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色無き王~十二の色~  作者: Riviy
第二部
36/130

第三十三色 午後の賑わい、何を示す


リーナル公国のこの町でアーサー達は宿を取ることに成功した。朝食と夕食付きの二部屋だ。町での情報収集に必要なさそうな荷物を部屋に置いて、宿屋のエントランスで待ち合わせ中である。エントランスでは宿屋にチェックインする者やアウトする者、迎えや出掛ける人や早足で動き回る店員などでごった返しており、まるで此処さえも町の中のようだ。此処はそこまで綺麗な宿屋ではないが、整備も設備も行き届いている。町に入った時に見た身なりの良い人々を思い出してアーサーは小さくため息をついた。此処はさほど貧富の差はないとは言え、多くの旅人や他国民が行き交うためにリーナル公国の貴族であろう人々はよく目立つ。町の中央に位置する劇場を境に貴族と平民の住居区が分かれている。アーサー達がいるのは案の定というか当たり前と云うか平民住居区である。貴族専用の宿屋になんて高くて泊まれるわけがない。だが、町はとても賑わい、和気あいあいとしていた。勝手に仲が悪いのだろうと考えていたアーサーは自分の思い込みに苦笑した。


「なに考えてるのかな?」


エントランスの椅子に座るアーサーに付近の壁に寄りかかっていたグリフレットが問いかける。大方なにを考えていたか分かっているくせに、とグリフレットを見上げれば彼は小さく笑った。


「大方、分かるけどね」

「じゃあ聞かないでよ」

「一応だよ一応。情報を集めるとしたら両方に行った方が良いよね」


クスクスと笑ってグリフレットが言う。彼の言う通り、差が比較的少ないとは言え、情報の差がないと云うわけではないだろう。貴族なら情報屋がいる可能性もあるし、平民なら彼らが知らない情報を持っている可能性もある。どちらにしろ両方に聞く必要がある。


「行くとしたら劇場かな」

「そうなるね。両方の人が来る憩いの場所でもあるし」

「じゃあそこに行くことにしようか。酒場とかあれば、情報聞き出せるし」


決定。グリフレットの言葉にアーサーはうんと力強く頷いた。目的地が決まったならば、速く動いた方が良い。この町に入ったのは午後。時間はあまりないと考えると早めの行動が求められる。背もたれに身を委ねながらまだ来ないルシィとサグラモールを待つ。二人とほぼ同時に部屋に入ったはずだが、なにをしているのだろうか?アーサーが二人を呼びに行こうと立ち上がったその時、まるでそのタイミングを狙ったかのように階段から先程の旅の一座にもみくちゃにされながら二人がやって来た。サグラモールがもみくちゃにされた際に乱れてしまった髪を手櫛で直しながらルシィと共にやって来る。アーサーとグリフレットを見つけたルシィが周囲の様々な声から逃れるように叫ぶ。


「すみません!遅くなりました!」

「出る時に旅の一座の入室と鉢合わせてのぅ。荷物が多くて出るに出れんかったんじゃ~」

「ありゃ、それはお気の毒」


ゾロゾロと宿屋に行ったり来たりする一座の集団を眺めながらサグラモールが何処か恨めしそうに云う。もみくちゃにされた件を偶然だが許していないらしい。それにドンマイと笑いながら本日の行き先を二人に告げる。二人もどうやら同じことを考えていたらしく、素直に頷いた。


「それでは日が暮れないうちに参りましょうか。劇場は一日中入れ替わりで公演しているということらしいですし」

「それ、何処で聞いたのルシィ?」

「先程の警備員さんが教えてくれました。どうやら私達を家族か恋人の旅行だと勘違いしたらしく」


なるほど。苦笑するルシィにサグラモールがグッと親指を立てる。それにグリフレットがクスクス笑う。そうこうして彼らは宿屋のオーナーに軽く頭を下げながら宿を出た。出た彼らを迎えたのは大小様々な賑わいの声。遠くからは黄色い歓声が響き、四方八方からは美味しそうな匂いが立ち込める。様々な人々が楽しげに行き交い、笑顔を浮かべるその様子はこの世界が侵略されているなんて嘘のように感じてしまうほどだ。そんな人々の行き先は格好は違えど、やはり劇場らしく、人の波が南の方向に向かって進んでいる。


