔を合わせた瞬間「お兄様なんか嫌い!」なんて言われたら立ち直れないぞ……。
はぁ、ダメだ、八方塞がりだ。
仕方がない、取り敢えずこの件は後回しだ。
となれば、次の課題はいよいよ本命、ダメ貴族達の大掃除だな。
これが一番時間が掛かるから、手早く片付けなければならない。
まずは、大まかな流れから。
その一、片付けるダメ貴族共をリストアップ。
私に献金していた連中は既にリストアップされ、暗部が情報収集を始めているから問題ない。
併せて、私とは関係ないところで悪事を働いてる連中も纏めて畳んでしまおう、ということで現在調査中だ。
因みにこれは、求められた以上の成果を出すことで父上達の心証を良くすることが狙いだ。
まあ、冒頭のテレビショッピングからすれば、「お待ち下さい!これだけでは無いんです!今なら更にこれも付いて来るんです!」的な感じ。
その二、リストアップされた連中を一網打尽にする為、大規模な摘発作戦を計画する。
これがまた大変なのだ。
こういう悪人達は一気にやらないと、逃げられてしまうので、やるなら一撃で決めなければならない。
もし、一部のみ捕まえて、後は財産と共に国外に逃亡なんてされたら目も当てられないからな。
という事で、綿密な計画と、更に情報が漏れないように細心の注意を払いながらプランを作成しなければならないのだ。
因みに今がこの段階である。
そして、ここで脳筋共に邪魔された。
その三、作戦を遂行する上で必要な事項の調整。
これは、どの部隊が、どこの悪徳貴族を担当するかや、力を借りなければならない信頼できる貴族達との調整だ。
実は今回の作戦がかなり大規模なものとなった関係で国軍と暗部だけでは手が足りなくなってしまい、信頼できる諸侯の力を借りなければならなくなってしまったのだ。
これは、情報統制の関係で、手紙や伝令で気軽にやり取り出来ないから、私自ら出向く必要があるだろう。
後は、これは最悪を想定してだが、ストリアにも国境付近に軍を展開してもらう必要がある。
万が一取り逃した貴族達がストリア方面に向かった場合や、今回の作戦が大失敗し、大規模な内乱に繋がってしまった場合の保険である。
勿論、他国の介入は困るので、本当に最後の手段ではあるが。
本当はこの件についてはマリーの力を借りたかったのだが……はぁ、無いものねだりだな。
その四、作戦実行。
その五、所領と財産の没収。
とまあ、ザックリこんな感じである。
これを一月以内に完遂しなければならないので、兎に角時間が無いのだ。
そして、そんな中で昨日の近衛歩兵の乱入があり、業務が遅れてこの有り様。
結果、私は徹夜で作業をする羽目になったのだ。
全く、困ったものだ。
そんなことを考えていると、
「殿下、少しお時間を宜しいでしょうか」
申し訳無さそうな顔のレオニーがやってきた。
「ああ、構わない。どうした?」
「はい、実は昨日の件で、殿下の身辺の警備を強化することになりまして……」
「それで?」
ま、まさか常時大量の近衛兵がつくのではあるまいな!?
「一名だけ殿下専属の護衛を付けることになりました」
ふう、良かった。
「専属で一名?では、暗部から誰か着くのかな?」
「いいえ、それが……上から直々に推薦がありまして。外部の者を雇うことになりました」
なんだか微妙な顔をしたレオニーが意外なことを口にした。
「外部?つまり……用心棒?」
お読み頂きありがとうございました。




