表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
日常系ファンタジー  作者: 青井渦巻
試練の章
30/171

親友から発展する関係

親友の次があります。

 冒険者パーティ『アクアガーデン』は、巷ではルーキーと評されるパーティだ。


 それほど平均年齢は高くなく、持ち前のフレッシュさでダンジョンを次々と攻略していく、爽やかなパーティであった。


 そんなアクアガーデンに所属する少年・ウォッチは、まだまだ未熟な新米戦士である。




「あー、フェリ元気かなぁ。」




 ダンジョンを攻略していない時の彼は、普通の少年である。


 休日は特に予定もないので、パーティメンバーのマックスと遊んでいた。




「フェリって誰?ウォッチの彼女?」


「ばっか、ちげーし!」


「はは、隠れて付き合ってんだろ!」




 公園のベンチで他愛もない会話をして、平和な時を過ごす二人。


 退屈だが楽しいじゃれあいの中、マックスはおもむろに思いついた。


 彼は公園で子供と遊ぶ娘を指差すと、笑いながら言った。




「なぁ、ウォッチ。お前がじゃんけんで負けたら、あの女の子に告白しようぜ。」


「えぇ!?そんなの嫌だよ!」


「いいじゃん、暇つぶしだって!ほら、実際あの子可愛いだろ?成功したらラッキーじゃん!」


「…まぁ、確かに。でも俺だけは不公平だろ?マックスが負けたら自分で行けよ。」


「えー!?うーん、まぁいいや…何回勝負にする?」


「男なら一回勝負だっ!」




 女の子にどちらが告白するかを決定するため、じゃんけん勝負を試みる少年達。


 ちなみに、マックスが可愛いと評する少女はレイアである。


 彼女は今日も人々に愛されつつ、街の困りごとを解決していた。




 それはともかく、じゃんけんは開始された。


 勢いで一回勝負とは言ったものの、いざ勝負となると緊張するウォッチ。


 マックスも同じように顔を強張らせるが、意を決して言った。




「行くぞ!最初はグー!」




 それに合わせ、ウォッチも声を重ねる。


 同時に二人は右手を前に出し、各々の武器となる形を示した。




「「じゃーんけーん、ぽん!」」




 結果は、ウォッチがグー・マックスがパー。


 マックスの勝ちだ。




「うおおお、負けちまったぁー…!」


「よっしゃ、じゃあウォッチ!告白頑張れよ!」


「う…なぁ、やっぱ三回勝負にしねぇ…?」


「はは、今更なに言ってんだよ!ダメダメ、行ってこい!」




 そんなこんなで、ウォッチは渋々と言った様子でレイアに近づいた。


 レイアは彼の姿を視界に捉えると、無敵のスマイルを振りまいた。 




「あ…こ、こんにちは!いい天気だね、今日!あはは…」




 レイアの可憐な表情に思わず照れながらも、ウォッチは果敢に話しかけた。


 つい世間話を持ちかけてしまったが、その後であまり意味が無いことに気付く。




「こんにちは!そうだね、とっても良い天気!こんな日はやっぱり、外に出たくなるよね!」




 少年の気持ちを知るはずもないレイアは、素直にそう言葉を返した。


 告白する流れではないが、悪くはない雰囲気なので、ウォッチは気を良くした。




「あのさ、名前なんて言うの?俺はウォッチって言うんだけど。」


「私はレイアだよ!パラディンのレイア!」


「パラディン…って、もしかして冒険者!?」


「うん!ネームフラワーってパーティに入ってるんだ。」


「奇遇だね!俺もアクアガーデンってパーティで冒険者やってんだ!クラスは戦士!」


「わ、そうなの!?」




 なんだか話が弾み、嬉しくなったウォッチは、そのまま彼女とお喋りを続けた。


 もちろん、とうに友人との勝負の約束は忘れていた。




「…ウォッチのやつ、ずっと話してるな。さては上手くいってるんじゃ?」




 訝し気な顔をしながら、少年と少女の和気藹々とした様子を観察するマックス。


 結構な時間待たされ、うずうずしていた彼は、そこに割り込もうと考えた。




(あの様子じゃ告白までいつまでかかるか分からねーし、なにより…あいつだけ美少女と話してるのはズルい!)




 マックスは二人の間に強引に入り込むと、すかさずレイアに挨拶した。




「こんにちは、俺はマックスって言います!ウォッチの友達です!」


「ウォッチくんの友達?よろしく、私はレイア!」


「ちょ、マックス!いきなり入ってくるなよ!」




 ウォッチはマックスの肩を掴むと、彼をレイアから引き離そうとする。


 しかしマックスはそれに抵抗し、会話を止めようとしない。




「じゃあレイアって呼んでいい?」


「うん、いいよ!仲良くして欲しいな!」


「もちろん!俺はウォッチより君と仲良くな…」




 レイアと親密になろうとするマックスを危険に思ったウォッチは、すかさず声を上げる。




「レイア!こいつ空気読めなくてごめん!」


「な、なんだよウォッチ!今、俺のターンだろ!」


「ターンってなんだよ、そもそも譲った覚えねーって!」




 少年達はレイアの前で喧嘩を始めてしまった。


 レイアを始め、公園で遊ぶ子供達やその親までもが、その光景を不思議そうに見る。


 やがて、レイアはクスッと笑って言った。




「ふふっ、二人はすっごく仲が良いんだね!」


「「え?」」




 その言葉に、ウォッチもマックスも素っ頓狂な声を上げる。


 冷静になった二人は、少女の前で喧嘩を始めたことを恥じ、赤面した。




「あ、その、レイア…」


「へ、へへ!気にしないでくれ…」


「?んーん、別に気にしてないよ!」




 かくして、美少女の魅力にやられてしまった二人は、親友からライバルとなった。


 今後、彼らの関係はどのような展開を見せるのか、はたまた見せないのか…乞うご期待。

明日で毎日更新停止?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