表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
色無き王~十二の色~  作者: Riviy
第二部
52/130

第四十八色 魔物の森、消えた子供



月光に照らされた森が幻想的に、自分達を誘い込む。まるで迷路のように木が壁を作り道を作り、行く手を阻むかのように見えるのは昼間とは違うからかそれとも魔物の仕業か。森の中を右へ左へと進んでいく。その動きはさながら訓練を受けた部隊のように見える。その理由は二種類の魔法で暗闇が怖いほどよく見えるからに他ならない。また足には〈速度上昇(スピード・アップ)〉も付与されているた動きは早く、スムーズだ。目の前に突然現れた木にぶつかることもなく、順調に進んでいく。先頭のカラドックは魔物との戦闘で刺客を狩る際によく使っているらしく、何処に何があるのか記憶していると言わんばかりにヒラリヒラリと木をかわして動き、こちらを誘導してくれる。洞窟は森の奥に鎮座している。最初からこの森にあったのか盗賊が塒として作り上げたのか、そこら辺は不明だが。自分達が目指す裏口があるのはもさらに奥に位置しており、見つかりずらくなっている。視界の隅で共に飛び出た部隊が左へとずれていく。どうやら魔物が集中している入り口の一つが見えたらしい。武器を持つ数人が見えた。そんな彼らに手振りだけで検討を祈り、アーサー達は先に進んでいく。夜風が彼らを鼓舞するように頬を撫でていくが、何処か悲しそうな感じがするのは気のせいだろうか?サグラモールの式が誘導しているとは言え、子供達の不安に森が泣いているのかもしれない。そう思ったと同時に隣で懸命に着いて来ていたサグラモールが前のめりに倒れ込んだ。意識をあちらにやっている、というよりも近づいているからこそ引き寄せられるようになっているのかもしれない。サグラモールを求めて式が子供達を連れて来る。倒れ込んだ彼女を背後で倒れることを想定していたであろうグリフレットが地面にぶつかる直前で抱き止めると、慣れた手つきでサグラモールを背に抱いた。さすがと言うかなんと言うか。


「落とさないでくださいねグリフレット(お爺様)

「否定できないからってルシィも言わなくて良いんだからね?自負してるけどね?分かってて言ってるけどさぁ」

「言ってるんですね」


背中にサグラモールを背負ったグリフレットにルシィがからかいと忠告と共に告げる。落とすなよと脅すと云うよりも忠告めいた悪戯にグリフレットは少し怒ったような口調で言う。自分で言っているが気になる時はあるらしい。一応、『覇者』の中でも最年長だし。それにルシィはからかい過ぎたと感じたらしく、「すみません」と頭を下げた。グリフレットは笑ってその謝罪を受け入れていた。


「カラドックさん……じゃなくてカラドック!あとどれくらい?」

「あと少しってとこかねぇ!洞窟本体は通り過ぎたはず……っと?!」


暫く走っていると突然、カラドックが何かに気付いた。アーサーも気になり、魔法がかかった目で前を見据える。とそこには夜の空を悠々自適と飛び交う魔物がいた。数はおおよそ三体。裏口から出てきた魔物か、それとも違うところに行く途中か。こちらの動きが悟られているはずは今のところないので前者だろう。カラドックがアーサーに目配せしてくる。それにアーサーは頷き、剣の柄に手をかける。


「前方に魔物発見!一時の方向!」

「俺が殺るからその間にカラドックは誘導お願い!」

「私も行きます」


カラドックの伝言にアーサーが叫び返すとルシィが彼の隣にやって来て言う。アーサーがルシィを見れば、ルシィはニッコリと笑って見せた。それにアーサーは頷き、カラドックを見る。彼は頷くだけで何も言わず、真剣な瞳を向けただけだった。それで何が言いたいのかははっきりとわかった。アーサーは近くの幹を蹴り、方向を変えると魔物に向かって素早く、音も立てずに接近する。そのあとにルシィも続く。魔物三体に気づかれずに接近する二人の視界からカラドックを先頭に部隊が外れていく。アーサーは無事に彼らが辿り着くことを祈りつつ、魔物の足元に滑り込むと勢いよく剣を上へ切り上げた。斜め下から切り上げられた攻撃に魔物一体の翼が切断され、地面に落下する。突然消えた仲間に残り二体が甲高い声を上げる。


