第三十九色 魔物討伐魔法システム
「〈さぁさ、この門に喝采を!今開かれるべき門をとくとご覧あれ!地獄の門は誰を見る?〉」
サグラモールが両手を地面に押し付けるように振り下ろせば、そこを中心に禍々しい色と雰囲気を醸し出した不気味な門が出現する。その門は自らの上に立つ魔物のみを容赦なく飲み込み、その先にある闇しか見えない奈落の底へと突き落としていく。金切り音のような、地響きのような悲鳴を上げながら門に吸い込まれていく魔物。しかし、見事な瞬発力を持って回避するものもおり、全部を飲み込んだとは到底言えなかった。それにサグラモールも気づいていた。結構な数を門に飲み込ませるとサグラモールは立ち上がった。立ち上がると門は飲み込んだ魔物ごと姿を消し、二度と現れることはなかった。と、立ち上がったサグラモールを狙って魔物の刃物が振り下ろされる。足に〈速度上昇〉を付与しているため、すぐに後退するとグリフレットと入れ違いになり、薙刀でその攻撃を防ぐ。動物の姿をした敵にグリフレットは片足を振り上げて蹴りをお見舞いすると薙刀で相手の刃物を弾き返し、再び蹴りで後方に吹っ飛ばす。がそれでも左右から挟むようにして魔物が二体、彼に向かって襲いかかる。薙刀を横にし、二体同時に防ぐと薙刀に光属性の魔法を付与させ、一気に弾き飛ばす。そうして一体の方に薙刀を勢いよく突き刺せば、喉元に命中。そこから上へ勢いよく振り上げ、頭を吹き飛ばし、背後から襲いかかってきたもう一体を敵の亡骸を足場に駆け上がり一回転して魔物の背後に回り込むと先程の魔法と共に釘指しにする。とそんな彼を横から魔物が狙う。薙刀に敵が突き刺さっている時点で動きは鈍る。どうする?そういつもなら慌てるのに、そんな気さえ起きなかったのは、視界の住みにルシィが見えたからだろう。しゃがみこみつつ、魔物から薙刀を抜き放つグリフレットの頭上をルシィの凄まじい蹴りと魔物の攻撃が通りすぎ、そこで勢いよく交差する。頭上で響く甲高い音に顔をしかめながらサグラモールの誘導でその下から抜け出す。そんなグリフレットを横目に確認し、ルシィは足を勢いよく振り切った。ガッと靴の踵に当たって跳ね返る魔物の刃物、と云うよりは鋭い爪。後方に仰け反るように飛んだ爪に向かって一回転し、振り返り様に魔法を放つ。
「〈光は放たれた〉」
目眩ましのようにルシィの爪先から放たれたその閃光はまるで蜘蛛の糸のように魔物を包み込み、絡めとり、そして、無惨にも引き裂く。左右に上下に、魔物の悲鳴も絡め取り自らの力に変えてその心臓も臓器も吐き出すかのように切り裂いていく。さながらそれは無数の刃。無慈悲な光だ。この魔法は光属性なのに見たら闇属性にしか思えない。慟哭と共に地面に吸い込まれ、引き裂かれていく魔物を横にルシィは苦笑を漏らした。そしてその死角から迫っていた魔物に拳を振り返り様に突き出した。何故分かったと驚く魔物にクスリと微笑めば、その意味に辿り着いた魔物があわてふためく。しかし、
「殺気を消す仕方をやり直した方が良いのでは?」
「全く同感じゃな!〈闇よ壊せ〉」
時既に遅し。恨むなら、自らの実力を恨め。魔物の背後に回り込んだサグラモールが魔物の淀んだ瞳を覆うように手を翳せば、魔物の目はもうなにも写さない。脳から切り裂かれ、粉々になっていく恐怖を味わうが良い。突然の暗闇に発狂し無我夢中で攻撃する魔物の攻撃が彼らに当たることなんてない。視界を奪われた敵の胴体をグリフレットが容赦なく切断すれば、その慟哭と共に魔物は黒い手によって黒い水溜まりに沈められていく。消滅した魔物を一瞥し、ルシィはアーサーとカラドックを振り返った。先程、カラドックの仲間を助ける際に二人と離れてしまったが、大丈夫のようだ。問題は、この魔物の多さ。倒しても倒しても切りがない。いや、侵入口は塞いだので侵入してくることはないだろうが、それまで侵入してきた魔物が多すぎた。それに単体攻撃の魔物が多いことも災いした。さっさと倒さなければ一人につき数体なんていう、危ない橋を渡るということに成りかねない。ルシィは左からやってきた攻撃を避けながらそう考えると、クルリと回転した。その時、右から来る異様な殺気に気がついた。うまい具合に殺気を隠して近づいて来た魔物。少し首を傾げればそこにいる鋭い刃。嗚呼、殺される。そう思ってしまうほどの、濁って歪んだ殺意。けれども、私だって此処で死ぬわけには行かない!
