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色無き王~十二の色~  作者: Riviy
第二部
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第四十六色 勇敢な少女と誘拐された少年


凛々しくも声高らかに響いたその声は洞窟内に反響し、悲しみの不協和音を掻き消して行く。その声に全員がそちらを見れば、そこに立っていたのは仁王立ちをした少女で。薄暗いせいか、その顔ははっきりと分からないが、多分同い年か少し歳上と云うことはわかった。少女の言葉に泣いていた子供も泣きそうになった子供もキョトン……と目を丸くしている。


「大丈夫!自警団の人達が助けに来るから!泣かないの!」


両腕を広げ、まるで抱き締めるように少女は優しく彼らを元気付ける。そうは言っても不安なものは不安だ。けれども、そう言われるだけで少しだけでも恐怖が和らいだのも事実で。涙を浮かべていた子供達は少女の言葉に元気付けられたようで涙を拭い、小さく頷く。それに少女は満足げに頷くと洞窟内を見渡した。子供達の人数を数えているようで小さく「五ー六ー」と聞こえる。全員いるかどうかの安否確認だろう。もっとも誘拐された時と目覚めた時とで何人差になっているかは知らないが。すると少女は周囲を見渡し、暗闇に目を凝らした。そしてその暗闇に臆することなく近づく。少女の一挙一動に全員が釘付けとなっていた。不安も恐怖も煽られる此処でふいに立ち上がり、声を上げた少女は子供達にとって一縷の希望のように見えた。


「あー()()()だー行き止まりになってる」


暗闇の方向から聞こえた少女の言葉に子供達は顔を見合わせる。行き止まり?此処は牢屋とかじゃないの?そう言わんばかりの雰囲気が流れていた。すると気になったのだろう一人の子供が恐る恐ると云った感じに立ち上がると少女がいるであろう暗闇に向かって歩いて行った。暗闇の先に少女を見つけたらしく、「なにしてんだ?」と声が響く。


「此処、行き止まりになってるでしょ?反対側はどうなってると思う?」

「……牢屋ならてつごうし?ってのがあるんじゃないか?」

「じゃあ確かめてみよー」


その時、唐突に暗闇に目が慣れてきてようやっと二人の姿を確認出来た。どうやら本当にこの先は行き止まりらしく、冷たい壁が道を塞いでいる。少女の「行ってみよう!」に感化されたのか何人かが慣れた目で反対側を凝視している。鉄格子のような影はなく、空洞が続いている。少女が反対側へ果敢に赴き、鉄格子がないことを確認すると「うん!」と頷いたまま考え込んでしまった。どうしたのだろうと心配したのも束の間、ピンッ!と背筋を伸ばして暗闇の先を見つめた。その先を見つめる瞳が力強くて、そして美しくて。子供ながらに彼女は強い意志を持っていると実感するしかなかった。タッタッタッタ、と軽やかな足取りと共に少女の後ろ髪がまるで尻尾のように右に左に大きく揺れ動く。それさえも彼女の勇敢さと果敢さを表していて、なんだが勇気を貰った。少女は暗闇の先を再度確認すると不安そうに座り込む多くの子供達を振り返り、言う。


「逃げよっか!」


その言葉に子供達の間を駆け巡ったのは新たな恐怖。魔物がいるかもしれないと言う恐怖。魔物を目の当たりにする恐怖。傷つくかもしれない恐怖。そして死ぬかもしれない恐怖。そんな様々な恐怖が子供達を覆い隠す。しかし、少女はそんなこと予測済みだと云うように胸を張り、軽く鼻を鳴らす。


「魔物?いるに決まってるじゃん。こんな世の中なんだから。知ってるでしょ?」


もっともな事に誰もが混乱の声をし舞い込む。襲撃も魔物も日常茶飯事。むしろ気絶している間に命を奪われなかっただけ幸運なのだ。


「それに魔物はわら……()()()()()でなにしようとしてるか分かってる?生け贄だよ。い・け・に・え!」


生け贄。その単語にサァと子供達の顔から血の気が引いていく者と首を傾げる者で二分される。魔物が自分達を誘拐した理由に幼いながらに気づく者、わからない者。実際にきちんとその細かい内容まで理解したのは幸運にも少ないだろう。少女の視線の先にいる少年は運悪くか良くか、生け贄のちゃんとした意味を知っているらしく顔を青くしていた。少女は腰に手を当て言う。


