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色無き王~十二の色~  作者: Riviy
第二部
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第四十七色 月光の夜


美しくも何処か儚げな月が浮かぶ夜。空に浮かぶ月が美しくも優しい月光を自分達に注がせている。そんな光を体に受けながらアーサーはこの町に入る際にも通った門を通った。破壊された壁の一部分の修繕のため、今朝がた見た警備員はおらず、別の警備員が門の警備に当たっていた。今朝入ったばかりなのにもう出るなんて、変な気分。とアーサーは苦笑をもらしつつ、町の外に、壁の外側に出た。外に出るとリーナル公国に来るまで通った道、風景のはずなのに何処か違って見えた。美しかった風景は何処か恐ろしい風景へと変貌し、来るまでに見つけた木は刺々しい腕を四方八方に伸ばし、行く手を阻むように立っている。朝と夜とでこんなにも違う。そのことに少しアーサーはワクワクとしたがその感情を無理矢理押さえ込んだ。自分達は今から魔物討伐と子供達の救出に行くのだから。


魔物の襲撃と子供達誘拐から早数時間。作戦会議の間に暗くなってしまったが、作戦は実行されることとなった。次の日に持ち込めば、子供達が生け贄にされる可能性もあるため、早急に片付ける必要があった。また、夜に襲撃をかけることで相手の混乱を誘う狙いもあった。またもう一つ、サグラモールの式によって移動しているであろう子供達から魔物の目を逸らす目的もあった。月光があるとはいえ、どちらも森での戦闘は苦労するだろう。そんな中、子供達を救出するにはどう頑張ったって目立つ。生け贄と云うことは魔物は戦闘中に子供達を狙ってくる可能性もある。そこで夜の闇で子供達を隠し、少しでも魔物の矛先を向けないようにする。その他諸々の理由により、夜明けを待つよりもすぐに行動する方が良いとして作戦決行となった。アーサー達も部隊に加わる。担当は使っていないであろう入り口だ。そこにサグラモールの式が子供達と共に来る予定なため、万一を取ってそことなった。式と使用者が合流しなければならない、という制約もありつつどちらか一方がいれば引き寄せられるように式が向かう可能性もあるとのことでそうなった。サグラモールは時々意識があちらに行くのでルシィが付き添いだ。カラドックもその性能から言えば後方支援だが、近くにいた方が子供から視線を逸らすことが容易になるため一緒である。


「一応、夜目効くように魔法かけますか?」

「うん、一応やろっか。カラドックは先頭だし」


今後の作戦を頭の中でアーサーが確認していると隣の方でルシィとグリフレットの声がした。いつの間にか全員、月光の下に登場しており、続々と救出部隊が集結しつつあった。アーサー達の担当は他よりも二人多いが、全て完璧とは多分限らない。速さや支援の関係で先頭で魔物の存在を知らせる役割も持っているのでいるっちゃいる。


「頼むわ~てかそれって何属性になんだ?」

「闇属性かな。重ねるとしたら地属性かな」

「なるほど、お?」


カラドックが納得したような声を上げるとルシィにサグラモールが軽く寄りかかった。どうやらまた意識を微かに飛ばしたらしい。近づいて来ている証拠だ。そんな彼女を横目にグリフレットが部隊全員に向けて魔法を放とうとする。が、何人かは各々でやっているらしく、重ねては悪いと範囲を制限した。魔法の重複は効果によっては薄れてしまうものがあるため、そのような処置だ。寄りかかったサグラモールを自らの肩に頭を乗せるように調整するルシィを優しいなぁとアーサーはほんわかと思い、グリフレットに魔法を頼むよう目配せする。が再びなにかを思い出したらしく、「あ」と困ったような声を上げる。


「僕さぁ地属性の魔法、武器作成のやつしかないんだよね」

「それは任せろ。オレが使える。ルシィはサグラモールの嬢ちゃんに肩貸してなぁ」


グリフレットの心配そうな表情に「大丈夫だ」とカラドックが笑う。ルシィがクスクスと笑って会釈すれば、二人はほぼ同時に魔法をかける。


「〈猫の目(キャット・アイ)〉」

「〈探索の眼(サーチ・アイ)〉」


全員を透明な猫がまるでじゃれるようにすり寄ると目に吸い込まれていき、目が光ったかのような錯覚に陥る。瞳の中に浮かび上がったように見える細い瞳は二種類の魔法がかかったことを示していた。少しだけ違和感のある瞳をアーサーが擦るとルシィとグリフレットが慌てたようにアーサーを止める。魔法をかける際に出てきたように見えた透明な猫も「擦っちゃダメ!」というようにアーサーの手の甲に仄かに頭を擦り付ける。


「嗚呼、アーサー、目を擦らないでください。効果が切れてしまいます」

「あんまり擦ると目赤くなるからやめなさいって」

「え、そうなの?ていうかグリフレットはなんか違う、それ」

「お前さんはアーサーの親父か!」


アーサーの手を透明な猫の代わりとでも言うように掴んで止めるルシィに「わかった」と彼は目を擦るのをやめる。がグリフレットの言い方はカラドックの言う通りにお父さんのようだった。カラドックにそう指摘され、グリフレットは無意識だったらしくフードを被って顔を隠す。「どうしたんだよー」とカラドックが顔を悪戯っ子のように覗き込めば、いつの間にか復活したサグラモールが「なんじゃなんじゃー?」と無邪気に寄ってくる。二人に顔を覗き込まれてしまったグリフレットがアーサーとルシィに助けを求めるが二人は笑って見るだけだ。まるでいつしかのルシィのようでなんとなく可笑しい。クスクスと笑う二人にグリフレットがフードの中で頬を膨らませた。


