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日常系ファンタジー  作者: 青井渦巻
運命の章
100/171

監禁解除

監禁の続きです。

 レインは監禁されていた。


 一国の姫ともあろう人物が、どこに監禁されているのか……答えは自室である。


 彼女は王の命令の下、大人しく部屋に閉じこもっていた。




 そして、その隣には2人の冒険者がいる。


 この世の半数の魔法陣を発明したという、天才錬金術師の少女・パルル。そして、冒険者ギルドの職員として活動を続けるパラディン・アバトライト。


 この2名をお供にして、レインはジッとしているのだった。




 が、無抵抗に見えるのは表面上だけである。


 実は彼女、腹の中ではダッシュツ計画を練っているのだ。




「ところで、レイン様。どうやってヒマクについて調べるの?」


「まずはここから抜け出しますわ」


「いきなりすぎるよ」




 最初から抜け出すつもりで、彼女は計画を考えている。決して唐突ではない。


 が、今初めて知ったパルルとアバトライトは、ちょっとビックリである。


 真面目な聖騎士は、彼女を咎めた。




「お待ちください。王の命令を無視して、抜け出すのはいけません」


「あら、アバトライト。あなたは私の騎士でしょう?お父様の命令よりも、私の命令を優先しなさい」


「そういうワケには参りません」




 レインは少し顔を顰める。


 相手がいつも通りニコルソンであれば、簡単に折れてくれるだろう。かの騎士団長は怠け者だ。


 しかし、アバトライトは聖騎士然としており、適当なことはしてくれない。




「仕方がないわね……あなたの力は絶対に必要だけれど、そういうことなら手段を選ばないわ」


「どういうことですか」


「パルル様、お耳をお借りしてもよろしいかしら」


「ん?いいよ」




 事を思い通りに運ぶため、彼女はパルルを頼った。


 コソコソ話す2人の様子を、アバトライトはボーゼンと眺める。


 しばらくすると、彼女らはお互いに頷きあって離れた。




「じゃ、アバトライト。しばらく大人しくしててよ」


「え?パルル、一体なにを話して――」




 質問をする彼の言葉は、パルルの発動した魔法陣によって遮られる。


 少女のいきなりの行動に、アバトライトは焦った。


 彼はパライズ状態を付与されて、身動きが取れなくなってしまう。




「バカな!君はまさか、彼女の脱出を手伝うのか!?」


「これも姫を生かすためだよ」


「なっ……」




 アバトライトが確認すると、発動したのは即席の魔法陣らしかった。


 さっきの耳打ちによって、姫の要望通りに作ったのだろう。


 パルルは姫の面倒を見るために、言われたことは粛々とやる。




 邪魔者を封じたレインは、まず部屋の窓を睨んだ。


 監禁の話になってからは、そこは当然、外側から鍵がかかっていた。それも魔法による施錠。


 しかし、あらかじめ計画しておいた彼女に抜かりはない。




 要するに、内側から鍵を開けさえすればいいのである。


 彼女はある程度の魔法が使えるのだが、それによる仕掛けはあらかじめしておいた。




(施錠は封印魔法の類。封印魔法は外側からの刺激に強いけれど、内側からなら……)




 試したことのない方法だったが、彼女は仕掛けを発動する。


 すると、それと同時に、窓は弾かれたように開いた。




 アバトライトは驚愕の表情を浮かべながら、眼の前の光景が信じられないように呟く。




「そんな……かなり強い施錠だったはずです!どうやって……!?」




 すると、姫君は澄ました顔で答えた。




「簡単なことよ、アバトライト。かけられた魔法の中に、自分の魔法を仕込んでおいたの」




 仕組みを説明すれば、それほど難解ではない。


 封印魔法は窓の開閉というルールを制限していた。そこに異物である魔力が流れ込めば、バグが起こる。


 魔法の無効化を行う時、要になるのは魔法式の無力化である。成立しない魔法式は、予期せぬ暴発もせず、なんの力も持たないのだ。




「さあ。こんなところからは早く出て行きましょう」


「……まあ、王様にバレなければいいよ」


「いいわけないだろう!君は脱走の補助をしているんだぞ!?」




 とりあえず、最初のミッションは果たされた。


 後はこのまま、ヒマクの情報を追う。レインの瞳は猫のように鋭く光った。

脱出ゲームです。

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