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日常系ファンタジー  作者: 青井渦巻
生活の章
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みんなから愛される少女

美少女登場!

 アバトライトは、ベテラン冒険者として名高いパラディンの男である。


 そして、街の治安維持の為、『冒険者ギルド』なる施設を設立したパーティ『ウォールスター』のメンバーでもある。


 彼は今日もボランティアとして、街の安全を見回っていた。


 そんな彼の前を、ふと見知った顔が通り過ぎる。




「レイア、今日も冒険かい?」




 気付いたアバトライトは、彼女に声をかけた。


 『ネームフラワー』所属の冒険者・レイアは、アバトライトと同じパラディンを専門クラスとしている娘だ。


 レイアは活発な娘らしい愛らしい笑顔で、アバトライトに挨拶した。




「おはようございます、アバトライトさん!いえ、今日は冒険お休みなんです。だから街の様子を見たいなと!」


「街の様子を?折角の休みなのだから、好きなものを買いに行ったりしないのかい?」


「リザちゃんとアーサーくんはそうしてますよ。でも、私にはこっちの方が楽しいんです!」




 先の会話からも多少は汲み取れるが、レイアは変わった娘である。


 アバトライトは、街のパトロールを進んで引き受ける彼女の性格を好んでいた。




「はは、そうか。ならば気を付けるんだよ。」


「はい!ありがとうござ…ん?」




 レイアが聖騎士の気遣いにお礼を言おうとした時、誰かが彼女の服の袖を引く。


 見ると、鼻水を垂らしている小さな子供が、構ってほしそうに彼女を見ていた。




「レイアねえちゃん、あそぼー」


「うん!良いよ、なにして遊ぼっか!」




 小さな子の遊び相手を喜んで引き受ける彼女の姿は、誰の目にも美しく見えた。


 アバトライトにとっても、それは当然、清い行いだと感じられた。


 レイアが少年と遊んでいると、そこに今度は老人が現れた。




「おお、レイアちゃん。すまんが、わしの家は、どこだったかのぅ…?」


「あ、おじいちゃん!私が案内しますよ!」


「すまんのぅ、わしももう、歳でな…ふぇっふぇっふぇ。」




 笑顔で老人を家に案内する彼女は、その親切さで他人の目を眩ませた。


 聖騎士のアバトライトですら、彼女の姿をまともに見れないくらいに。


 レイアが老人の歩幅に合わせ、ゆっくりと誘導していると、今度は青年が現れた。




「レレレレレ、レイアさんっ!!今、少しお時間ありますか!?良ければ、そこのカフェでお茶でも!!」


「え!?もしかしてケーキ…!あ、でも、今はごめんなさい!私、おじいちゃんをお家に案内しないと!」


「そ、そんなぁ…!少しだけでも!」


「んーと…それなら、この子と遊んであげてくれませんか?用事が全部終わったら行けますから!」


「は、はい!喜んで!」




 青年の誘いの真意に気付かない清純さと、簡単に誘拐されそうなほどの素直さに、人々は感嘆を漏らす。


 アバトライトは彼女の無垢な美しさをやや危険に感じつつも、その姿を黙って見ていた。


 そんな彼女に、またもや誰かが歩み寄る。




 ――そんな繰り返しで、レイアは街をどこまでも歩き、困った人々に笑顔で協力していった。


    アバトライトは彼女を心配し、別れた後もこっそり後をつけていたが、無事に一日を終えた事を確認すると胸を撫でおろした。




「ふ、レイア…君の周りには、いつの間にかたくさんの人が集まる。聖騎士として尊敬するよ。」




 パーティの待つ宿へ帰るレイアを遠目に、彼はそう呟いた。


 アバトライトにとって、レイアはまさに聖騎士と呼ぶに相応しい者であった。


 どちらかというと、聖女と呼ぶに相応しいとも思っていた。




「…だけど、とても心配だ。君がこうして人に慕われているのを見るのは、とても喜ばしいことだが。」




 光のあるところには、闇もある。


 そんな闇に彼女が呑まれてしまうことが無いよう、アバトライトは誓いを立てる。


 彼はレイアという希望を、命を賭けてでも守ろうと、決意を新たに固めるのだった。

30話までは毎日投稿します。

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