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日常系ファンタジー  作者: 青井渦巻
生活の章
11/171

仲間

ライフリライフ勢揃い!

「ガジルくん、早く早く!見逃しちゃうよー!」


「ま、待ってくれエリン…!はぁ、はぁ…」




 ゼブラの率いるパーティ『ライフリライフ』はダンジョンを攻略し、その最奥部、宝が眠るという部屋に到達していた。


 エリンは光輝く迷宮の天井を指差し、同じくらい輝く目を細める。




「こんなに綺麗な景色が広がってるなんて…凄いねー、ダンジョンは…!」


「うん。最初は驚いたけど、ここに来れて嬉しい。」




 宝石のような眩さに満ちた荘厳な部屋で、エリンとアリエルは口々に感想を述べた。


 後ろから少し遅れてやってきたガジルも、部屋に入った瞬間、その不可思議な光に目を見開く。




「こ、こんな場所が存在していたのか、ここには…」




 感嘆の言葉を漏らすガジルへ、ゼブラが声をかけた。


 彼は少し笑みを浮かべつつ、ガジルの肩に手を置いた。




「悪くないだろ?」


「ゼブラ…ああ、そうだね。」


「これが冒険の醍醐味ってやつだな。」




 何の気も無さげにそう言ったゼブラの顔を、ガジルはちらりと一瞥し、確認する。


 ゼブラは先程と同じ笑顔で、この部屋の天井を見上げていた。


 上になにかあるのかと、気になったガジルも顔を上げてみる。




「…これは…!」




 そこには、大きなドラゴンが影もなく飛んでいた。


 威圧的な巨躯を持て余し、退屈そうに尾を巻いているが、こちらに気付いた様子はない。


 しかし、もし敵と認識されれば全滅してしまう!と慌てたガジルは言った。




「皆、逃げよう!」


「大丈夫だ。ドラゴンは人間になど興味はない。視界に入っても無視するだろう。」


「もー、心配ショーだなぁガジルくん!」


「エリン、それを言うなら心配性だよ。」




 まったくドラゴンを警戒していないメンバーの様子を見ていると、ガジルも不思議と危険が無いことを納得した。


 安心した彼は、一気に引き上げた警戒心を緩やかに解く。


 すると、硬直していた体から急に力が抜けたことで、思わず尻もちをついた。 




「い、いてっ!!」


「わっ!だ、大丈夫!?ガジルくん!」


「へ、平気だよ、エリン…なんだか、安心したら力が抜けてさ。」




 エリンは慌てて彼の方へ駆けよるが、なんでもなかったと知って「なーんだ!」と笑った。


 彼女に続いて駆け寄ったアリエルは、ガジルが怪我をしていないか素早く確認する。




「痛いところはない?」


「アリエル…ありがとう。強いて言うなら、お尻がヒリヒリするくらいさ…はは。」


「そう、良かった。」




 そんな風にパーティと掛け合いをしながらも、ガジルは自分がゼブラ達に心配をかけてしまうことを気にした。


 いつもはそれを口に出さないが、しかし今は安心していたせいか、ついそれを言葉にしてしまった。




「僕は、君達に心配ばかりかけているな…」




 彼の一言と寂し気な表情に、アリエルもエリンはどうしていいか分からず、ゼブラの方を見た。


 ゼブラは一つ頷くと、ガジルの前に立って、座り込む彼の手を力いっぱい引き上げた。




「…ガジル。」


「…ゼブラ、すまない。こんなこと、言うつもりじゃなかったんだけど。」


「バカだな、お前は。そんなことを気にしてるのはお前だけだぞ。」


「え?」




 ゼブラの言葉を聴き、不思議そうな顔でゼブラを見たガジル。


 すると、彼の耳には仲間たちの明るい声が響いてきた。




「そうだよ!私たちパーティだし、メンバーのこと心配するのは当たり前じゃん!」


「ガジル。私はガジルより、エリンの方が心配だよ…だって、ガジルはトラブルを起こさないでしょ?」


「アリエル!それは言わない約束でしょ!」




 仲間の温かい気持ちを知り、ガジルは呆然と立つ。


 そんな彼の肩に、ゼブラは再び片手を置くと、困ったように笑いながら言った。




「お前だけ遠慮する必要がどこにあるんだ。俺はお前を頼りにしてる…だから、お前も俺達を頼ってくれよ。」


「ゼブラ…ああ、僕は少し…考えすぎていたのかもしれない。」




 ガジルの心はすっと軽くなった。


 彼がくすっと笑うと、それを見たパーティメンバーも一緒に笑うのであった。

30話までは毎日更新します

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