仲間
ライフリライフ勢揃い!
「ガジルくん、早く早く!見逃しちゃうよー!」
「ま、待ってくれエリン…!はぁ、はぁ…」
ゼブラの率いるパーティ『ライフリライフ』はダンジョンを攻略し、その最奥部、宝が眠るという部屋に到達していた。
エリンは光輝く迷宮の天井を指差し、同じくらい輝く目を細める。
「こんなに綺麗な景色が広がってるなんて…凄いねー、ダンジョンは…!」
「うん。最初は驚いたけど、ここに来れて嬉しい。」
宝石のような眩さに満ちた荘厳な部屋で、エリンとアリエルは口々に感想を述べた。
後ろから少し遅れてやってきたガジルも、部屋に入った瞬間、その不可思議な光に目を見開く。
「こ、こんな場所が存在していたのか、ここには…」
感嘆の言葉を漏らすガジルへ、ゼブラが声をかけた。
彼は少し笑みを浮かべつつ、ガジルの肩に手を置いた。
「悪くないだろ?」
「ゼブラ…ああ、そうだね。」
「これが冒険の醍醐味ってやつだな。」
何の気も無さげにそう言ったゼブラの顔を、ガジルはちらりと一瞥し、確認する。
ゼブラは先程と同じ笑顔で、この部屋の天井を見上げていた。
上になにかあるのかと、気になったガジルも顔を上げてみる。
「…これは…!」
そこには、大きなドラゴンが影もなく飛んでいた。
威圧的な巨躯を持て余し、退屈そうに尾を巻いているが、こちらに気付いた様子はない。
しかし、もし敵と認識されれば全滅してしまう!と慌てたガジルは言った。
「皆、逃げよう!」
「大丈夫だ。ドラゴンは人間になど興味はない。視界に入っても無視するだろう。」
「もー、心配ショーだなぁガジルくん!」
「エリン、それを言うなら心配性だよ。」
まったくドラゴンを警戒していないメンバーの様子を見ていると、ガジルも不思議と危険が無いことを納得した。
安心した彼は、一気に引き上げた警戒心を緩やかに解く。
すると、硬直していた体から急に力が抜けたことで、思わず尻もちをついた。
「い、いてっ!!」
「わっ!だ、大丈夫!?ガジルくん!」
「へ、平気だよ、エリン…なんだか、安心したら力が抜けてさ。」
エリンは慌てて彼の方へ駆けよるが、なんでもなかったと知って「なーんだ!」と笑った。
彼女に続いて駆け寄ったアリエルは、ガジルが怪我をしていないか素早く確認する。
「痛いところはない?」
「アリエル…ありがとう。強いて言うなら、お尻がヒリヒリするくらいさ…はは。」
「そう、良かった。」
そんな風にパーティと掛け合いをしながらも、ガジルは自分がゼブラ達に心配をかけてしまうことを気にした。
いつもはそれを口に出さないが、しかし今は安心していたせいか、ついそれを言葉にしてしまった。
「僕は、君達に心配ばかりかけているな…」
彼の一言と寂し気な表情に、アリエルもエリンはどうしていいか分からず、ゼブラの方を見た。
ゼブラは一つ頷くと、ガジルの前に立って、座り込む彼の手を力いっぱい引き上げた。
「…ガジル。」
「…ゼブラ、すまない。こんなこと、言うつもりじゃなかったんだけど。」
「バカだな、お前は。そんなことを気にしてるのはお前だけだぞ。」
「え?」
ゼブラの言葉を聴き、不思議そうな顔でゼブラを見たガジル。
すると、彼の耳には仲間たちの明るい声が響いてきた。
「そうだよ!私たちパーティだし、メンバーのこと心配するのは当たり前じゃん!」
「ガジル。私はガジルより、エリンの方が心配だよ…だって、ガジルはトラブルを起こさないでしょ?」
「アリエル!それは言わない約束でしょ!」
仲間の温かい気持ちを知り、ガジルは呆然と立つ。
そんな彼の肩に、ゼブラは再び片手を置くと、困ったように笑いながら言った。
「お前だけ遠慮する必要がどこにあるんだ。俺はお前を頼りにしてる…だから、お前も俺達を頼ってくれよ。」
「ゼブラ…ああ、僕は少し…考えすぎていたのかもしれない。」
ガジルの心はすっと軽くなった。
彼がくすっと笑うと、それを見たパーティメンバーも一緒に笑うのであった。
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