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日常系ファンタジー  作者: 青井渦巻
生活の章
20/171

朝の光

特にほのぼのでもない話です。

 剣士の青年・センは、宿の質素な椅子に座って、朝の光を眺めていた。


 隣には、密人みそかびとと呼ばれるケイという名の女性が、センと同じように座っている。




「セン、もう朝よ。」


「…そうだね。」




 密人は冒険者であるが、冒険者らしく往来を歩くことは出来ない。


 事情はあれど、日の当たらぬ界隈から秘密裏にクエストを受け、殺人を犯している。


 この者たちは冒険者である前に、罪人である。




「ほら、もう行かないと。仲間が待ってるわよ。」


「でも、君は…?」


「知ってるはずでしょう。私は朝には消える。会いたいなら、またここにいらっしゃい。」




 センには理解できなかった。ケイが罪人だという事実が。


 センの知るケイは、ただ外の光に憧れる哀れな女であった。




「…じゃあ、またここに来る。僕の冒険の事を聞かせてあげるよ。」


「ええ、楽しみにしてるわ。」




 センは宿の一室を後にする。


 ケイは、彼の姿が扉に阻まれて見えなくなるまで、そっと手を振った。




 しかし、センはどうしてもケイが哀れに思えて、また扉を少し開け、部屋の中を密かに覗いた。


 見ると、彼女は窓の向こうの光に手を伸ばしていた。


 そんな無邪気な仕草から、センは世間知らずの子供らしさを感じ、そっと視線を逸らす。




「本当に、話すべきなのかな…」




 センはそう呟いた。


 彼には、ケイが自分の話を本当に喜んでくれているのか、確証が無いのだった。


 彼がもう一度顔を上げ、隙間を覗いた時には、ケイはどこにも居なかった。

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