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日常系ファンタジー  作者: 青井渦巻
生活の章
17/171

天才とろくでなし

エルドラに似た人、周りにいますか?

 ここは、とある錬金術師の研究室。


 この場所で、少女はいつも魔法陣を開発している。




「パルルは大した者じゃないよ。」




 パルルは謙遜した。


 彼女は錬金術師である。


 そして、この世の約半数の魔法陣を発明した功績を持つ天才である。




「お前が大した者じゃなかったら、誰も大した者じゃねーよ!」




 そんな彼女の謙遜に、同じ錬金術師のエルドラが異議を申し立てた。


 この少年は凡才である。別に功績はない。


 ただ、パルルの幼馴染であるという一点だけは、替えが効かない人物である。




「なぁ、一個くらいいいだろ?お前の魔法陣、俺が開発したってことにしてくれよ!」


「それは無理だよ。」


「なんでだよ!お前のはもうあんなにあるじゃねーか!一個だぜ?幼馴染のよしみで!!」




 エルドラは、パルルを羨ましがっていた。


 その理由は明快で、パルルの様に周りから持て囃されたいと思っているのだ。


 それ故に、こうして新作の魔法陣に性懲りもなく集っている。




「パルルは天才じゃねーか!なぁ、どうせまた次の魔法陣だってすぐに開発するんだろ?ズルいぞ!!」


「…エルちゃん、醜いよ。」


「醜かろうが関係ないぜ!いいか、俺はちやほやされるためなら手段は選ばない男だ!」


「エルちゃん…潔いけど、醜いよ。」




 パルルは、エルドラと友達として付き合う事は好んでいる。


 しかし、こういう浅ましい部分には辟易していた。




「ねぇ、エルちゃんはパルルを魔法陣製造機関だとでも考えてる?」


「え、違うの?」


「うわっ…違うよ。」




 絶交したくなるのを堪えながら、少女は大事な友達を諭すことにする。




「パルルは天才じゃないよ。これは、別に謙遜じゃないよ。」


「いや、天才だろ!お前が天才じゃなかったら…」


「いいから聞いてよ!パルルはね、ちゃんと頑張ってるんだよ?」


「…頑張ってる?」




 エルドラは聞きなれない言葉を復唱した。


 復唱した上で、言葉の意図がいまいち理解できなかったので、変な顔で首を傾げた。


 パルルはそんな友達に呆れつつも、話を続ける。




「どうしても開発が上手くいかなくて、挫けそうな時もあるんだよ。それでも、皆の期待に応えるために頑張ってるんだよ。」


「うんうん、それで?」


「開発はすっごく時間が掛かるんだよ。パルルはもう三日も寝てないんだよ。」


「あ、俺も最近寝てない!分かる、全然寝れないんだよなぁ~これが」


「エルちゃんの事情は知らないよ!!」




 パルルは激怒した。


 必ず、かの無知蒙昧の馬鹿を除かなければならぬと決意した。


 パルルが珍しくキレたので、エルドラは驚いて身を硬直させた。




「努力もしないで、愚痴ばっかのエルちゃんに、なんでパルルの頑張った成果を取られないといけないの?」


「あ、パルル。今夜は海が良く見えるらしいぜ?さっそく行こう!」


「エルちゃん…エルちゃんだって、なにもできないわけじゃ…なんで、パルル…?エ、エルちゃん…!うぅ…ぐすっ」


「ちょ、泣くなよパルル!ほら、可愛い顔が台無しだぜ?おら、見ろよ!今のお前の泣き顔笑えるぞ!」




 思わず泣きだしたパルルであったが、泣いている間もエルドラの無神経さに呆れていた。


 エルドラは小さな鏡を取り出して、パルルの方へ突きつけたが、彼女は一切笑わなかった。




「ほ、ほんと…天に召されてよ…エルちゃん…ぐすっ」


「めっちゃ毒舌!!」




 この男では、永遠に影の努力など理解できないだろう。


 と、聡明なパルルは悟って、いっそう涙を流すのであった。

30話までは毎日更新

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