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色無き王~十二の色~  作者: Riviy
第三部
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第七十六色 エーヴァ防衛城


アルヴァナ帝国とパール王国の国境付近。数メートルだけアルヴァナ帝国側に寄った場所に世界戦争にて使用された古城が存在する。かつて世界戦争の小競り合いで発生した隣国や遠方の国からの侵攻を防ぐために建設された城。敵の侵入を阻む目的で可笑しな形、五角形に展開された壁。その壁の内側にそびえ立つ錆びれた黄土色の鐘を備えた城。今ではリーナル公国が絶対的防御力を誇っているが、世界戦争ではこの城を攻略できる者は存在しないほどに難攻不落の要塞だった。難攻不落の異名を今でも好き勝手、この城は自分を表す言葉だと言わんばかりに使用している。魔物の侵攻によっていまだ一度も破壊されたことがないからだ。そしてその城と壁を合わせて要塞は此処を作った創立者と地名を合わせて、エーヴァ防衛城と呼ばれている。


そのエーヴァ防衛城にアーサー達『覇者』六人を含む八人は足を踏み入れていた。サグラモールとグリフレットの転移魔法を使い、ラヴェイラの討伐と言って良いのか分からない事件から約三日後、既に移動を完了したペリノア達に数時間の遅れを取る形で到着した。ラヴェイラのことは共犯者であった魔牙の仕業と結論付けられ、一瞬の混乱のあと終息した。

敵の侵入を阻む鉄格子が嵌められた巨大な門。その先には何百年経とうとも鋭さが変わらぬ突起がつき、侵入を串刺しにせんと刃を光らせている。


「アルヴァナ帝国騎士団第三部隊副隊長アーサー・ロイ。情報は行っていると思うけど」


門の前、警備に当たる二人の騎士にアーサーが会釈と共に言えば二人は「久しぶりだなぁ!」「元気だったか!?」とアーサーの背を叩いて激励と労いを送る。そしてルシィに軽く会釈し、続いて今回の戦いの要にもなる六人の『覇者』に重々しく会釈した。それにカラドックとフローレンス、ボールスが慌てていたが、それを無視する形で中に入る許可を仲間にもらったアーサーは彼らを促して中に入る。


「ロイ!ノア様が二時間後、中央の間ーー星座の間に集まれって!」

「分かった。ルシィ、ノア様に連絡魔法お願い」

「はい、お任せください」

「ありがと」


仲間の騎士に返答しながらアーサーは隣を歩くルシィに頼む。ルシィは快く頷きながら即席で連絡魔法を発動させる。ただ到着したことを伝えるだけなのでそんなに時間はかからないし、なんなら伝言を残すだけで良い。壁の内側に広がっていたのは古びてはいるものの立派な作りをした城だった。侵入者を念入りに考えた作りとなっており、壁の中腹には侵入者を狙撃や偵察するためなのか瓦礫が一部分だけ取りやすいように工夫されている。また中庭には噴水があるが水は通っておらず、逆に侵入された場合を想定しているのか平らな部分には茨が巻き付き、侵入者の血を吸おうと待ち構えている。古城には既に多くの騎士や兵士が来る戦いのために備え、訓練に励んだり警戒をしている。その鬼気迫る迫力と緊張感にフローレンスが小さく呟く。


「……此処は、もう……戦場なんですね……」

「魔物が侵攻する明確な場所は此処の先だけど、拠点には持ってこいでしょ」


もう少しで人類側にとっては生死を分かつかもしれない戦いが始まる。その事実にフローレンスがブルッと武者震いをすれば、アーサーが「大丈夫」と彼の頭を通りすがり越しに撫でる。アーサーの優しさにフローレンスも落ち着いたのか「はい」と言う。


