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色無き王~十二の色~  作者: Riviy
第二部
71/130

第六十五色 黒に染められた道


四方八方で刃を交差させ、弾き合う甲高い音が響いている。誰も彼もが青空のもと大声を上げ、目の前の敵を狩ろうと必死だった。


「ったくよぉ!?四時と七時の方向からくっぞ!」

「う、わぁ!?」

「フローレンス、無理しないで!下がって!」

「援護します!」

「全体、魔法……や、る?」

「ボールス、それは妾達が巻き込まれること前提になるんじゃが!?」

「お願いだから初期のルシィみたいな思考やめて?!敵の集団のど真ん中なら良いけどさぁ?!」


アーサーの言葉にボールスは何を思ったのか杖を見下ろし、背後に控える召喚獣に指示を出した。それと同時にグリフレッドが後方に倒れかけるフローレンスを受け止め、薙刀を振り払う。二人の目の前で大きく爪を振り上げていた魔物がその一撃に大きく悲鳴を上げて撤退する。そこにカラドックが素早く魔物に接近し、背後から首を掻き切りトドメとする。ルシィがフローレンスとグリフレッドを囲もうとする別の魔物に向けて光属性の魔法を放ち、蹴散らすとそこにサグラモールが火属性の魔法を放ち魔物を燃やしていく。地響きのような悲鳴を上げ、不協和音のように奏でながら魔物が消えていく。アーサーは友人達の見事な連携を横目に自らも付近の魔物に向かって剣を振り回した。するとボールスが召喚した召喚獣がアーサーが攻撃した魔物に自らも噛みつくようにして攻撃し、その胴体を容赦なく引きちぎっていく。そのおぞましさにアーサーは片方の口角を上げ、いびつに笑うと引きちぎられた魔物の胴体を足場に大きく跳躍した。


アーサー達はダイヤ魔導国を出発し、カラルス聖王国との国境近くに来ていた。残り一人の『覇者』がいるとすればカラルス聖王国の可能性が高い、というルシィとグリフレッドの考えからだった。またダイヤ魔導国の町を出発してしばらくした途端、風に乗って『覇者』の微かな残り香がするとルシィが言ったのも決め手の一つだった。五人もいるのだからそのうちの一人とも言い難かったが、ルシィは頑なに「違う」と頭を振った。最後の一人、想の座を司る『覇者』のみの匂いを嗅ぎ取るだけとなったためか、今までよりも鮮明に分かるのだと云う。場所は相変わらず微妙な点が多かったが、グリフレッドの言う通り、ダイヤ魔導国にはもういなかった。そこでアーサー達はカラルス聖王国を目指して歩いていたのだが……何故か国境近くで魔物の集団に襲われている。今が夜ではなく、昼間で良かったと常々思うが見渡す限り魔物の頭しか見えない。嬉しくもない。