「ヤオヨロズ共和国のように人が多いのぅ!なんだか戻ってきた気分じゃ!」

「確かリーナル公国は他の国よりも人口が多いからねぇ。だからこそ差があるとも云うんだけど」


興奮したように叫ぶサグラモールにグリフレットが付け足すように言う。全員で離れないようにくっつくようにしながら人の波に進んでいく。まるで濁流の如く進む人の群れに一瞬恐怖に怯んでしまう。だが、行かなければ情報は手に入らないし。


「みんな行くよ」


と後ろにいるであろう三人に声をかけ、アーサーは人の群れに足を踏み入れた。が次の瞬間、「待ってください!」とルシィに止められてしまった。勢い余って前方に躓きそうになったアーサーはなんだとルシィを振り返り、多少の怒りを押し込んだ。ルシィが鼻をヒクヒクと小さく動かしていたのだ。細く細められた銀色の瞳にアーサーは声を荒げそうになる。ルシィがこの動作をしているという事は『覇者』が近くにいると言うことだ。サグラモールとグリフレットもルシィに気付き、周囲を見渡しているが、見えるのは町行く人の頭、つむじしか見えやしない。とりあえず、彼らは行こうとしていたのを中断し、壁際に避難するとルシィが言う。


「行こうとしている時にすみません。『覇者』の匂いがしたもので」

「情報収集する前から来るって、誰か引き寄せるんじゃないの?」

「ハハ、否定は出来ないね!」


アーサーがこうも順調過ぎる発見にそう茶化せば、グリフレットが笑う。もう本当に誰か予知とかでもしてるんじゃないの?まぁ予知は簡単なものしかないので無理だが。アーサーの冗談にルシィもカラカラと口を押さえて笑うと嗅ぎ取った『覇者』について告げる。


「速さの座『疾風』の『覇者』がいます。ですが……」

「?どうかしたのかなルシィ」

「いえ、グリフレットさんのように気配が読めないのです。匂いはあるのに」


困惑したようなルシィの表情に三人は顔を見合わせ、首を傾げた。グリフレットのように気配が読めない?匂いにルシィは気づいたのに?もしかしてグリフレットのように魔法を施したフードや魔法で気配を薄くしているのだろうか?この人の波で誰かにぶつかったりしてそれが一時的に剥がれ、ルシィが気づいたのだろうか?けれど、そうなると気配だけが読めないのは可笑しい事になる。グリフレットと似たような状況ならば、彼のように効果が外れた際、両方が漏れるはずだ。


「師匠と同じ、ではなさそうじゃの。師匠は微妙な自覚じゃったから分かったのであってそんじゃそこらの自覚なし『覇者』が紛らわすなんて芸当出来やせん」

「はい……なんというか()()()()ないのです」

「……なにそれどういうこと?」


ルシィの言葉にグリフレットが聞き返せば、ルシィも困ったように頬杖をつくようにして首を傾げる。


「今まで私も嗅いだ事がないのでどう言ったら良いか……なんというか……『覇者』だと分かるのに半分だけしか感じ取れないのです」

「……それってもしかしてアグラヴェインと同じ?」


先代・地の座を司った『覇者』が何故出てくる?そう疑問に満ちたアーサーとサグラモールの視線に気づかず、ルシィは「嗚呼!」と納得したような声をあげ、グリフレットと二人して頷き合っている。なんだか除け者にされた気分だ。


