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色無き王~十二の色~  作者: Riviy
第二部
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第二十九色 相棒コンビ


グリフレットの強烈な一撃で吹っ飛ばされた隠れ蓑に人型の魔物は呆然としながら片手を押さえていた。が、足元に広がる影に気づいたらしく、ニヤァと笑う。どうやら影が繋がっていれば大丈夫だと思ったらしいが、この魔物の相手はアーサーとルシィだ。そんな簡単に逃がせはしない。そう言うように一気にアーサーが迫れば、魔物は驚いたように一歩後方に足を引いたが、すぐさま影からアーサーと同じように剣を作り出し、大きく振りかぶった彼の攻撃を防ぐ。しかし、慣れていないのは一目瞭然で、ぶるぶるとその腕は攻撃を受けたことも相まって震えている。バッと容赦なく足を振り上げ、剣を弾けば後方によろめく魔物に向かって剣を振り回す。ヒラリヒラリと紙一重でかわしていく魔物にアーサーは一瞬苛つくが冷静になり、剣を構える。これ以上の深追いは厳禁だ。そう判断し、数歩距離を取った魔物を睨み付ける。真っ白い隠れ蓑とは正反対にまるで影のように真っ黒な姿。目だけが異様に光っていて不気味さが増す。魔物は悔しそうにギリギリと歯を食い縛ると片手を掲げ、その手に黒い炎を生み出す。アーサーでは火属性か闇属性かは判断出来ないが、魔物が魔牙であることも判明した。つまり、彼らの考えは当たっていたと云うことだ。その炎を放つのかと思いきや魔物は炎を剣へと変え、地面に切っ先を擦り付けながらアーサーに接近を開始する。一騎討ちなら負けないと言わんばかりにアーサーも突進し、両者は武器を勢いよく交差させる。ガキンッと甲高い音が耳元で響き、思わず耳を塞ぎたくなる視界でチリチリと炎がアーサーを焼き殺さんばかりに燃え盛っている。ジリジリと地味に来る攻撃にアーサーは舌打ちをかますと相手の武器を弾き、一旦後退した。頬に熱さを感じて手の甲で拭えば、そこには黒い炎の欠片が張り付いていた。


「〈水よ舞い(ウォーター)上がり敵を滅ぼせ(・ガラン)〉!」


撤退したアーサーのタイミングを見計らってルシィが水属性の魔法を放つ。両手を前に突き出したその手から美しいほどの水が渦を巻いて魔物に襲いかかる。襲いかかるといっても波のように突然襲いかかるのではなく、まるで包み込むようにくるくると回りながら炎の剣を、魔物自体を包み込む。しかし、炎の剣が消滅しても魔物はうんとも寸とも痛みの声をあげなかった。何故?驚き呆然とするルシィに魔物は風属性を足に付与して風のごとく一気に迫る。そして今度は氷のナイフでルシィに向かって切りかかった。右、左と首を傾げる要領でかわしていくルシィだが、片手では懸命に魔物からの魔法攻撃に耐えていた。なんと魔物は片手で氷のナイフを持って攻撃しながらもう片方の手で魔法をルシィの腹に打ち込んでいたのだ。それをルシィは相性の良い魔法で防いでは弾いていくがどちらに意識を持っていったら良いのか分からずてんてこまいだ。と敵はそれを狙ったのか、一瞬それたルシィの目に気付き、ナイフを首筋目掛けて突き刺し、腹に同じように氷の息吹を突き刺した。しかし、首と氷のナイフの間にアーサーの剣が滑り込み、間一髪で首に食い込むのを防ぐ。だが、腹の一撃は微妙だったらしく、ルシィの脇腹をかすり、紅く染めていた。痛みに顔を歪ませるルシィに魔物がニヤリと笑えば、アーサーと入れ違いになって後方に跳躍する。二本の氷の刃を構えながら魔物はニタニタと笑う。自分の勝利だと思っているのだろうか?ルシィに一撃加えた時点で?それだけで勝利を確信しているようでは将軍なんて夢のまた夢。そして