「っと、多すぎる!」

「カラドック一回下がって!後ろ危ないから!」

「行くぞお主ら!〈炎爆風ファイアー・エクスプローション〉!」


炎を纏った爆風がナイフを振り回すカラドックの傍らに落下する。その近くにいたアーサーは彼と背中合わせになって魔物を蹴散らし、サグラモールの放った魔法に魔物を突っ込むと魔物は炎を纏い草木の切っ先をも燃やす爆風に巻き込まれ、空に打ち上げられて燃やされていく。そのまま爆風は魔物の群れの中を縦横無尽に駆け回り、魔物を焼き付くしていく。だがそれでも魔物の数は一向に減らない。アーサーは剣を上段から振り下ろし、魔物を消滅させながら額に浮かんだ汗を腕で乱暴に拭う。数が多過ぎて全てを倒しきれない。このままでは魔物を倒すよりも先にこちらの体力が底をついてしまう。実際、サグラモールとフローレンス、ボールスは物理というよりも魔法系が多いためか魔力の急激な減少により、大きく肩で息をしていた。体力が限界に近いと云うのは言わずとも分かった。そんな三人を狙うように魔物が襲いかかるのだから、結構自分達を襲ってきた魔物は馬鹿ではないのかもしれない。三人に襲い来る魔物に地面を蹴って跳躍すると間に滑り込み、アーサーは剣を横に凪ぎ払った。ルシィやカラドック、グリフレッドによって支援系の魔法が一時的に剣にかかっているはいるが、そろそろ時間切れが迫っている。物理で殴っても良いが、先程考えたように先に倒れるのはこちらだ。魔物の群れの中に全体攻撃魔法が何度も放たれているが、魔物は蹴散らしても蹴散らしても何処からともなく新たな仲間を引き連れて出現していた。アーサー達がいるのは普通の道。だが、片側は深い森となっていてその森から魔物がうようよ現れるのを見るに、魔物の棲み家なのだろう。それがどういうわけか、アーサー達に反応して出現しているようだが。魔物を凪ぎ払い、一息つくアーサーのもとにルシィがやって来る。ルシィが自身の足にかけた〈速度上昇(スピード・アップ)〉はすでに切れかかっており、緑色の風が「もう終わりだよ!」と言わんばかりにルシィの片足を螺旋を描くように微かに舞っていた。


「どうします?」

「もうサグラモール達は限界に近いよ……何分くらい激闘してる?」

「一時間半は確実にってる。しかもサグラモールは全体攻撃を連発してるから魔力の消耗が他の二人より激しい」


アーサーの問いに答えたのはルシィではなく、二人の前に立ち塞がるように現れたグリフレッドだった。隣にはいつの間にかカラドックも共におり、素早すぎる動きに目を見張ってしまう。カラドックは少々疲れたのか、腰に右手を当てながらうようよと嬉しくない絨毯を作る魔物を睨み付けている。


「近くの森から出て来てんなぁ」

「森を突っ切るって云う作戦は無理そうだね」

「ルシィ、三人のことお願い」

「はい」


ルシィにフラフラと今にも倒れそうになっている三人を頼み、アーサーはグリフレッドとカラドックと共にどうするべきかを考える。前門は魔物、片側が魔物の森、後門はただの道。逃げるなら魔物がいない後方からしか道はない。だが、ただ闇雲に走って逃げても魔物が追い付いてしまえば意味はない。どうする?すると〈探索の眼(サーチ・アイ)〉をカラドックが使ったらしくアーサーの目に違和感と言うか、なにやらかかった感じがする。目の前の風景に魔法の余韻である波線が薄い余韻を残して消えていく。何を探せば良いのやら……と何気なく道をアーサーは見下ろした。その時、先程は見えなかった道に黒い線が刻まれていることにアーサーは気づいた。その線は魔物が次々現れている森から続いており、一直線に道を進んで行っている。線を目で追うとその向こう側は丘。丘で見えないはずの道の先、瞳に魔法がかかっているためか、丘の向こう側に古びた村が見えた。廃村なのだろうか、魔法越しに見た村に活気が溢れているようには到底見えなかた。薄暗い雲に覆われているかのように薄暗く、昼間にも関わらず今にも幽霊が出て来そうな雰囲気だ。アーサーが気づいた黒い線はその村に向かって伸びている。気づいているのは〈探索の眼(サーチ・アイ)〉が付与されているアーサーだけらしく、かけた本人であるカラドックもグリフレッドも魔物や森、空を射ぬかんばかりに睨み付けていた。


「アーサー?どうしました?」


アーサーがずっと道を睨み付けていることにルシィが気づいたらしく、不思議そうに彼を見つめ返していた。ルシィに魔法がかかっていることを示すようにアーサーは目を指差すとルシィは納得したらしく、アーサーが見据える後方を振り返った。そこにあるのは道だけだが、ルシィも瞳に〈探索の眼(サーチ・アイ)〉をかけたらしく、道の向こう側、丘の向こうにある廃村に気づいた。そして二人は何を云うこともなく強く頷き合った。


