親友から発展する関係
親友の次があります。
冒険者パーティ『アクアガーデン』は、巷ではルーキーと評されるパーティだ。
それほど平均年齢は高くなく、持ち前のフレッシュさでダンジョンを次々と攻略していく、爽やかなパーティであった。
そんなアクアガーデンに所属する少年・ウォッチは、まだまだ未熟な新米戦士である。
「あー、フェリ元気かなぁ。」
ダンジョンを攻略していない時の彼は、普通の少年である。
休日は特に予定もないので、パーティメンバーのマックスと遊んでいた。
「フェリって誰?ウォッチの彼女?」
「ばっか、ちげーし!」
「はは、隠れて付き合ってんだろ!」
公園のベンチで他愛もない会話をして、平和な時を過ごす二人。
退屈だが楽しいじゃれあいの中、マックスはおもむろに思いついた。
彼は公園で子供と遊ぶ娘を指差すと、笑いながら言った。
「なぁ、ウォッチ。お前がじゃんけんで負けたら、あの女の子に告白しようぜ。」
「えぇ!?そんなの嫌だよ!」
「いいじゃん、暇つぶしだって!ほら、実際あの子可愛いだろ?成功したらラッキーじゃん!」
「…まぁ、確かに。でも俺だけは不公平だろ?マックスが負けたら自分で行けよ。」
「えー!?うーん、まぁいいや…何回勝負にする?」
「男なら一回勝負だっ!」
女の子にどちらが告白するかを決定するため、じゃんけん勝負を試みる少年達。
ちなみに、マックスが可愛いと評する少女はレイアである。
彼女は今日も人々に愛されつつ、街の困りごとを解決していた。
それはともかく、じゃんけんは開始された。
勢いで一回勝負とは言ったものの、いざ勝負となると緊張するウォッチ。
マックスも同じように顔を強張らせるが、意を決して言った。
「行くぞ!最初はグー!」
それに合わせ、ウォッチも声を重ねる。
同時に二人は右手を前に出し、各々の武器となる形を示した。
「「じゃーんけーん、ぽん!」」
結果は、ウォッチがグー・マックスがパー。
マックスの勝ちだ。
「うおおお、負けちまったぁー…!」
「よっしゃ、じゃあウォッチ!告白頑張れよ!」
「う…なぁ、やっぱ三回勝負にしねぇ…?」
「はは、今更なに言ってんだよ!ダメダメ、行ってこい!」
そんなこんなで、ウォッチは渋々と言った様子でレイアに近づいた。
レイアは彼の姿を視界に捉えると、無敵のスマイルを振りまいた。
「あ…こ、こんにちは!いい天気だね、今日!あはは…」
レイアの可憐な表情に思わず照れながらも、ウォッチは果敢に話しかけた。
つい世間話を持ちかけてしまったが、その後であまり意味が無いことに気付く。
「こんにちは!そうだね、とっても良い天気!こんな日はやっぱり、外に出たくなるよね!」
少年の気持ちを知るはずもないレイアは、素直にそう言葉を返した。
告白する流れではないが、悪くはない雰囲気なので、ウォッチは気を良くした。
「あのさ、名前なんて言うの?俺はウォッチって言うんだけど。」
「私はレイアだよ!パラディンのレイア!」
「パラディン…って、もしかして冒険者!?」
「うん!ネームフラワーってパーティに入ってるんだ。」
「奇遇だね!俺もアクアガーデンってパーティで冒険者やってんだ!クラスは戦士!」
「わ、そうなの!?」
なんだか話が弾み、嬉しくなったウォッチは、そのまま彼女とお喋りを続けた。
もちろん、とうに友人との勝負の約束は忘れていた。
「…ウォッチのやつ、ずっと話してるな。さては上手くいってるんじゃ?」
訝し気な顔をしながら、少年と少女の和気藹々とした様子を観察するマックス。
結構な時間待たされ、うずうずしていた彼は、そこに割り込もうと考えた。
(あの様子じゃ告白までいつまでかかるか分からねーし、なにより…あいつだけ美少女と話してるのはズルい!)
マックスは二人の間に強引に入り込むと、すかさずレイアに挨拶した。
「こんにちは、俺はマックスって言います!ウォッチの友達です!」
「ウォッチくんの友達?よろしく、私はレイア!」
「ちょ、マックス!いきなり入ってくるなよ!」
ウォッチはマックスの肩を掴むと、彼をレイアから引き離そうとする。
しかしマックスはそれに抵抗し、会話を止めようとしない。
「じゃあレイアって呼んでいい?」
「うん、いいよ!仲良くして欲しいな!」
「もちろん!俺はウォッチより君と仲良くな…」
レイアと親密になろうとするマックスを危険に思ったウォッチは、すかさず声を上げる。
「レイア!こいつ空気読めなくてごめん!」
「な、なんだよウォッチ!今、俺のターンだろ!」
「ターンってなんだよ、そもそも譲った覚えねーって!」
少年達はレイアの前で喧嘩を始めてしまった。
レイアを始め、公園で遊ぶ子供達やその親までもが、その光景を不思議そうに見る。
やがて、レイアはクスッと笑って言った。
「ふふっ、二人はすっごく仲が良いんだね!」
「「え?」」
その言葉に、ウォッチもマックスも素っ頓狂な声を上げる。
冷静になった二人は、少女の前で喧嘩を始めたことを恥じ、赤面した。
「あ、その、レイア…」
「へ、へへ!気にしないでくれ…」
「?んーん、別に気にしてないよ!」
かくして、美少女の魅力にやられてしまった二人は、親友からライバルとなった。
今後、彼らの関係はどのような展開を見せるのか、はたまた見せないのか…乞うご期待。
明日で毎日更新停止?