「甘いよ」


スッと突然、アーサーが魔物の視界から消えた。何処に行ったと周囲を見渡す魔物の背後に突如として殺気が現れる。バッと魔物が振り返り様に氷のナイフを振るが時すでに遅く、敵の片手の手首が氷のナイフごと切り落とされていた。突然の痛みに悲鳴を上げる魔物に容赦なくアーサーは回し蹴りを放ち、ルシィによって付与された風属性の魔法を駆使し、魔物の懐に潜り込む。剣を突き上げるようにして振り上げれば紙一重で防がれてしまい、弾かれる。それでも次々に攻撃を繰り出せば、摩擦熱と勢いに押されて氷はドンドン溶けて行く。ほぼ水と化した元ナイフを投げ捨て魔物が次なる攻撃に移るがそれをルシィがさせない。魔物の背後に回り込み、蹴りを放ったのだ。前方からも後方からも来る攻撃に魔物は嫌気が指したようで残った片手を切り落とされた手首に当てて引き、ぐるぐると回り出す。なんだと思う二人の目の前で黒い線状の物が飛ぶ。それは切り落とされた手首から伸びた黒い鞭で、バシンバシンと勢いよく地面を抉りながら叩きつける。そんな魔物にアーサーは物怖じすることなく、一蹴りで跳躍すると大きく跳躍し、上段から攻撃を振り下ろす。がその一撃を鞭で防がれてしまい、ついでと言わんばかりに剣に巻き付かれてしまう。グイッと引っ張られ、危うく前のめりになりそうになるがすんでのところで耐えしのぐとお返しだと言わんばかりに剣を自身の方へ引っ張る。綱引き状態になったところに魔物が縄に魔法を放つ。バチバチと輝く黄色の稲妻に雷だと瞬時に分かったのも束の間、アーサーの体に鈍い痛みが走る。一度味わった目眩ましとは比較にならないほどの電撃に体が動くことを拒否する。ガクッと片膝をつき、クラクラと揺れる視界と鈍い痛みを訴える体に早く動けと念じるが云うことを聞いてくれない。いつの間にか剣から離れた縄がアーサーを狙って振り回される。間一髪で体を横に転がし回避するがすぐに動ける状態ではない。駆け出すルシィに悪いと目配せすればルシィは大丈夫だとニッコリと笑う。アーサーからルシィへとターゲットを移した魔物は鞭を無我夢中でルシィに振り回す。


「〈真逆の武器(トゥルーリバース)〉!」


ルシィが叫べば、その手に現れたのは魔物が持つ黒い影のような鞭とは正反対、真逆の白くも儚い鞭だった。その鞭で相手の鞭を弾き、巻き上げるがスルリと抜けられてしまい、逆にルシィの懐への侵入を許す。だが、ルシィは片手を握りしめ、拳にすると魔物の顔面目掛けて突き出した。魔物は後方に仰け反ってそれをかわし、お返しと云うように片手を同じように突き上げる。それを見切り、しゃがんでかわすとルシィは下から足を蹴り上げ、上空に吹っ飛ばす。片足を軸に回転し、その勢いを利用してルシィも魔物を追って跳躍する。魔物は空中で体勢を立て直し、氷と炎の球体を放つ。それらを鞭で弾きながら空中を滑るように接近する。と近距離で両者の鞭が交差し、絡み合い、風圧と衝撃波を巻き起こす。衝撃波によって両者共に吹っ飛ばされてしまい、ルシィは地面に直撃する瞬間、体を捻って辛うじて着地。途端、背中を強い力で押され、前のめりになる。そうしてその肩に鋭くも熱い痛みが走った。慌てて肩を押さえながらルシィは魔物を振り返ると、魔物は空中で浮遊しながら黒い氷を展開させていた。バチンッと空中で鞭を魔物がしならせれば、黒い氷が勢いよく、目に止まらぬ早さでルシィに迫る。肩を押さえながらルシィは鞭を片手で消し、瞬時にその手を素早い速度で突進してくる黒い氷に向かって掲げる。


「〈光を纏う炎は乙(ライトアーツ)女座の怒りか否や(・ヴァルゴアーナ)〉!」


ボゥ!とルシィを守るように光の粒子を伴い、美しくも幻想的な模様を刻んだ炎の柱が数本現れ、氷を打ち消していく。ジュッと炎の柱に氷が当たるたびに溶けて消えていきキラキラと輝いているが、黒い滴の形をした物がまるで雨の如くルシィの頬や貫かれた肩に付着する。追加魔法か、と思うよりも先に飛び退けば滴が落下した場所に棘が刺々しい刃物のような刺を伴って生え出す。もしあれが自分に当たっていたら……考えただけでゾッとする。ブルリと体を震わせたルシィに襲いかかるかの如く、鞭が一気に炎の柱を刈り取り、消滅させる。嗚呼、やはり相手は闇属性の使い手か!ルシィは怪我をした肩を庇うように片手を背後に隠しながら光属性の魔法を編み出す。指先に光を纏わせ、空中に文字を刻む。その間にも魔物は鞭と黒い炎を同時にルシィに向かって放とうとしており、ついには黒い鞭を魔法で分離させて一斉に放った。魔法に一瞬でも意識が行っていたため、反応が遅れたルシィに黒い刃となった衝撃波が迫る。ハッとした様子でルシィは指を一瞥するがまだ魔法は完璧ではない。今この状態で放てば 自分が巻き込まれる。どうする?迷いを打ち捨て放とうとしたその時、ルシィと衝撃波の間にアーサーが滑り込んだ。間一髪、と行った具合でいまだに上手く動かない体をそれでも器用に使い、魔物が放った衝撃波を切り伏せ、鞭を打ち落とす。と鞭はまるで意思を持つかのように剣に巻き付き、再び空中に引っ張り上げようとしてくる。だが、今度はそうもいかない。アーサーは剣を下に下ろし、ピンッと張り付けた鞭に足を振り下ろした。強度が甘かったのか、そこで切れ、影に消えていく武器に魔物が悔しそうに歯を食い縛る。そこに大きく跳躍し、空中を足場に再び跳躍すると魔物に接近。一気に懐に攻め込むとその腹に剣を突き刺した。が紙一重で残った鞭に剣を巻き取られて軌道をずらされてしまう。それでもアーサーは膝蹴りを食らし、剣を無理矢理突き刺すと容赦なく振り上げた。落とされた手首、鞭を装備した片腕が斜めに切られて落下しそうになる。痛みに淀んだ瞳をアーサーに突きつけるが、彼にとっては痛くも痒くもない。だって、攻撃ではなく威嚇だから。バッとアーサーの肩を押し退け、一旦着地する魔物を追ってアーサーも滞空時間がないので着地し、魔物に目を向けたままルシィのもとまで行く。


