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色無き王~十二の色~  作者: Riviy
第二部
37/130

第三十四色 午後の賑わい、片方のみ



ルシィの答えに彼らは一斉に周囲を見渡したが見えるのは案の定、人の群れだけで何処にいるか分かったもんじゃない。と、その時、突然、人の群れが真っ二つに割れた。それと同時になんだなんだと野次馬精神で首を伸ばす他国民と分かりきっていると言わんばかりのリーナル公国民とで反応がこれまた真っ二つに分断される。もちろん、アーサー達は「何がどうした」の方である。突然割れた人の群れに両脇に人が押し寄せて来る。壁際ではあったが、人に押され、アーサーは壁に慌てて手をついて衝撃を免れる。グリフレットも同じらしく、背後から人に押されてしまったらしく両手で目と鼻の先にある壁から間一髪で逃れていた。


「なんでしょう?」

「なにかあったと見て間違いないだろうけど、ぉおっと」


疑問を口にするよりも早く再び人の群れが押し寄せてくる。どうやら劇場がある方向から大人数がやって来ているらしく、道を無意識のうちに広めようとしたようだ。そのお陰で押しくらまんじゅう状態だが。チラリと大きく開かれた道を見ると大人数がガシャガシャと装備品を鳴らしながら入り口の門方面へ向かって進んでいた。しかし、この町の警備隊とか自警団ではないらしい。服装に一貫性がない。報酬を貰い魔物を討伐することを職とする傭兵だろうか?リーナル公国での主な戦闘力は自警団と傭兵と聞くし。町中に魔物が入ってこないとも限らないし、混乱がないとも限らない。それを押さえるために自警団が残っていると考えれば、此処にいるのは傭兵という事になる。いうことは。


「魔物が出たのでしょうか?」

「この様子じゃとそうじゃろうなぁ。見よ、リーナル公国民の顔がひきつりつつも安心しておる」


サグラモールの示す方向にはリーナル公国民であろう貴族と平民がいた。その顔は恐怖にひきつっていたが、絶対に壊されない世界屈指の防御力を持つが故か、何処か安心した表情も持っていてぐちゃぐちゃに歪んでいた。なんだろう、安心なんだけど怖いって言う不思議な表情は。おそらく傭兵であろう彼らの行進にも似た列とリーナル公国民の恐ろしいほどの落ち着きように他国民も魔物が出たのだと察する。連絡をしないので確かなことは言えないが、これが日常なのだろう。緊迫感と緊張感が一瞬にしてこの町を包むが、それは彼らが足早に通り過ぎて行ってしまうとすぐさ先程までの賑わいへと戻っていく。その温度差に彼らは面食らい、収縮し始めた人の群れに反応が遅れてしまった。サグラモールが人の群れに飲み込まれるように押し出されてしまったのだ。後方によろけて転びそうになる彼女にグリフレットが手を伸ばそうとするが、壁に両手をつけていたために反応が遅れてしまう。アーサーもルシィも気付いた時にはサグラモールはあわや奈落に突き落とされたかのように転びそうになっていた。だが、背中に当たる痛みを想像したサグラモールは一向に来ない鈍い痛みにはて、と首を傾げた。


「っと、大丈夫か嬢ちゃん」

「えっ」


その低い声にサグラモールは驚いて背後を振り返るとそこには彼女を抱き留めたであろう男性がいた。上手い具合に人の群れとサグラモールの間に体を捩じ込み、受け止めておりこのまま転んでしまっていたらドミノのようになって怪我人が出ていたかもしれない。それにサグラモールはゾッとすると助けてくれた男性を振り返った。髪には白い髪が少し混じって入っており、服から見え隠れする筋肉は屈強で、服装も若者のよう。見た目はグリフレットよりも少し上だろうか?


「嗚呼、ありがとう。助かった」

「良いってこと。んじゃ、気を付けな」


サグラモールの礼に男性はニカッと優しく笑って返すと人の群れに紛れて消えしまった。向かった方向は町の門、傭兵が向かった先だが……そこまで考えてサグラモールは「ん?」と首を傾げた。しかし、何が自分の中で引っ掛かったのか答えが出てこない。その時、ようやっとサグラモールに追い付いた、と言うよりも届いたグリフレットが不安そうな心配そうな表情で彼女を覗き込んだ。


「サグラモール!大丈夫?怪我してない!?」

「大丈夫じゃよぉ師匠。先程の男性が助けてくれ「あれ?」」


大袈裟すぎるほどに心配するグリフレットを落ち着かせようとサグラモールが言う。全く、これじゃあどっちが年上か分かったもんじゃない。と落ち着かせようとしたサグラモールを遮り、二人に辿り着いたルシィが彼女に向けて鼻を動かす。なにか変な匂いでもするのだろうかとサグラモールは不安になり、自らの服を嗅ぎ、グリフレットも不安になったのか真似をする。が、刃のように細められたその瞳に違うと察する。