「〈光の剣で〉」
手首を弄ぶように捻れば、そこに美しくも金色に輝く剣が現れる。しかし、長くは持たないことをルシィは知っている。だからこそ、刃と自分の間に魔法の剣を滑り込ませると一気に弾く。が敵もそれを分かっているのか、すぐさま刃を持ち直し、ルシィに向かって振り下ろす。凄まじい威力にガンッと耳元で音がなる。と、そこに魔物を攻撃する者あり。魔物の脇腹をグリフレットが薙刀で凪ぎ払ったのだ。しかし、敵の体勢は崩せてもそれ以上は崩せなかった。相手は人型でありながら足が数本あると言う異次元にもほどがあるような体型だった。チッと舌打ちをかましたグリフレットが一旦後退し、その隙にルシィが大きく魔法の剣で弾く。グリフレットの使う薙刀よりも持続が短い上に急がなくては。弾かれた敵に魔法の剣を振り下ろす。ガッと音がして上段からの一撃を簡単に防がれてしまう。そこに無数の足がルシィの体勢を崩そうと接近し、蹴りを放つ。一旦撤退し、体勢を立て直そうとすれば魔物の足がまるで蔦のようにルシィの足に絡み付く。くっと歪んだ表情はこの戦場で動けなくなる恐怖か否や。足元に魔法の剣を回し、踊るようにして切れば、敵がルシィの懐に接近する。回し蹴りを放ち、撤退させようとする。が魔物は体が傷ついても良いと言わんばかりにルシィに接近し、刃を振り下ろす。魔法の剣でその一撃を防ごうとするルシィだったが、効果が切れたらしく防いだ途端、魔法の剣は消え失せ、ルシィの左肩から右腹にかけて一線加わる。効果の時間も見ていたのかと、しくじったと傷を押さえれば、魔物はそこにはいなかった。何処に行った?ハッと気づいた時には魔物はルシィの背後だった。今から回り込んでも相手の刃が先にルシィの首を取る。なら、魔法は?嗚呼、それならば
「ルシィ!頭を下げろ!」
その緊迫した声にルシィは瞬時にしゃがみこむと魔物の足に向かって地属性の魔法を放ち、地面に食い込ませれば、グラッと魔物の体勢が崩れつつも足元にいるルシィを狙って刃が振られる。その一撃を首を傾げる要領でかわし、低い体勢から斜め上に足を蹴り上げる。先程のルシィのように首を傾げるようにかわした魔物。ニヤリと笑った魔物にルシィも笑い返す。だってさっきの声を忘れているでしょう?