「二人して納得しおって!ちゃんと説明せい!妾達が分からんではないか!アグラヴェイン(先代)がどうしたのじゃ!?」

「ごめんごめん。ほら、先代のアグラヴェインって『覇者』の証であるアクセサリーを半分に分けたって話があるでしょ?速さの座も同じなんじゃないかなって」


怒った様子で腕を振り上げるサグラモールをさりげなく人の波から引き寄せながらグリフレットが説明する。歴史書によれば地の座『地震』を司ったアグラヴェインはある人物の葬式に自身の証であるアクセサリーを半分にわけて共に埋葬したという有名な物語があるが、何故それで半分?いまだに分からんと首を傾げるアーサーとサグラモールにルシィとグリフレットが噛み砕いて説明してくれる。


「ほら、『覇者』の証って歴史書にもあるけど『覇者』自身を示す物でしょ。『覇者』自身を示す物だから半分になってしまうと『覇者』としての気配か存在が薄れてしまうんだ。かつていたと云う神々の力の欠片を与えられたと言われているけどその影響で自覚すれば、神にもその存在が明確に分かるようになっている。だから双神も残りの六人の気配か存在を微かながらに感じ取れても場所までは分からなかったわけ。で、アグラヴェイン(先代)は証をわけたことによって最盛期以降の気配が薄くなり、神に認知されにくくなったんだ。まぁ、されにくくと言ってもいることはわかっていたけれど、正確な場所が分からないみたいな感じらしいけど」

「グリフレットさんの言う通りです。簡潔に言えば、今速さの座はアグラヴェインさんのようにいることは分かるのに正確な場所がサグラモールさんやグリフレットさんよりも分からないと云うことです。私の嗅覚は『覇者』から半径三キロまでは確実に分かります。しかし」

「今はその要領範囲になっても分からないから半分、と?」


二人の説明にアーサーがそう言えば、うんと頷かれる。つまり、速さの座を司る『覇者』は証が先代・地の座『地震』を司ったアグラヴェインのように半分に偶然か必然かなってしまったがために他の『覇者』よりも捜しにくくなっていると云うことだ。でルシィが嗅ぎ取ったのは『覇者』の存在。存在だけなためにいることは確定なのに、肝心な気配が嗅ぎ取れないが故にこの町の自分達からあとどれくらいかというのが分からない、と言うことだ。……うん、難しい。まさかの頭脳戦と云うかそんなことにアーサーは頭が混乱した。もちろんサグラモールもである。目がぐるぐる回っている。


「……えーと、それって」

「歴史書に載ってた」

双神(主人)にお聞きしました。先代『覇者』の一人が気配に敏感だったとかで」


二人の答えに二人は脱力した。ルシィは分かるがグリフレットは分からん。あの歴史書に何話分物語が載っていると思っているのだ。千を越えているぞ?よく覚えてたね?!なんて驚愕の声さえもう混乱仕切った頭からは出てこない。アーサーとサグラモールが同時にため息をつけば、クスクスと同時に二人が笑う。二人が理解しなくてもこっちが理解しているから問題ない、と言わんばかりの笑みに二人は考える事を放棄した。


「で、どうするんじゃ?半分しかない……ない?のをどうやって見つけ出すんじゃ」

「ん~そこはなんともねぇ。歩き回ってルシィが一番反応した場所を入念的に捜すって感じかな?」


サグラモールの問いにどう?とグリフレットがルシィを振り返れば、ルシィは「此処です」と真顔で指差した。


「え?」

「此処です。此処付近にいます」


その答えに彼らは言葉を失うしかなかった。

『覇者』は先代も今代も男女が半分ずつ6:6になるようにしてます。なので今まで出た先代の場合、ガレスが男、ブルーノが女となります。あとは作者の調べた情報と妄想です!(笑)あとあまり知らない名前を使いたかったという独断。アグラヴェインは名前からして地の座って感じしかしなかったんです!ちなみに女です。女って感じが(以下略)

次回は月曜日です!

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