「〈水の風が(ウォーター・)息の根を止める(ウィンド・エル)〉」


が鳴き声が響くよりも先にルシィの手から魔法が放たれる。手で空を切るように振ったルシィの手から水の刃がいくつも飛び出す。かと思いきやその刃は空中で風を纏い、速度を増す。空中を滑るように水の刃が飛び、魔物二体の口であろう部分に突っ込む。一体は勢いが良すぎたらしく、口元から真っ二つに避けて木に張り付けにされてしまった。もう一体は空中で攻撃を受けたが体勢をなんとか立て直し、ルシィに向かって超音波を放つ。キィィン!とした脳内から揺さぶるような耳鳴りがルシィを襲う。その音と頭を直接殴られているような感覚に一瞬昼間の出来事を思い出してしまい、動きが鈍る。だが、あの時と昼間は全然違う。ニィと口角を上げて笑ったルシィの視線の先にはアーサーが魔物の下に潜り込んでいた。足元に落ちた最初の一体に剣を突き刺し、突き刺したままの剣を軸に大きく跳躍すると魔物に向かって蹴りを放つ。と剣を跳躍した勢いで抜き放ち、空中でクルクルと回る魔物に向けて振り切る。回転の勢いもあって真っ二つではなく四つに切断される。それでもアーサーは万が一だと言うように容赦なく敵を一刀両断し、粉々にまで切り刻む。パラパラと地面に舞い降りる粒子の如く魔物の死骸は地面にぶつかる前に空気に溶けて消えてしまっていた。それを確認し、アーサーは足元と木に張り付けられた魔物も確認する。二体とも既に消滅しており、ルシィが放った魔法と剣が抉った痕しか残っていなかった。


「ルシィ、大丈夫?」

「ええ、大丈夫です。少し超音波に驚いてしまって」

「あんなことがあったばかりだからね」


こちらに寄ってきたルシィの無事にアーサーはホッと胸を撫で下ろした。もう二度と、誰かを失うかもしれないあんな恐怖は味わいたくない。いつか見た夢のようになんて、なってほしくない!ブルリと悪寒が走ったのは昼間のことを思い出したからだけではないような気がした。するとルシィがポンッとアーサーの肩を大丈夫だと叩いた。


「ご安心ください。こう見えて私、強いですから」

「ふふ、知ってる」

「それは良かった」


ルシィの頼もしい言葉にアーサーは安心したように笑い、ルシィも嬉しそうに笑った。二人は周囲にカラドックが見逃した魔物がいないか入念に確かめると先に行った彼らを追って駆け出した。確かカラドック達が行った方向は西だったはず。もし迷った場合はもしものためにグリフレットが片手間に薙刀で木に付けている印を道標に進めば良い。背中にはサグラモール、片手には薙刀でよく刻めたものだと感心してしまう。二人の目の前に現れた木の幹に刻み込まれた一見ミミズが這ったあとのように見える痕。それこそがグリフレットが付けた印だ。だがその印は凝視しなけれいけないほどに小さく、そして刻まれているのおそらくアーサー達にしかわからないような印。というよりも紋様に近くて遠い印だ。紋様に形は似ているが大幅なアレンジを加えているため完全な別物と化している。それでもアーサーとルシィがすぐに分かったのは紋様を嫌と云うほどに覚え、見ているからだろう。魔物は『覇者』の紋様なんて知らないが、知能がある魔牙には良い牽制になりそうだ。


「そういえば、先代にもいらっしゃいましたね」


グリフレットが記した印を優しくなぞり、行き先を確認しているとアーサーの背後にいたルシィが唐突に呟いた。「え?」とアーサーが不思議そうにルシィを振り返れば、ルシィは「『覇者』ですよ『覇者』」と言う。


