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そうだ、王子辞めよう!〜婚約破棄(する側!?)から始まる転職活動(自称)無能な王子は廃嫡を望む!?〜【コミカライズ連載中】  作者: にゃんパンダ


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38話「悪役令嬢爆誕④」

 そこには色とりどりのドレスが沢山ありました。


 「どうやらここも衣装部屋のようですが……」


「はい、ですが、かなりドレスの趣味が違いますね」

 

 リディがランタンで辺りを照らしながら言いました。


「ええ、私と同じでお母様も派手なものを好まなかった筈だから」


「ではここは一体?」


「うーん、もう少し中を見てみましょう」


「はい、お嬢様」


「おや、これはウィッグ?」


 そこには金髪縦ロールのウィッグがありました。


「こんなもの何の為に?」


「あ、お嬢様!」


「どうしたのリディ?」


「これを」


 そう言ってリディは装飾された小箱を差し出しました。


「これは宝石箱?」


「はい、どれもかなり大粒の宝石がついている高級品です。デザインはかなり派手ですが」


「ですね」


 うーん、謎は深まるばかりです。


 ここはお母様のお部屋ですし、違う女性の持ち物と言う線もありません。


 まあ、お父様が愛人を作ることなどあり得ませんが。


 間違いなく愛人なんて出来た瞬間に嫉妬深いお母様の霊がやってきてしばき倒されてしまう事でしょう。


 あと考えられるのは……こっそり着る為?


 ああ!あるほど、お母様も女の子だったんですわね!


 実は派手な服に憧れていて、でも人前で着るのは恥ずかしいからここでこっそりと一人でファッションショーをして楽しんでいたと。


 ああ、なるほど納得です。


 さて、お母様の趣味は兎も角、どうしましょう……と、私が考えていたらリディが、


「お嬢様!これ!これは如何でしょうか?」


 嬉しそうに私を呼びました。


 可愛いわ!


「はい、どうしました?」


 振り向くと、彼女の手には一着のドレスがありました。


「こんなものを見つけたのですが如何でしょうか?」


 それは目の覚めるような鮮やかな真紅のドレスでした。


「これならお嬢様のご希望にそえるのでは、と思いまして。一見したところ、生地は最高級品、傷みもありません。さらにデザインもスタンダードでクラシックなものですから、古臭いと言うこともないかと。これなら手直しも不要ですし」


「確かにこれは……いいですね!なんだか今回のテーマにピッタリです!お手柄ですよリディ」


「あ、ありがとうございます!」


 そう言ってリディ嬉しそうにガッツポーズをしてます。


 ああ、そんなリディも可愛いわ!


「それに、お母様のものだと思うと勇気が湧いてくる気がしますし。では、早速着てみましょうか」


「はい、直ぐに準備を」


 そう言ってリディはドレスを持って先に隠し部屋を出て行きました。


 さあ、私も行きましょうか。


 お母様、ありがとうございます。


 …………。


 で、早速試着してみたのですが……。


「うーん、これは……」


「何というか、バランスが悪いですね。派手なドレスに清楚なセシルはなんと言いますか……その……」


 リディが言いにくそうにしています。


「似合ってないわね」


 何というか、ドレスとそれ以外がアンバランス過ぎて駄目ですね。


「お嬢様……」


 申し訳無さそうなリディ。


「そ、そうです!でしたらドレスに負けない強いメイクにすればいいんですよ!」


「ああ、なるほど」


 良い着眼ですね。


「あと、髪型ももっとインパクトがあるものに……あっ!いい事を思い付きました!少々お待ちを!」


 そう言ってパタパタと彼女は走って行きました。


 忙しい娘ですね、ああ、可愛い!


「お待たせ致しました!」


 少しして戻ってきたリディの手には先程見た金髪縦ロールのウィッグと、ごっつい宝石の付いた金のネックレスとイヤリングが載っていました。


「ああ、なるほど。これらを使ってバランスを取るのね」


「はい、お嬢様。では早速準備を」


「お願いね」


 数分後、そこには今までとは別の自分がいました。


「オーホッホッホッ!」


 何と言うか……イケてます!自分的に!


 最高にカッコイイです!


 全身から力が漲ってきて、心身共に強くなれた気がします!


 思わず謎の高笑いをしてしまうぐらいに。


 鏡の中の自分は、まるで別人。


 真紅のドレス、くっきりしたメイク、大胆なデザインのネックレスとイヤリング、そして何より金髪縦ロール!


 自分で言うのもあれですが、これらの組み合わせは絶妙なバランスで一つに纏まり、まるで芸術品のようです。


「お嬢様、素敵です!」


「ありがとう、リディ。貴方の協力のお陰よ、感謝するわ」


「そんなとんでもないです。セシルお嬢様の美しさがあってのものでございます!」


「もう、リディったら褒め過ぎよ」


 ああ、可愛い!


「本当に美しいのですから仕方ありませんよ。今のお嬢様はまるで赤い薔薇のようです!」


「薔薇ですか……」


「薔薇はお嫌いですか?」


「いいえ、そんな事ないわ。ただ、今まで一度もそんな風に呼ばれた事がないから」


 そう、今まではお母様に憧れて清楚で淑やかな感じでしたから。


「ああ、確かに。お嬢様はランスの白百合でしたからね」


「恥ずかしいからやめて欲しかったのだけどね。それが今は百合から薔薇に変わった、ということね」


「はい。大変お似合いでございます。あ、宜しければ香水も薔薇の香りに致しませんか?」


「ああ、いいわね!折角だからそうしましょうか」


 流石私のリディ、気が利きますね。


「はい!」


 リディに香水をつけてもらい完成です。


「はい、これでセシルお嬢様は、百合から薔薇に生まれ変わりました!」


 嬉しそうにリディがはしゃいでいます。


「そうね、私は生まれ変わったのね。ああ、なんだかそう思うと楽しくなってきたわ」


 コンコン。


「失礼致します。マルセルでございます」


 ちょうどその時、メイド長のマルセルがやって来ました。


 これはマズいです。


 彼女は私の教育係でもあり、はっきり言って堅物で厳しいのです。


 こんなところを見られたら間違いなく面倒なことになります。


 あ、でも嫌いなわけではありませんよ?


 因みに、マルセルは年齢不詳のクールな美人さんです。


 家令のマルタンと共にスービーズ家の内部を取り仕切る女傑であり、また私にとっては母親のような存在だと勝手に思っています。


 正直、私にはあまり優しくないですし、マルセルは私のことをどう思っているか微妙なところです。


 しかし、必要ことをしっかり教えてくれたり、足りないことを補ってくれたり、細かい配慮などもしてくれました。


 ちょっと小言が多い気がしないでもありませんが……。


 あと、理由は知りませんがお母様に絶対の忠実を誓っていた使用人です。


「失礼致します。セシルお嬢様、お茶会の招待状が届いて……っ!」


 ガシャン!と、音を立てて銀のトレーが床に落ちました。


 あら、珍しいですわね、マルセルがミスをするなど。


 我が家の百戦錬磨のメイド長に何が……あら?何だか様子がおかしいですね。


 こちらを見たまま固まっています。


 まるで幽霊でも見たような顔をして。


「あの、マルセル?どうか……」


 したの?という前にマルセルが動きました。


 驚くべき速さで私の元までやって来て跪きました。


 そして、


「申し訳ございませんでした奥様!」


「「!?」」


 私とリディは突然の事態に固まり、マルセルは急に謝罪を始めたのでした。

 お読み頂きありがとうございました。


 次回更新は、8月12日(水)の予定です。

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