「今から君達を仮眠室に案内するよ。仮眠室と言っても自室みたいなものだし。人数が多いから一部同室になっちゃうけど大丈夫?」

「そりゃあしょうがねぇだろうさ。しっかし坊主」


後頭部をかきながらカラドックがアーサーに問う。鉄で作られた頑丈な扉を押し開けるアーサーをグリフレットとカラドックの右腕が援護する。ゴゴゴ……と鈍い地響きを立てて扉が内側に開き、古城の更に奥へと彼らを手招く。レディーファーストで女性達を先に中に入れ、最後にアーサーが中に入ると、内側からは簡単に閉められるらしく片腕だけでゴトン……と音をして扉が閉まった。古城の中は古城と言ってはいるものの、それを感じさせないほどの威厳と戦いの功績を保ち、ドラゴネットが「ほぅ……」と感嘆のため息をつくほどに立派な絵画が天井いっぱいに描かれていた。アーサーは知って勝手で目の前の古びた赤いカーペットが敷かれた階段を登る。とふいに自分の後を追って階段を登ろうとしていた彼らを振り返った。


「そう言えばカラドックさん、俺になに聞こうとしてたの?」

「いんや、此処に来たことがあるような足取りだったからよぉ気になって」

「確かに!アーサーくんの足取り、スムーズだよね!」


カラドックの問いかけにドラゴネットが同意して言えば、隣のボールスもコクンコクンと頷く。少しでも知らない緊迫感と緊張から逃げ出したいかったのだろう。そして多くの人々からの物珍しげな視線。自覚がなく、現れることがなかった六人の『覇者』。他六人を知っている身からすれば気になるのは仕方がなかった。そんな仲間達の視線を追い払いつつ、アーサーは階段を駆け上がって言う。その後を彼らも追う。


「うん確かに俺は此処に来たことがあるよ。魔物討伐の中間地点で何度か使ったからね」

「なるほど納得ー!」


カラドック達三人が納得したところでアーサーは彼らを自称仮眠室ーー自室が密集する四階へと案内した。


……*……


彼らを各々部屋に案内したのち、荷物を置いて廊下に集合することにした。アーサーはエーヴァ防衛城の一室、自分に割り当てられた部屋にて旅服から軍服に着替えていた。いまだ旅の途中と言っても、此処は仕事場でもある。約二ヶ月半着ていなかった正装。精神的には半年も着ていなかった気がするほど、懐かしくて気がいつも以上に引き締まった。紺色のネクタイを全身が映る鏡の前で締め直して、アーサーは「よしっ」と気合いを入れる。


「……此処にいられるだけできっと、幸運なんだろうな」


ポツリと鏡の中で空色の瞳が雨のように歪む。十二人の『覇者』。勝つとはまだ決まっていなくて、でも、強いことをアーサーは知っている。だからこそ、この場にいる自分をーー


「っ、と」


ガンッ!と鏡を叩いてネガティブな思考から現実へと思考を引き戻す。大丈夫、俺だって彼らを支援出来る。だから、大丈夫。アーサーは自らを落ち着かせるともう一度鏡の前で自分自身に頷き、傍らに立て掛けて置いた剣を手に取る。そうして腰につけると忘れ物がないかを確認し、部屋を出た。部屋を出ると既に何人かは廊下で待っていたらしく、アーサーの姿を見て驚いたように目を見開いていた。一方、一応別件でアーサーに部屋に荷物を届けてもらい、そのまま廊下で待機していたであろうルシィは懐かしそうに目を細めた。


「軍服ですね。暫くぶりです」

「え?アーサーが軍服じゃ!」

「か、こ……い!」

「……そう?」


サグラモールとボールスに立て続けに褒められて、キラキラとした瞳で見られてアーサーは嬉しい反面恥ずかしくなってしまい、頬を仄かに染めた。と、タイミングよくグリフレットとカラドック、フローレンスとドラゴネットが部屋から出てきたがアーサーの格好に驚くと共に困惑したようだった。なにか部屋で困ったことがあっただろうか?