「魔物が怖いのも当たり前だし、大変なのも当たり前。でも、こんなところで死にたくはないでしょ?」

「……そうは言っても魔法が使えない子だって、戦えない子だっているわ。自警団が来るまで待つ方が安全よ」


少女に別の子供が反論する。険しい表情をしているのはこの状況を理解しているからだろう。それに少女は毅然とした態度で言う。


「此処は行き止まり。此処で待ってて自警団が寸分の狂いもなく来てくれるって断言出来る?」

「……それは」

「自警団だと思ったら魔物だったってこともあり得ないくはないでしょ?自警団だった場合なら良いけど、魔物だったら?戦って勝てる?逃げ道ないよ?」


口を挟む暇さえ与えぬほどの少女の問いにその子供は口を閉ざしてしまった。かと思えば、別の子供が反論するように叫ぶ。


「お前は勝てんのか?!」

「勝てる」


ズバッと一刀両断するように即答した少女はその手に仄かな灯りを灯しながら告げる。


「絶対に勝てる。()()()()()は、絶対に勝てる。だからこそ()()()はみんなを守るために此処にいる」


その絶対的自信と、子供達を示しているのではない()()()()()にハッと我に返った者は何人いただろうか?少女の言葉に違和感を感じた者は何人いただろうか?多分、片手で数えるしかいないのだろう。


「それに()()()()()には頼もしい()()()()がいる」


その言葉には強い意志が宿っていて。嗚呼、自分達を助けに来てくれたのだと安心感と勇気を与えてくれて。暗闇に目が慣れたはずなのに()()()()少女の顔にも、その背後にもいないはずの彼女の云う兄様と姉様(心強い人達)がいるように見えて。それすなわち、強者の賜物と言っても良かった。気迫と言っても良かった。


()()()がみんなを守る。行動しないであとから後悔したくなくない?後悔するのは実行してからでも良い。だから、逃げるよ!」


少女の問いかけにも似た宣言に子供達は顔を見合わせていたが此処で踞っていても埒が開かないと理解したらしく、一人、また一人と立ち上がりその表情を引き締める。後ろが行き止まりの状態よりも何処かにあるかもしれない出口を探す。魔物に見つかる前に出口が見つかれば、良い。魔物がもし来ても進んだ時に道を見つけられれば逃げれるし、なくても少女を信じれば時間が稼げる。いつくるかわからないこの瞬間を逃すなと言わんばかりだった。次々と逃げるために動き出す彼らの中で一人だけ身動きさえしない者がいた。先程少女が見つめていた少年で、体育座りをし、膝に顔を半分埋めている。ほぼ全員が立ち上がった中、少年の心中は恐怖と、自分でもよく分からない自信の無さに苛まれていた。


「今からみんなに全属性の防御魔法かけるから、動かないでよ!〈火の守りファイアー・ディフェンス〉、〈水の守りウォーター・ディフェンス〉、〈風の守りウィンド・ディフェンス〉、〈地の守り(アース・ディフェンス)〉、〈光の守り(ライト・ディフェンス)〉、〈闇の守り(ダーク・ディフェンス)〉……〈想の守り(ソート・ディフェンス)〉」


勢いよく意気込んで全属性の防御魔法を全員にかけていく少女。全員分の防御魔法をかけたのによく魔力が持つものだと少年は少女に尊敬の念を抱いていた。少年は体を覆う七つの色を伴った粒子のような光を見つめながら、片手を地面につけた。まだ心の中で迷っている。けれども、いつまでも此処にはいられない。勇気を振り絞って立ち上がれば、少女と目が合った。途端に駆け上がったのは少女の威圧かそれとも気迫に押された自分か。少年には分からなかった。


「先頭で危険がないか確かめるから、おぬ……んん~!みんなは抜け道とかないか、後ろとか警戒してて!」


「行くぞー!」と子供達を鼓舞するように拳を突き上げる少女。片手には灯り代わりの火、もう片方の手には瞬時に攻撃できるようにと仄かに何かの魔法を発動させながら、少女は歩き出す。暗闇に飲み込まれて行く少女を子供達がゆっくりとした足取りで警戒を滲ませた表情で続く。少年もその行進に続こうとして、一瞬その足を止めた。何故、足を止めたのか自分でも分かっていて分からなかった。


「……どうして」


そう声を上げたのは、恐怖を掻き消そうとしたからではないかもしれない。暗闇に吸い込まれて行く子供達を見ながら少年はゆっくりと足を動かす。あの時見た少女の力強い瞳を思い出し、足に力を込める。そうして少年も暗闇の中へと入って行った。

少年の名はフローレンス・リリィ。ライムライト色の少し長い髪を左側にまとめ、まるでサイドテールのようなポニーテールのような。瞳はアクアマリン色。白系のケープレットを着、襟元がピューリタンカラーになっており襟には薄めのピンク色のリボンがついている。首にはチョーカーをし、水色の雫がつき、左手首には青と水色を基調としたブレスレットをしている。黄色のハイネックになった長袖のエンジェルスリーブ。腰にはリボンと鈴のついた何処か可愛らしいベルト風の物をし、薄茶の短い膝上までのズボン。灰色のニーハイと薄茶のくるぶし辺りまである靴を履いている。

少し女の子に見えるのは幼い顔立ちのせいだけではないのだろう。


彼は暗闇を怯えつつも進む。その先にあるものなんてなにも知らずに。ただ、その先にある光を求めて突き進む。


「行くよー」


少女の無邪気な声を道しるべに。

……大変だぁ(物語も現実も)

そして今日のところは!多分気づく人は気づいていると思います!少女!次回は月曜日です!

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