「ルシィ、そのまま、動かない。〈常闇の恋人たち〉」
眠れない子供を寝かしつけるかのような優しい声と共にガッ!と突然、魔物の目に突き刺さったのは真っ黒な常闇のように黒い双剣。その双剣はまるで恋人たちのように寄り添い、魔物に片割れを奪われまいと攻撃する。その柄には糸が伸び、その糸はルシィの遥か後ろ、グリフレットの指先に繋がれていた。グリフレットがグイッと指先を内側に丸め込めば、それと同時に双剣が魔物の顔から抜け落ち、手首をしならせれば双剣は魔物の体を切り裂く。防がれた足を振り切り、足首を魔物の首に引っ掻けてルシィが起き上がれば、別の魔物がサグラモールに攻撃しようとして前のめりになり、仲間の魔物を攻撃してしまう。魔物の肩を足場に上空へ飛べば、空中でサグラモールとすれ違う。サグラモールはルシィの怪我に不安そうに表情を歪ませたが、次の瞬間ニィと自信満々に笑う。それにルシィも腹と足に傷の目立つサグラモールに笑い返すと二人はハイタッチをかわし、それぞれ着地する。着地した途端、サグラモールに魔物の魔法が襲いかかる。だがその威力と階級の低さの魔法にサグラモールは鼻で嗤うと、魔物の魔法を軽くいなし、足に付与した風魔法で一気に懐に攻め込む。足にかかった負担に鈍い痛みが脳に伝達される。けれどもサグラモールは手元に魔法を込める。
「属性が分からぬなら光と闇で攻めれば良い。そうじゃろう?〈さあ眠り落ちなさい愛しき玩具?〉」
片手に込めた紫色の魔法は螺旋を描き、美しくも恐ろしい花を描き、魔物に吸い込まれていく。魔物が慌ててサグラモールから身を引こうとするが彼女はエスコートするように魔物の首に腕を回し、片手を取る。獣と人が合わさったような姿の魔物を逃がしはしないと言わんばかりの、獲物を狩るサグラモールの目に魔物の動きが止まる。その隙にもサグラモールの魔法は魔物の体を内側から蝕んで行く。ガクンッと魔物が膝から倒れ込み、サグラモールを見上げる。先程の魔法はある意味、毒の効果を与える厄介なものだ。ニヤリと笑ったサグラモールに魔物が斜め下から攻撃してくる。がそれをサグラモールは間一髪でかわすと片手をかざして引導を手渡す。
「〈闇の剣よ〉」
手のひらに花を咲かせるように黒い剣がサグラモールの手に現れた。かと思いきや勢いよく魔物に向かって突き刺さった。胸元から咲いた黒い剣の花。そうして首筋に優しく添えられた剣を容赦なく横に動くように指を引けば、魔物特有の血が噴水の如く溢れ出す。剣の隙間からも血は溢れだし、魔物は血の魔物と化す。すでに生き絶えた魔物をサグラモールは見下ろし、黒い剣が展開された片手を後方に迫った敵に向かって振り回しつつ、黒い靄と変化させ、魔物に目眩ましとしてお見舞いする。そうして一旦後退しつつ、広範囲に及ぶ魔法を放った。
バッと薙刀を突き刺し、振り回せば近くにいた魔物が木っ端微塵となって吹っ飛ぶ。薙刀にさらに魔法を付与していたがこんなにも吹き飛ぶのかとグリフレットは意外に思いつつ、クスリと笑った。その笑みは魔物にとっては恐ろしいほどこの上ないのだろうが。グリフレットは薙刀を再び構え、上段から飛んで来る敵に向かって振り回す。体半分を切り裂かれても攻撃してくる魔物にグリフレットは軽く身を引き、片眼鏡を弾く。頬にかすってしまった痛みにニヤリと笑いながら先程片手の指先に繋がれていた双剣を引く。途端に襲いかかってきた魔物を双剣が切り裂き、薙刀も続け様に振り回される。一斉に来る攻撃になにも出来ずに散っていく魔物の後方から別の魔物が姿を現す。仲間を盾にしたらしく、仲間の胴体を貫きながらグリフレットに攻撃してくる。目と鼻の先に突きつけられた刃物の切っ先にグリフレットは指先を軽く引き、双剣を引き寄せると魔物ごと刃物を弾いた。盾がなくなった魔物は仲間の魔物を足場に大きく跳躍する。そこにグリフレットが蹴りを放てば、着地の寸前に体勢が崩れる。それにグリフレットは小さく笑った。
「その隙、もらうね」
ズイッと魔物に接近し、指先の糸を手繰り寄せ動かせばその糸が魔物の首に巻き付き双剣を首に突き刺す。魔物は痛みから逃れるように攻撃する。がそれを紙一重で踊るようにかわすと足を振り上げ、双剣をさらに食い込ませる。そうして薙刀を同時に振り回し横に吹っ飛ばしつつ、双剣を容赦なく抜き放てばその勢いに魔物は壁にぶつかり意気消沈した。
戦闘はその人の個性というか、性格が見えますね!次回は金曜日です!