「魔法発動まであとどれくらい?」

「あと、数文字です。魔法これならあの魔物……魔牙も恐らく一発です」

「……上級格にしては言葉は魔物並かぁ」


グルルとまるで獣のように唸る魔物にアーサーは首を捻る。魔物の上級格と言っても喋ったり知能が必ずしもあるわけではない。むしろ、その場合は今回のように特殊な襲撃を好む傾向にある。


「とりあえず、時間稼ぐからルシィ、一発で決めて!」

「分かりました!」


文字を紡ぎ、刻むルシィの力強い答えにアーサーはニヤリと笑いつつ跳躍する。彼が跳躍すれば、魔物も大きく跳躍し、両者は武器と片手を交差させる。今度はどうやら鞭を諦めたらしく残った片手自体に魔法をかけ、刃物へと変貌させる。そうして交差した武器を弾いては切りつけ弾いては切りつけを繰り返す。片腕しか残っていない現状に魔物は一度防いで攻撃するだけでバランスを軽く崩してしまう。だがそれでも一撃一撃は鋭く重く、アーサーは防ぐので精一杯だった。しかし、それでも一瞬の隙を突いて蹴りを放ち、距離を取ると一気に攻め込む。上段から剣を振り下ろし、重い一撃を落とす。片手で防ぐしかない魔物がその一撃を防げば、左右によろよろと案の定よろめいてしまう。そこへすかさず振り切った剣を再び突きつければ、胸元に簡単に命中する。けれどもその一撃だけでは魔物を弱らせるだけだ。魔物は大きく片手を振り、攻撃するがアーサーはヒラヒラと簡単に避けてしまう。その余裕綽々とした表情が気に入らないのか、魔物の口から唸り声が漏れる。と、突然、アーサーに向かって突進して来た。突然のことに容赦なく剣を抜き、唖然とするアーサー。嗚呼、けれども


「時間通りだよ、ルシィ」


サッと流れるような動きで横にずれたアーサーの後ろにいたのは、金色の文字を空中に刻んだルシィで。勢いよく指先を滑らせれば、その魔法は完成し、両腕を広げて魔物を歓迎する。あ、と思ってももう遅い。そう言うようにルシィが妖艶なまでに笑う。


「〈星々の祈りは十二となって降り注ぐ。金に輝く祈りと共に(プレイヤー・エターナ)〉!」


ルシィがそう叫べば、金色の文字は十二の星々へと変化し、美しいまでに黄金に輝き、魔物を迎え入れる。途端、奇声にも歌声にも似た声を、いや音を響かせながら文字が魔物を包み込み締め上げていく。逃げ場などもとから存在していない、そう絶望を告げるかのように。魔法を放とうとする声も腕も足も全てを容赦なく金色の星々は奪っていく。美しい見た目と名前を持ちながらその威力は脅威的。絡め取っていく魔物に十二の星々がこれまた容赦なく攻撃し、魔物の悲鳴を応援歌に次々と切り裂いていく。次第に魔物の声が聞こえなくなり、「終わった」と言わんばかりに金色の星々が消えるとそこにはかつて魔物だった残骸が見るも無惨な姿で放置されていた。闇属性と光属性は互いに優劣を持つ。片方の凄まじい威力に敵わなかったのだろう。だってルシィが放ったのは光属性の上級魔法なんだから。魔物が地面にドロリと消えていくのを見てホッとしたのかルシィの体が傾く。慌ててアーサーが駆け寄り、支える。上級魔法なために魔力の消費が激しいのだろう。魔法は時に体力も奪う。アーサーは心配そうにルシィに肩を貸し、笑う。


「お見事、ルシィ」

「ありがとうございます。これで、一件落着に近づきましたね」

「ね」


消えつつある魔物と戦闘音に二人は小さく笑みを溢した。

結構コンビ戦(共闘)好きです。

次回は金曜日です!

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