「サグラモールさんから先程嗅いだ速さの座の匂いがします。結構近くですね」

「速さの座?……あああああ!!!」

「なに!?サグラモールどうしたの!?」

「やっぱりどっか怪我したのかな!?」


ルシィのまさかの言葉に思い出した!と言うようにサグラモールが叫べば、「声抑えて抑えて」とアーサーが驚きつつも手で制止する。グリフレットは怪我だと思ったようだが、多分違う。周囲は活気を取り戻してはいたが、サグラモールの大声に何人かはなんだとこちらを振り向いていた。そんな視線なぞ知ったことかとサグラモールが興奮したように言う。


「さっき、妾を受け止めてくれた男性がおったんじゃが、その人の左肩になにやら紋様があったんじゃ!詳しくは見ておらんが!」

「?!どっち行った?!」

「入り口の方じゃ!武器を持っておったから多分傭兵じゃ!」


ようやっとわかった引っ掛かりにサグラモールが叫べば、一斉に入り口の門を振り返り今度はルシィを振り返る。半分で分からなくても此処まで条件が揃えばこっちのもんだ。


「ルシィ!」

「はい、多分サグラモールさんの言う通りでしょうね。微かな匂い……この場合は存在がします」


はい、決定。それ以上の言葉なんて必要なかった。彼らは一斉に門がある方向へと駆けた。


……*……


足元から響くような雄叫びに思わず耳を塞ぎたくなったのは、悲鳴にも似た魔物の声と刃音が反響しているだけではないのだろう。町全体を囲うように作られた壁の屋上。そこには多くの大砲が均等の感覚で並び、自警団の一員であろう数人が傭兵と魔物との戦いを見物していた。中には自警団ではない者もおり、緊張した面持ちで外を見下ろしていた。リーナル公国は壁と共に上空にも魔法を張っている。門にある魔法と同じで飛行型の魔物を侵入させないようになっている。他の国でもこの方法は取られているが、飛行型の魔物が少ないため、使用者の負担を考えて張らないと言う手段を取っている町や都も多い。そんな凄まじい防御力を誇る壁の上で彼らはサグラモールを助けてくれた『覇者』であろう男性を捜していた。緑が広がる戦場で魔物と傭兵が武器を交差させて戦い合う。しかし、彼らが捜す人物は屋上から見ても見つからない。高いところから見ているので小さくて見えない、と言うわけではない。


「……この中にいるのかな?」

「一瞬だけだったから特徴まではのぅ」


「んー?」と片眼鏡を割らんばかりの勢いで覗き込みながらグリフレットが言えば、同じように眼下を睨み付けるようにしてサグラモールが言う。目を皿のようにして傭兵一人一人を見ても左肩に紋様が刻まれていそうな人はいない。もしかして傭兵ではない職だったのだろうか。そう誰もが思い、落胆で肩を落とす。とその時、アーサーは自らの目を疑った。近くに広がる森の木々に一瞬だけ見えた鈍い光。遠くからでも太陽の光で反射したのは魔法が付与されている可能性もあって。嗚呼、でもあれは刃物で間違いない。


「誰か、双眼鏡貸して」

「はい」


突然、手を出して言ったアーサーの手に瞬時にルシィが魔法で双眼鏡を簡単に作り上げ、渡す。まるで当たり前だと言わんばかりの動きに、流れるような動きにサグラモールとグリフレットが目を丸くしているがそんなことお構い無しにアーサーはルシィからもらった双眼鏡を森に向けて覗き込む。魔法で作られたものは人工的に作られたものよりもすぐに手元から失くなってしまう。早く見つけなくては。森に向けたレンズの中で、誰かが一瞬見えた。速すぎて残像しか見えなかったらしい。アーサーはその残像が向かった先に双眼鏡を動かすとそこに見えたのは左肩に刻まれた紋様。間違いない。あれは一応で覚えた速さの座を示す紋様。


「いた!」

「え?!何処?!」

「森の中!サグラモール、あの人!?」


慌てて自分の分の双眼鏡や魔法で森の中を覗き込もうとする友人達の隣でアーサーはサグラモールに双眼鏡を渡すと自分が見つけた人物を見せる。その人物にサグラモールは嬉しそうに「あっ!」と声を上げ、「ん……?」と怪訝そうな声に変わった。


「サグラモール?違った?」

「いや……あの男性で間違いない。うん、間違いないのじゃが……」


言い淀み、歯切れが悪いサグラモールにアーサーは首を傾げる。「なるほどのぅ」とも呟くサグラモールに同意を示すように魔法等で確認したルシィが言う。


「何故、一人で森の中にいるのでしょう?」

「狩ってるのって……魔物?」


なにも手元にないので何も分からないアーサーが彼らの説明染みた言葉に少し不満げに表情を歪めれば、サグラモールが納得の声を上げつつ、魔法で出来た双眼鏡を手元で消滅させた。


「半分の紋様……左腕がない?」


次回は金曜日です!今から言い訳しときます。調べたらそう書いてあったんだ!←その設定を使って二、三回くらい書き間違えた作者らしからぬ作者はこいつです!

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