「遊ばないでよ二人共ー」

「師匠が楽しそうだったのじゃ」

「そうか、サグラモールはグリフレットの弟子だもんな。んー歴史書でもあったようななかったような」

「ところで!サグラモール、状況は?」


またからかわれては堪らないと言わんばかりにグリフレットがサグラモールに聞けば、彼女はグッと親指を立てた。順調に移動しているらしい。式が受けた攻撃は使用者に返ってくるので今のところ魔物の襲来もなさそうだ。というか、襲来があった場合、式が破れる可能性もあるので油断出来ない。


「順調じゃ!それとじゃがな」

「ん?どうかした?」

「アーサーがルシィに見せておった顔と同じ顔の子がおってのぅ。まぁつまり、『覇者』がおる」


サグラモールの断言にアーサー達は嗚呼やっぱりと顔を見合わせれば、ストンと納得した。やはり、あの人物はそうだったか。カラドックはあの酒場から先に出て行ってしまい、いなかったのであとでの説明となったが一日に二人とは魔物に感謝すべきではないが、襲撃がなければ見つからなかった可能性もあるのでなんとも微妙なものである。なにはともあれ、やはりあそこでオロオロしていた人物にルシィが反応したのは事実で逃げようとして捕まったのだろう。その時に襲撃なんてタイミングが良いようにも思うがそれは自分達も同じか。アーサーは腕を組んでルシィを振り返りつつ云う。


「やっぱりあの酒場にいたのはそうだったんだ。ルシィ、残り香で分かる?」

「カラドックさんのあとに現れたのでカラドックさんの残り香的なものかと一瞬疑ったのですが、水の座『水華』で間違いありません。しかし、そのあとに魔物ですのでアーサー達が気づいてくれて良かったです」

「まぁルシィが鼻を動かして反応してたらそう思うよね」


ルシィの言葉にグリフレットがクスリと笑って言えば、ルシィが少し恥ずかしそうに鼻を押さえた。理解してくれているのは嬉しいが少し照れてしまう。するとなにやら疑問に思ったのか、カラドックが頭を片手でかいて言う。


「しっかし、『覇者』ってのはこうもすんなり集まるもんなのか?話の流れ聞く限り、良い流れっぽいが」

「そういうわけではないと思いますが……双神(主人)がどれほどの期間を想定していたのかは分かりませんし……」

「でもまぁ、カラドックの言う通りだね」


確かにカラドックの疑問も一理ある。『覇者』が早く集まるのは嬉しいものだが、なにやら裏があるようにも思えて少し怖くなってしまう。その裏は魔物か双神しか細工さえも出来なさそうではあるし、歴史書での一例もあるのでどうにも言えないが、警戒に越したことはないだろう。


「ルシィのお陰じゃろうて。今までもルシィの嗅覚が見つけてきたようなものじゃしのぅ」

「まぁ早くに見つかった方がこっちとしては良いけどね」

「さすがじゃ!」

「ありがとうございますサグラモールさん」


ルシィに甘えるように抱きついてサグラモールが言えば、ルシィは彼女の頭を優しく撫でる。ルシィの優しい手つきにサグラモールは気持ち良さそうに目を細めると笑う。


「妾達のことも呼び捨てで良いんじゃぞ?アーサーだけズルいんじゃぁあああ」

「俺は関係……あるの?まぁ、グリフレットとカラドックさんはさん付けたい理由も分からなくもない」

エルフの末裔(師匠)と年長者じゃからのぅ」

「なにそれ、僕がおじいちゃんって言いたいのかな?合ってるけどさ」

「合ってんじゃねぇか!」


アーサーとサグラモールのボケのような会話にカラドックのツッコミが飛ぶ。そうしてクスクスと笑えば、緊迫して緊張していた空気が解れて。『覇者』がいるという事実に何処か固くなっていたのかもしれない。それは決してルシィだけではない。


「……ありがとうございますサグラモール」


旅の始めにアーサーに言われたことを思い出したのかルシィは嬉しそうに笑った。ルシィもサグラモールに呼ばれて嬉しいのか笑顔だ。もう本当に姉妹にしか見えないくらい、仲がよろしい。良いことだ。最初の頃よりも一層溶け込み、慣れたのだと教えてくれる。それがルシィにとっても嬉しかったしアーサーも友人として嬉しかった。ペリノアが見れば、親のような表情で眺めるのだろう。そんな二人を微笑ましげに見てアーサーも言う。「これからも頼むね」とアーサーがルシィに言えば、ルシィは「はい」と任せてくれと胸を張ってくれた。そうして二人は何も言わずにハイタッチをかわした。それだけで理解出来たのは相棒だからであろう。アーサーとルシィをグリフレットとカラドックが肩を叩いたりする。なにがあろうとも自分達なら大丈夫。そんな根拠のない自信があった。『覇者』だから、というわけではなく仲間だから、だった。そうしてこれから始まる作戦を前に仲間を鼓舞する。準備は万端だ。


「じゃ、さてそろそろ行こうか」


剣の柄に手を当ててアーサーが言えば、ルシィは両手を握り締め、サグラモールは式の数を確認し、グリフレットは魔法で作り出した薙刀を握り締め、カラドックはナイフを抜き放った。周囲でも救出部隊が次々と出発を開始している。自分達も行こう。そう言うようにアーサーが他の人々を振り返れば、「いつでもどうぞ!」と言わんばかりの真剣な表情をして飛び出すのを今か今かと待っている。そのやる気にカラドックが苦笑と云うか軽快な笑いを小さくこぼす。それがまるで合図だと言わんばかりにアーサー達は、月光の下に跳躍した。

今日は久しぶりに二つ連続で行きます!

仲が良いと作者も嬉しいのです。

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