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第319話「シャケ、愛人を要求する!?③」

お読み頂きありがとうございました。

「『愛人』が欲しいだなんて……もし、それを許したら僕とエクトルは……」


「……間違いなくセシルとマリー様、その他大勢に八つ裂きにされるな……」


 と死んだ魚の様な目をしたこの国の最高権力者とNo.2は力なくそう言った。


 そして、少々の沈黙を挟んで国王シャルルが重い口を開く。


「まあ……取り敢えず僕らのことは置いておくとして、一度冷静になって考えてみようか」


「そうだな」


 二人は取り敢えず都合の悪い現実から目を逸らし、話を進めることにした。


「まず、何故あの草食系……いや、絶食系……でもなくて……そう!捕食される系男子のマクシミリアンが自分から愛人を欲しがり出したのか?だね」


「正直、わからないな……何かお考えがあると思いたいが……」


「うーん……あ!もしかして……『遊んでこい』というのが良くないキッカケに?しかも女遊びの方……」


 シャルルが少し気まずそうに言った。


「……確かにギャンブルや夜の街は遊び慣れていない真面目な人間ほどハマりやすいと言うからな……我々は選択を誤ったかもしれない」


 エクトルが同じく気まずそうに同意した。


「だけど、そこを悔やんでも仕方ないよ」


「そうだな」


 二人はまた都合の悪いことをスルーした。


「で、次にリアンが『欲しい』と言っていたレオニーって……情報局のレオニー=レオンハートだよね?あの女ターミ◯ーターみたいな娘……」


 ここでシャルルは本人に聞かれたらタダではすまなそうなことを言った。


「……まあ、確かに感情表現が希薄だが……どちらかと言うと某シューティングゲームのヴァンパイア姉妹に仕えるメイドさんでは?ナイフとか飛ばしてきそうな感じの」


「そうだねー……あと戦闘服?忍び装束?の時は対◯忍ぽい気も……いや、何でもない」


「あー、確かに……コホン!」


 二人はこれまた聞かれたらタダではすまないどころか、八つ裂きにされそうなことを言い出した……次の瞬間。


 バリン!!バサバサバサ!!


「「っ!!」」


 まるで二人の不毛な会話にツッコミを入れるかの如く、突然ポルターガイストが発生して花瓶が砕け散り、本棚の本が散乱したが、慣れてきたのか二人は敢えてスルーした。


「……えー、兎に角、彼女は完璧なプロポーションを持つ美人で頭もいい、多少……常識に欠ける気もするが、むしろ彼女がもし由緒正しい貴族家の生まれで相応の教育を受けていたのなら妃候補でも良いぐらいの技量はある、そんなレオンハートに殿下が惹かれても不思議ではないとは思うな」


 そしてエクトルが会話を真面目な方向へ軌道修正した。


「確かに彼女は眉目秀麗、才色兼備だし、それに恋は盲目と言うからなぁ……それでも急にあのリアンが入れ込むのが腑に落ちないなぁ」


 シャルルはエクトルに同意しつつも首を傾げる。


「ふむ……」


「あと不思議なのは何故わざわざ僕のところに許可を取りに来たんだろう?愛人なんて勝手に作ればいいのに……まあ、色々大変なことになるから作って欲しくはないけれど」


「うーん、それに関しては事情があったにせよ公衆の面前で婚約破棄をし…迷惑をかけた我々へ配慮して申告しにきたのでは?」


「ああ、なるほど!誠意を見せたのか!真面目なあの子らしい……まあ、愛人を欲しがるという時点であまり好ましくはないけど」


 と、二人が間違った結論を出して勝手に納得したところで……。


「つまり、いくら聡明でも、やはり殿下も人の子だったということ……あ!」


 急にエクトルが何かを思い出した。


「ん?どうしたの?」


「今思い出したがマクシミリアン殿下の愛人と言えば、あくまで噂だが殿下付きの侍従武官が愛人だという噂があったような……?」


 タイミング悪くそんな噂を思い出し、また話がおかしくなっていく。


「え?ああ、そう言えばリアンに限ってあり得ないからガセだと決めつけてスルーしたあの話かー」


 呑気な感じでシャルルが答える。


「そうだ、しかもその侍従武官の名はレオノール=レオンハート……件のレオニー=レオンハートの妹だった筈だ」


「え?と言うことは……どう言うこと?」


 シャルルが分かったようで、まるで分かっていない感じで聞き返した。


「おい!……はあ、私が言いたいのは、いくつか「よくない可能性」がある、ということだ」


 シャルルの反応に若干イラッとしながらエクトルが言った。


「よくない可能性?あーなるほど……例えばレオンハート(妹)の噂が事実なら……妹に飽きて姉に乗り換える、とか?……だったら一応スキャンダルになるのかな?」


 そしてシャルルがまたまたレオンハート姉妹に聞かれたら絶対にタダではすまないようなことを言い出した。


「殿下はそんなお方ではない……と思う」


 エクトルは渋い顔で希望的観測に基づき一応否定する。


「僕もそう思うけど……じゃあ別の可能性を考えようか」


 二人はあって欲しくない可能性から再び目を背け、別の可能性を考えることにする。


 そしてエクトルがある事実を思い出した。


「うーむ、そうだ!確か妹のレオノールはもうすぐアユメリカ戦隊へ転属だった筈だ、つまり……」


 彼はレオノールが抜けてしまう、つまり労働力的な意味でシャケの部下が足りなくなる、という正解へのピースを折角手にしたのだが。


「つまり、レオニーは彼女の代わりってことだね!?」


 残念ながらシャルルがそれをぶち壊しにした。


「は?」


「そっかー、ワイルドな妹に飽きたからクールな姉に乗り換えるってことかー、いや……まだアユメリカ行きまで少し時間があるし……はっ!まさか姉妹丼!?いや、獅子姉妹丼?を!?だったら最低だなぁ……」


 それを聞いたエクトルは冷静にロクでもない例えで否定する。


「まさか。マクシミリアン殿下に限ってそんなことはあり得ないだろう、R指定の同人誌かフラ◯ス書院文庫じゃあるまいし……」


「ランス王国だけに?」


 ここでランス王国の最高権力者が笑えない冗談を口にし、


「…………笑えないな」


 権力ランキングNo.2が冷静にマジレスした。


「はぁ、笑えないね……あ!でも……」


「?」


 そしてシャルルが肩をすくめてそう言った直後、とんでもないことを言い出した。


「良く考えたら『愛人』そのものは多少?のデメリットに目を瞑れば、意外とアリかもしれないよ?」


「……は?」

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