「先代『覇者』に『道』を異名に持った方がいたでしょう?グリフレットが付けた(それ)がまるで彼女のようだと思いまして」

「嗚呼、ガラハット・ノルスか。先代の防御の座だね。彼女もこんな感じに道標を示していたのかな?まぁ今回の場合は簡単なのだけど」


アーサーの些細な、口をついで出た疑問にルシィはうーんと首を捻る。


「そこまではわかりませんが……しかし、歴史書によれば、目が良かったとのことですよ。それで『覇者』の道標となって導いたとか」

「ホントよく覚えてるよね……」


呆れたというか、関心を通り越してもう驚きさえも起きない。よく歴史書の中身覚えてるな?グリフレットもルシィも。ルシィがえっへんと胸を張ろうとして作戦中だと思い出したらしく、気を引き締める。


「方向は合っていますか?」

「うん、この方向で良いみたい」

「急ぎましょう」

「だね。『覇者』がいるらしいし、早く合流しよっ」


幹に刻まれた印を何処か愛おしげに、何処か名残惜しげに見ずに指先で撫で、先を急ぐためにアーサーは足に力を込めた。ルシィもそのあとを追い、大きく跳躍した。


……*……


二人が暫く走っていると先に行った部隊と合流した。木々が深く生い茂るところに身を隠しているようで、周りに魔物の姿はない。


「こっちこっち」

「二人共、無事みてーだな!」


小声で、けれども確かに二人と合流したことを喜び合うグリフレットとカラドック。その隣ではサグラモールが眠気眼状態で起き上がってきていた。


「グリフレットの目印、助かったよ」

「それは良かった。片手で素早くやった甲斐があった」


目印のお陰で迷わずにすんだことを言えば、グリフレットは嬉しそうに笑い、安心したように肩を落とした。サグラモールも二人の無事に嬉しそうに笑い、意識がなかったうちに様変わりした周囲を見渡す。彼らのもとに駆け寄るとカラドックが指で「見ろ」とある方向を指差す。なんだとルシィと二人で顔を見合わせるとアーサーはその先を覗き込む。自分達がいる茂みの向こう側には夜の闇に溶け込んだ真っ黒な洞窟が大きく口を開けて鎮座していた。月光さえないので目を凝らしても微妙にしか輪郭がわからない。魔法で目を強化しておいて助かった。


「此処が裏口ですか?」

「嗚呼、魔物の意識は全部、月の光が当たる方にしか行ってないみたいだな」

「他の部隊が攻撃を開始すれば、嫌でもこっちの存在を考えるよ。サグラモール」


グリフレットがサグラモールに視線を移せば、彼女は真剣な表情で頷いた。それが何を意味するのか、わからないはずがなかった。


「運良く裏口へ行けた。あとは、子供達次第じゃ」

「んじゃ、オレ達は準備でもすっかぁ。おーい、お前さんたちー!」


サグラモールの答えにカラドックが背後で周囲の警戒に当たっていた部隊の人々に声をかける。と、その時、アーサーは大きく口を開けた洞窟の中になにやら光り物を見つけた。それに思わなず茂みから身を乗り出すようにして立ち上がってしまう。ルシィが慌てて立ち上がったアーサーを茂みに引き入れようとすると、アーサーが小声で叫んだ。


「待って、待ってルシィ!洞窟の中でなにか光ったんだって!」

「光った?……それって!」


アーサーが叫んだ内容にルシィも驚いて立ち上がりかけるが、グリフレットに止められる。アーサーは魔法がかかった目を凝らして光ったものを確認しようとするが、魔法でも見えないくらい洞窟は暗すぎて、全然見えない。子供達で間違いないだろうが、もし魔物だったら作戦は水の泡だ。どんなに目を凝らしても見えない光の正体にアーサーは悪態をつきそうになる。


「くっそ見えない!」

「アーサー、落ち着くんじゃ!多分子供達じゃから!」

「魔物が向こう側から来たって可能性もなくはないでしょ?なら」


その時だった。


次回は金曜日となります!ちまちま先代を出すのが隠し味です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