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10話「カーテンの中で 公爵令嬢セシル ②」

 引き続きセシルの話です。


 そして、何と皆様のお陰で10000PVを達成致しました。また、評価、ブクマ、感想なども頂き感激しております。本当にありがとうございました。

 レオニーに言われるがままにカーテンの中に隠れてしまった私ですが、正直恐ろしいです。


 これから一体どんな話がされるのでしょうか。


 婚約は?殿下は?一体どうなってしまうのでしょうか?


 そしてこの後、再び殿下の口から私を蔑む様な言葉が出たらもう立ち直れないかもしれません……。


 やっぱり逃げ出そうかと考えた瞬間にドアが開き、陛下とお父様が入ってきてしまいました。


 残念……退路を絶たれてしまいました。


 これは覚悟を決めて全てを見届けるしかありません。


 などと考えていたら、早速陛下とお父様で今後の対応を話始めました。


 まずは……お父様が怖いです。


 私の為に怒ってるのは分かりますが、余り陛下を虐めないであげてください。


 悪いのは殿下とあの女と、そして殿下の気持ちをつなぎ止められなかった私なのですから。


 そして、殿下の扱いについて話が始まりました。


 どうやら殿下は婚約破棄の後で当面の間、何処かに幽閉されてしまうようです。


 嫌です。


 殿下は私のものです。


 たとえ殿下の身分が平民になろうと婚約破棄なんて絶対に嫌です。

 

 ここは出て行くべきなのでしょうか、などと思っていると今度はお父様がとんでもないことを言い出しました。


 リアン様を病気に見せかけて暗殺するとか言ってます。


 どうやらお父様は死に急いでいるようです。


 残念ですが、お父様は真っ二つになる運命を選ばれるようですわね……。


 愚かにも私の愛の前に立ち塞がろうとは……例えお父様とて容赦は致しません!始祖様より受け継がれし聖剣の錆に……。


 などと考えていると、身の危険を感じ取ったのか、冗談だといって撤回しました。


 ちょっぴり残念ですねー。


 結局、リアン様の処分は僻地の総督を務めるというものになりました。


 もし、成果が上がれば中央に戻ることも叶うとのことで、あれだけの事をした割に寛大な処分になったのでは無いでしょうか。


 何より婚約が継続する点がいいですわね!


 たとえ、行くな、来るなと言われようと何処までもついていきますわ、リアン様!


 まずはこれで一安心。


 ですが、問題はここから。


 当の恋で盲目になっているリアン様本人がこれを受け入れるかどうか…ですわね。


 なんだかとっても難しい気がします。


 それに、やはりあの女を庇う言葉や、私を蔑むような言葉は聞きたくありませんわ……。


 少しだけ明るくなった気分がまた闇に堕ちて行くのを感じながら逡巡していると、ついにリアン様本人がやって来ました。


 き、緊張しますわ!


 身体の震えが止まらない。


 一体彼は、何を言い出すのでしょうか?


 固唾を飲んで見守っていると、驚きの展開になりました。

 

 なんと、居住まいを正し、ご自身の行いを真摯に謝罪されたのです!


 しかも謝罪をした中に私の名前まであります!


 一体どいうことなのでしょうか?


 そして、そこからは驚きの連続でした。


 途中で動揺し過ぎてカーテンをガサガサと揺らしてしまったほどです。


 内容が多すぎて全てを語ることは出来ませんが、結論から言うと、私は……リアン様の気持ちを全く分かっていませんでした。


 まさか、殿下がここまでコンプレックスを抱えていらっしゃったとは……。


 私は殿下に不得意な事があるならば自分が出来る様にして、代わりにして差し上げれば良いと思っておりました。


 自分を磨く事でお助けしようと考えていたのです。


 私と第二王子フィリップ殿下は将来的に国王になられたリアン様をお支えする為、ひたすらに自分を磨きました。


 しかし、リアン様から見れば、私たちが色々な事を卒なくこなしていく様はまるで、見せつけている様に映った事でしょう。


 暗に「お前は無能だから黙って見ていればいい、優秀な我々が全て代わりに上手くやってやるから」と。


 そして、それは将来リアン様が王座に就かれてからの姿そのものに写った事でしょう。


 お互いの気持ちはすれ違っていたのです。


 今考えれば、きちんと殿下に寄り添って気持ちを理解し合っておけば、あの女に唆されてやってしまった今回の婚約破棄は無かったのかもしれません。


 つまり、今回の婚約破棄騒動は、殿下の事を分かっていなかった私にも原因があったのです。


 こんなに好きなのに、愛しているのに、近くに居たのに、全く私は分かっていなかった……。


 何という事でしょうか……その結果、リアン様は一人で全ての不名誉を背負い、国のため、私の為に、こんな事を実行したのです。


 もう一つショックだったのが、私の想いは殿下に全く伝わっていなかった事です。


 結構わかりやすく行動でアピールして来たつもりだったのですが……。


 まさか婚約者として仕方なく義務的にやっていると捉えられているとは想定外でした。


 これはちょっと女として悔しいです……と言うか流石に鈍感すぎるんじゃないですかね!


 あんなに想いを言葉で伝えたはず……よね?確かに伝え…あれ?……伝え…てない…かも?……あれぇぇぇ!?


 もしかして、はっきり言葉で好きだと言ったことなく……無い?


 ッ!?……私のバカー!!


 どうやら私も殿下に負けず劣らずポンコツのようです……。


 それは殿下も誤解しますよね……。


 しかもそんな状態であんな事をしたら。


 実は私は最近リアン様が全然構ってくれないので、少しでも焼き餅を焼いてくれたら嬉しいなぁ、なんて幼稚な考えで、本当に僅かではありますが、フィリップ殿下に視線を向けて見たり、ちょっとした仕草で気を引こうとしてみたりしてました。


 当のリアン様は全く変化が無かったのでそもそも気付いていないのかと思い私、少々拗ねていたのですけれど。


 ああ、私はなんて馬鹿だったのでしょうか。


 本当は殿下はお気付きだったのですね……。


 まさかそれが殿下との溝を余計に深めていたなんて……なんてことなの。


 私は一体この先どうすればいいのでしょうか?


 目の前が真っ暗になってしまった私は途方に暮れました。


 そんな時、殿下はこう仰ったのです。


 私は「自由」が欲しいと。


 始めは私も陛下やお父様のように理解出来ませんでした。


 ですが、殿下の自分の責任で、自分で選択をして生きていきたい、その結果、死んでも悔いは無い、というお言葉を聞いて私は雷に打たれたような衝撃を受けました。


 私は名門公爵家の一人娘として生まれ、それを運命だと受け入れて他の生き方というものを考えたことはありませんでした。


 ですが、簡単な事だったのです。


 自分で考えて、自分で決めて、自分で責任を負う。


 たったこれだけの事だったのです。

 

「自由に生きる」


 覚悟は決まりました。


 その瞬間、視界が遥か遠くまで開けたような気がしました。


 まあ、物理的にはカーテンの中で真っ暗ですが……。


 こんな気持ち初めて!私、もう何も怖く無い!


 思わず心の中で叫んでしまいましたが、何故だか首と胴体が離れてしまいそうな気がするのは不思議です。


 と、ちょうどその時お父様達の声が聞こえました。


 私に今回の騒動の全容をどう伝えたものか、と迷っているようです。


 ですが、私はクスリと笑い、そしてバサァッ!!っとカーテンを勢い良く跳ね上げ、きっぱりと言い放ちました。


「それは不要です!!」

 お読み頂きありがとうございました。


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