「グリフレッド!カラドック!良い方法見つけた!」

「え、なに!?」


二人を勢いよく振り返りそうアーサーが叫べば、二人の視線も道に伸びる謎の黒い線と今まで見えなかった廃村に向かう。嗚呼、なるほど。ニィと上げられた口角にこれ以上の選択肢なんてなかった。なら、動き出すのは当然でしょう?動き出そうと足を踏み出すグリフレッドとカラドックに魔物もそうはさせるかと一斉に飛びかかる。がグリフレッドが薙刀を振り、敵を後退させるとカラドックが素早くナイフで空を切り、言葉を紡ぐ。


「〈風が消えたその先で(ウィンド・ナイーシィ)〉!」


緑色の風がアーサー達を足元から包み込み、土煙を伴って巻き上げたかと思うとその姿を掻き消して行く。気配遮断魔法。薄れ行く彼らを魔物が逃がすかと、我先にと襲いかかるが既にそこに彼らの体も姿もあるはずない。薄まった気配に魔物はアーサー達を探ることは出来ない。戦っていた魔物が将軍格や魔牙のように魔法を操り、指揮官を持たない無秩序な集団であることはすでに把握済みだ。何処だ何処だと濁った瞳を一斉に左右に振る魔物を横目にアーサー達は一目散に道を駆け出した。途中でボールスが全体攻撃魔法を放とうと振り返っていたが、カラドックが止めていた。今敵は格好の獲物で的になっているが、攻撃を放てば居場所を伝えてしまうことにも成りかねない。ボールスもカラドックの制止で気づいたらしく、逃げることに専念する。〈探索の眼(サーチ・アイ)〉がかかっているアーサーとルシィを先頭に彼らは謎の黒い線を道標に道を進んでいく。後方では彼らを見失った魔物が手当たり次第に草原を伐採する勢いで攻撃していた。そこに魔物が殺したい相手はいないのに、いるとも分からずに哀れなものである。そんな魔物をアーサーは横目に一瞥し、前に視線を戻した。目の前に現れたのは大きく盛り上がった丘。急な坂を上りきれば、その眼下に広がっているのは重い雲を上空に立ち上らせた古びた建物の集合体。ダイヤ魔導国とカラルス聖王国の国境付近だからか、廃村には聖堂らしき古びた建物も見える。そこから流れてくる何処か生暖かい風が頬を叩くように流れてくる。その風が何故か、血を連想させてきてアーサーは怪訝そうに首を傾げた。もう魔法は切れたので謎の黒い線は見えない。その黒い線さえ、今となっては()()()()()だったのではないかと勘繰ってしまう。突然、不安になってしまったのは魔物に追われる事がなくなったからだろうか。とりあえずの廃村に入るまではまだ安心はできないが。


「アーサー」

「ん、なにボールス?」

「行、こ……?」

「うん」


いつの間にか、息を整えつつルシィ達が丘を下っていた。丘の上で立ち止まってしまったアーサーを心配してか、ボールスが声をかける。彼らの一番後ろにいたカラドックが立ち止まっていたアーサーの背中を右手で叩くと、肩に右腕を置いて肩を組む。まるで家族のような親しみ易さにアーサーはされるがままに引きずられて丘を下る。


「嗚呼~疲れた……」

「カラドック……ま、だ……頑張って」


疲れた疲れたと何処かおちゃらけてカラドックが言うとボールスがグッと両腕に拳を作って励ます。それにカラドックはふにゃりと嬉しそうに頬を綻ばせると、アーサーの肩に回していた右手でボールスの頭を引き寄せるように撫でた。ボールスは小さく微笑むとその手を取って誘導するように引っ張った。カラドックと肩を組んでいる状況のアーサーは軽く締まりそうになった状況から、しゃがんで回避すると先にとっとと行ってしまう彼らの背を見送る。顔だけでを振り返って魔物がこちらに気づいていないことを確認すると先に行ってしまった友人達を追いかけて坂をゆっくりと下りて行く。何故か、見えないはずの黒い線が廃村を目指して伸びていた。


最初から大波乱。ひぃ。

次回は月曜日です!

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