「どうかした?なんか不備でも……」


不安げに問うアーサーにグリフレットが胸の前で両手を「違う違う」と首と一緒に振る。部屋ではないのならばなんだと言うのだろう。ルシィと顔を見合せるアーサーの困惑を読み取ったのだろうグリフレットが言う。


「ほら、アーサー、軍服ーー正装?じゃん。僕達もその方が良いかなって」

「確かになぁ……これほぼ一張羅みてぇなもんだけど」

「嗚呼、確かにのぅ。相手には皇子様もおるし……」


そこでアーサーとルシィを抜かした全員が固まってしまった。確かに、皇族がいるのに正装じゃなくても良いのか?アーサーとルシィから寛大だとは聞いてはいるが、不安にもなる。アーサーは彼らの心配に小さく微笑ましいなぁと笑う。


「大丈夫だよ。俺のはただ仕事着みたいなもんだし。それに、それを言うならルシィも軍服にならなきゃいけないでしょ」

「私の正装はこれです」

「ね。だから、君達は君達のままで良いよ」


ねっ、とルシィと共に笑って言うアーサーに彼らはホッと胸を撫で下ろすと共に密かに褒められて嬉しそうだ。小さく笑い合って一時の幸福を味わえば、そろそろ時間だ。ペリノアが指定した星座の間はエーヴァ防衛城のほぼ中心に位置する広間でそこに十二人の『覇者』と今回の戦いのおいて各隊の隊長が集まるはずだ。全員が納得したところでアーサーが「こっちだよ」と手招きながら振り返る。その時、アーサー達が向かおうとする前方からガシャガシャとなにか音が響き出す。その音とルシィの鼻を動かす動作にアーサーは少々の懐かしさを覚えながら前方を振り返り、待ち構えていたかのように両腕を広げる。


「お帰りなさいアーサーさんっ!ルシィさんっ!」

「ただいま」

「ただいま戻りました、ディナダンさん」


待ってました!と言わんばかりの状態のアーサーの腕に飛び込んで来たのは案の定、ディナダンだった。ディナダンはアーサーに抱きついた後、ルシィの右手を無邪気に取ると頬擦りした。まるで猫のようだとルシィはクスリと微笑ましげに笑うとディナダンは「お帰りお帰り♪」と言い足りないのか、歌うように言う。そんな彼女の頭を妹を見る兄のように優しく撫でるアーサー。突然のディナダンの登場にサグラモール達は困惑しているようだったが、時折アーサーの友人の話で出てきた名前だと気づいたらしい。


「もし、か……し、て……?」

「あっ、光の座の方かな?」

「多分そうじゃろーな。なんていうか……」

「明、るい……」


ボールス、フローレンス、サグラモールがじゃれるアーサーとディナダンを見てほっこりと笑いつつ納得する。挨拶はしたが全員が全員、『覇者』を知っている訳ではない。するとディナダンはアーサーとルシィの後ろにいるサグラモール達(見かけない人達)を見つけ、パァァ!と花のような、太陽のような笑みを浮かべた。その無邪気で明るい笑顔にフローレンスが「んっ」と小さく声を詰まらせていた。


「あ、『覇者』さんら?『覇者』さんだよね?ウチ、会えるの楽しみにしてたの!」


アーサーの背後からヒョッコリと顔だけを出してディナダンは言う。ドラゴネットが「可愛い」と小さく呟くのをカラドックは小耳に挟んでいた。興奮して目をキラキラと輝かせるディナダンのお団子をポンポンと弾ませながらアーサーはクスクス笑う。


「自己紹介と遊ぶ約束はあとでお願いしますねディナダンさん。星座の間に行かなくてはならないので」

「そうだった!早く行こう!みんな待ってるから!」


ニコニコと笑ってアーサーの手を両手で「早く早く!」と引っ張るディナダンを先頭に彼らは静かな戦場への道を歩き始めた。

今日から第三部突入です!一応、前編後編の目安はありますが……書かなくても大丈夫かなって思ってます。って言っておきながらどっかで書くんですよきっと!←

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