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日常系ファンタジー  作者: 青井渦巻
生活の章
13/171

監禁

R18ではないです。

 レインは王の一人娘である。


 彼女に指一本でも触れる輩がいれば、必ず王の制裁が下るだろう。


 ちなみに、ヤードマンという男はレインの父親である。




「ニコルソン、お前に使命を与える。」


「はっ!ありがたき幸せ!」


「メイドの一人から聞いたのだが、レインは近頃…城からの脱走を図っているらしい。お前が止めよ。」


「かしこまりました。必ずや、姫を説得してご覧にいれます!」




 ヤードマンの前で跪く男は、騎士のニコルソンだ。


 レインを一番近くで守る、ただ一人の近衛騎士である。


 多感なレイン姫を身体を張って止めるという、とても大変な仕事を、彼は喜んで引き受ける。




「…しかしだな、ニコルソン。レインがそう簡単にお前の言う事を聞き入れると思うか?」 


「勿論、すぐには聞く耳を持って頂けないでしょう。しかし、私には長年姫に仕えてきたという誇りがあります!」


「誇りだけでどうにかなる問題ではない。が、意気込みは買うぞ。」




 ニコルソンは、本音を言えば、頑固な姫の気持ちを変えるなど、神にも不可能だと考えていた。


 しかし、王の期待を受けている以上、自分から引き下がることなど出来ない。


 姫のワガママをただ聞いているだけでも、過去に受けた訓練などとは比べ物にならないほど体力を使うのに、そんなの身体がいくつあっても足りないです!


 と、王に叫びたかったが、当然そんなことはしなかった。




「わしも考えてみたのだ、レインにも納得してもらえるような説得方法を。」


「それは…ぜひ、私にもお聞かせ下さい。」


「うむ。レインは昔から亡霊の類が苦手でな。それを利用して、脱走に成功した!と思った瞬間に、亡霊に扮したお前が…」


「ヤードマン様。如何に変装したところで、レイン様は私の正体を見抜いてしまいます。あの方の洞察力は、並大抵のものではありません。」




 なんだか参考にする価値の無さそうな案だったので、洞察力とかなんとか言って流す。


 王の言葉を遮るのは無礼だが、ニコルソンはそういうことを天然でする男であった。


 ヤードマンは別に気にした様子もなく、彼の言葉にただ「そうか。」と頷いた。




「では、ニコルソン。お前の方からなにか案はあるか?」


「私、ですか…はい、少し時間を頂ければ、瞬く間に妙案を閃いてみせます!」


「お前を疑っているわけではないが、一度だけ問う。それは、嘘ではないな?」


「…はいっ!!我が主に誓ってっ!!」


「では、わしは今から瞬きをする。この眼が閉じ、そして開いた瞬間に案を出すのだ。良いな?」




 ニコルソンが適当なことを言っているのを、王は知っていた。


 彼はニコルソンの性格を知っているので、それを責めるつもりはなかった。


 だが、最近はいい加減さがエスカレートしてきているので、自戒させるためにこのようなプレッシャーをかけてやった。




「王、我が主よっ!!思い切りましたっ!!」


「…思い切り?」


「はい、思いつきました!!」


「まだわしは眼を閉じてすらいないが?」


「あっ、申し訳ございません!!私のことなど気にせず、お閉じになってください!!」




 ニコルソンは、これでも腕の立つ男であった。


 ヤードマンは彼の性格は知りつつも、その腕を信用して護衛にしたのだ。


 それに、やる時はやることも知っている…事実、この男がレインに仕えている間、レインは一度も危険な目に合っていない。


 そんな実績を含めて信用しているのだが、しかし、目の前の彼を見ていると、段々と不安になるのであった。




「…まあ、よい。それで妙案とはどんなものだ?」


「それは…ふ、複雑な計画ですので、よくお聞きになってください。」


「分かった。話せ。」


「まず、レイン姫を…監禁致します。」




 ニコルソンの言葉に、ヤードマンの顔が険しくなる。


 その瞬間、ニコルソンの空気察知センサーが反応する。




「監禁という表現は無礼でした。正しくは、軟禁でございます。」


「ニコルソンよ…」


「軟禁と言ってもっ!姫を汚い牢屋などに閉じ込める気は毛頭ございません!ただ、しばらくの間は自室に…篭っていて、頂こうかと。」


「自室…か。」




 なんとか王の立派な顔を安らがせることに成功した、誇り高きニコルソン。


 しかし、その心の内では計画の続きを考え直すことを密かに決め、悩んでいた。


 本来は魔法などで姫を洗脳するつもりだったのだが、そんな非人道的な発言が許されるはずがないと、今しがた理解したのだ。




「で、その後はどうするつもりだ?」


「その…ですね。私の計算によりますとですね、引きこもり中の姫は寂しくなると思うのです。」


「ほう?寂しい、か…なるほどな。」


「ですので、誰かを一緒に篭らせて、姫と生活させるというのは…いかがでしょう。もちろん、監視の役割も与えて。」


「その誰かとは?」




 ニコルソンは口から出まかせを言っているだけで、誰をその任に就けるかなど考えていなかった。


 ここで適当な人間を選ぶと、首が飛ぶような気がした彼は、レインに選択を委ねることにした。




「レイン姫が直々に選択されるのがよろしいかと!」


「…ふむ、お前ではないのだな。」


「私が、姫と!?そんなことになったら、私は姫に殺されてしまいます!どうかご容赦を!」


「ニコルソンよ…お前は日頃、娘からどの様な扱いを受けているのだ?」




 かくして、レインのドキドキ監禁生活が始まるのであった。


 監禁生活のパートナーに、彼女は誰を選ぶのであろうか?

30話までは毎日更新

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