表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
日常系ファンタジー  作者: 青井渦巻
試練の章
35/171

監禁・その2

レイン姫の にらみつける!

「私に脱走の用意なんて無いわ。なにを勘違いしているの?」


「ええ、私もまったくその通りだと思います。しかし、これは偉大なる王の心配なのです。」


「私はお前の臆病な態度が大嫌いよ。」




 レインは高貴な身分であった。


 王女という地位に甘んじることなく、自らをより高める者だった。


 そんな彼女の目には、騎士ニコルソンの迎合的な態度は醜く映った。




「私のことは嫌いになっても、王のことは嫌いにならないでください!」


「今、お父様の話はしていないの。お前は愚かね。」


「愚かですとも!とにかく、しばらくは外出を自粛して頂きたい!」




 彼女が城からの脱走を図っているという、王の懸念。


 そのために、ニコルソンは彼女を閉じ込めろと命令されていた。


 波風を立たせず、とにかく姫に言う事を聞かせようと、彼は必死であった。




「もし私が脱走なんて考えているとしたら、閉じ込めることで気持ちを助長させないとも限らないのよ?」


「…確かにそうですね。」




 レインの言葉で、危険な施策である可能性に気付いた騎士であったが、今更予定を変更するのも面倒だと思った。


 彼は、普段ならそれなりに頼りなる騎士だ。


 しかし、事が姫の話になると、はっきり言って怠け者であった。




「確かにそうですが、しかし…計画が姫のお心に存在していれば、外に出た瞬間に逃げられる可能性も十分あるでしょう。生半可な処置では姫を止めることは出来ないと考えます!」


「愚かなお前にしては、なかなか鋭い見解ね。ええ、正解よ。」


「正解ですか?やったぁ!」




 レインは意志の実行に躊躇いがない。


 彼女には迷いがなく、それゆえに懐柔などされない。


 彼女自身、自らの目的を止めるには、強行手段に出るのが最も良い手段であると考えていた。


 ニコルソンが正解したのは職務怠慢からであるが。




「…いいわ、珍しく正解したお前に免じて、言う事を聞いてあげる。とても退屈そうだけれど。」


「本当ですか!ありがとうございます!」


「でも、パートナーについては拒否させないわ。私の望む人を確実に連れてきなさい。」


「はい、分かっております!このニコルソンに出来る範囲で、全力を尽くします!」




 地味に「確実に」という言葉から逃げながら、ニコルソンは嬉しそうに笑った。


 レインはその様子を見て、話を聞いた時から思い浮かべていた人物の名を言った。




「パルルという錬金術師。彼女を連れてきなさい。」


「パルル殿ですね!了解しました!」


「それから…」


「!?ちょ、2人目っすか!?」




 当然の如く名を連ねようとするレインに、驚愕を示すニコルソン。


 レインは悪びれる様子もなく、少しだけ冷たい笑みを浮かべた。




「2人だけよ。これでダメなら、もちろん私は抵抗するわ。」


「ええ~…めんどい…」


「必要な手間を惜しむの?本当に愚かね。」


「分かりました、はいはい。分かりました!」




 レインの射殺すような嫌悪の視線に睨まれ、彼は怠そうに相槌を打つ。


 およそ姫の前で取るに似つかわしくない態度だが、ニコルソンはそういうことを気にしない男であった。




「よく聞きなさい。もう一人は…聖騎士のアバトライト。」


「アバトライトさんですか!?」




 意外な名前に、再び驚愕するニコルソン。


 そんな彼を煩わしいとでも言うように、レインは不愉快そうな顔をした。




「なにか不満があるのかしら?」


「いえ。そのようにアレしますので、お待ちくださいね。」




 仕えている姫に睨まれると、この騎士は滅法弱い。


 すぐに引き下がると、そそくさと王の間へ報告しに行くのであった。




 高名な錬金術師と、高名な聖騎士。


 当然、彼女は適当な人選はしていない。




「あの2人なら、きっと外の世界にも詳しいはず…」




 国の人々から憧れの視線を浴びる2人ならば、自身の知らない世界を知っていると考えたのだ。


 レインは監禁を心待ちにした。

明日も投稿します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