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日常系ファンタジー  作者: 青井渦巻
生活の章
14/171

初恋

キャラと恋が多くなってきました。

 精霊術師のヘレナは、最近になって冒険者になった娘である。


 冒険者になったのは、ベックという精霊術師の男に憧れたからだ。


 幼い頃に好奇心でダンジョンに入り、迷子になったところを、彼に助けてもらったのだ。




「ベックさんみたいになりたいです!よろしくお願いします!」




 緊張した面持ちで、彼女は初めて冒険を共にする仲間に挨拶する。


 セオリー通りに5人組のパーティを組み、彼女は今、ダンジョンへ足を踏み入れようとしているのだ。




「僕がリーダーの剣士・センだ。よろしく。」


「我の名は魔導士ライリー…闇の蛇龍に反逆せし者…よろしく頼む。」


「俺も魔導士のニックだ!魔物は全部、俺が相手してやっからな!」


「巫女です。」




 個性的なパーティに囲まれ、そこそこに挨拶を済ませたヘレナ。


 これから始まる冒険にドキドキしつつも、ベックのように戦えるか不安でもあった。




「あの、ミコデスさん…!」


「…ヘレナ、彼女はミコデスじゃない。スイミーだ。星々の聖典を読んでおけ。」


「えっ!?ごめんなさいスイミーさん!ラ、ライリーさん、教えて頂いてありがとうございます…!」




 彼女は口数の少ない巫女・スイミーに戸惑いつつも、優しい中二病の少女・ライリーの助けを借り、コミュニケーションに挑戦する。




(でも、星々の聖典ってなんだろう…?)




 ライリーにも戸惑っていたが、それは必然であろう。


 中二病の喋り方は特殊なのだ。




「なぁ、早くダンジョンに行こうぜ!セン!」


「ニック。メンバーの準備が終わっていないんだ、もう少し待て。」


「ニック、貴様も安寧の拵えが完成していないではないか。ちゃんとやれ。」


「安寧のコシュニエってなんだ?」




 血気盛んな少年・ニックにも、ライリーの使う単語の意味は拾えない。




「コシュニエ?ちょ、ちょっとカッコいいような…」




 しかし、ライリーもなんとなくで使っている都合上、意味合いはそれほど重要じゃなかったりする。


 と、個性的な仲間を紹介する前に、今回はヘレナにフォーカスを当てたいと思う。




(みんな良い人そうだな…センさんも落ち着いた人で…ちょっと、ベックさんに似てるかも?)




 彼女は準備を予め終わらせており、パーティの仲間を見ていた。


 その中でも、リーダーの青年であるセンがベックに似ていると感じた。


 そしてそのまま、彼に見惚れてしまっていた。




「…?ヘレナ、どうかしたか?」


「へっ!?い、いいえ!なんでもないんです、気にしないで下さい!あはは…」


「いいんだ。君は初めての冒険だし、不安だろうな。困ったら僕になんでも言ってくれ。」




 センはリーダーらしく、大人びた優しさをヘレナに見せると、そっと微笑んだ。


 その表情に、ヘレナは初めての冒険に対する気持ちを上回ってドキドキした。




(センさん、とっても素敵な人だなぁ…)




 彼女は顔を赤らめている自覚は無かったが、スイミーはしっかり観測していた。


 しめたと言わんばかりにニヤリと笑い、スイミーはヘレナへ耳打ちした。




「ヘレナ、センに惚れてます?」


「ほぇっ!?」




 新たに芽生えた気持ちをいきなり見透かされ、ヘレナは思わず素っ頓狂な声を発した。


 その声に驚いたニックとライリーは、目を丸くしてヘレナの方へ振り向く。


 センも、目は丸くなっていないにしても、少しだけ驚きの表情を浮かべてヘレナに注目した。




「ほら、ヘレナ。言っちゃいましょうよ。」




 小さな声でヘレナの背中を押すスイミー。


 彼女は下世話でノーセンキューな少女であった。




「え、えっと、あのぅ!なんでもないので、どうぞ安寧の拵えを!」


「ヘレナ!それを言うなら安寧のコシュニエだぜ!」


「う、うむ。コシュニエだ、ヘレナ。」




 なんとかコシュニエで誤魔化し、事なきを得たヘレナ。


 しかし、スイミーは不満そうに口を尖らせている。




「なんで言わないんですか。さっきのはチャンスでしたよ?」


「スイミーさん!私はセンさんのこと、素敵だなって…そう思っただけ…ですよ!」


「ぷぷぷ、ちょっと間がありますよ。隠さなくていいです。」


「うぅ~…!スイミーさん、酷いです!」




 スイミーに涙目にされてしまったヘレナは、そう言ってそっぽを向いた。


 そんな彼女の仕草に、スイミーは「ぷぷぷ」と笑う。




「ヘレナ。ファイト!です。それと、私のことはミーちゃんと呼んでください。」


「…ミーちゃん、よろしくお願いしますっ。」




 そっぽを向きつつも、なんだかんだ視線はスイミーに向けながら、ヘレナはそう言った。


 スイミーは新しいメンバーに大満足であった。

30話までは毎日更新

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