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色無き王~十二の色~  作者: Riviy
第二部
28/130

第二十六色 緊急参戦大会中


と、言うことで一緒に行くことになったグリフレットを加え、『覇者』は残り四人。すぐに出発と行きたいところだが、ヤオヨロズ共和国を満喫せずに行くのもなんなので、アーサーが行きたそうにしていた大会を覗いていくことに決定した。アーサーが困惑したような、嬉しそうな表情だったのがなんとも印象的であった。食事処から見えることは見えるが奥の席なので、誰と誰が戦っているのかまでは見えないし、見えるのは観戦客の頭と歓声だけだ。全然観戦とは言えない。と言うことでセルフサービスの珈琲を飲み干して店を出て、新たに観戦場所を見つける事にした。一番良いのは座っての観戦だが、無理そうなので良くて立ち見が良い。と言うことで彼らは大会が行われている闘技場に入る事にした。魔法で作られたらしい闘技場は円形の形をしており、中央を囲むように観客席が並んでいる。四人が中に入ると歓声が雄叫びとなって彼らを包み込んだ。恐ろしいほど、ずっといるだけで汗が出てきそうになるほどの熱気に包まれていた。人々は選手の一挙一動に雄叫びや野次を飛ばし、拳を振り上げて鼓舞する。そんな観客席の間を売り子が右へ左へと移動しながら食べ物や飲み物を売り捌いている。


「うわーすっごいのぅー!」

「結構規模が大きいのですね」


何処までも続く人々を眺め、驚愕の声を上げるサグラモールとルシィ。その隣では初めて観戦するというグリフレットも唖然とした様子で口を開けており、アーサーも驚きつつもその熱気に訓練所を思い出していた。いや、多分、あっちの方が人口密度が高いし、暑苦しいだろうけど。けど、こちらも目を疑うほどに良い造りをした闘技場だ。中央の戦場では武術大会が行われているようで、剣を持った相手と槍を持った相手が死闘を繰り広げていた。が、槍を持った相手が倒れかけると突然、仕切りを跨いで短剣を持った別の相手が乱入した。三人との戦いとなったにも関わらず、警備員らしき人物は止めもせず、逆に戦い始める彼らを観客と共に煽る始末である。


「……ホントに飛び入り参加良いんだ」

「あれは飛び入りというよりも殴り込みに近いがのぅ」


えぇーと唖然とするアーサーにサグラモールがケラケラ笑いながら言う。サグラモールから飛び入り参加出来るとも聞いてはいたが……あんな飛び入り参加とは聞いてない。ガックシと肩を落とすアーサーを慰めるようにルシィが彼の肩をポンッと叩いた。ルシィもアーサーと同じように考えていたらしい。目が遠い目になっていた。思わずアーサーもルシィの肩を叩いたのは言うまでもない。それにグリフレットが首を傾げて問う。


「参加しないのかな?」

「あんな殴り込みじゃなかったら参加しようと思ってたけど……あれ、下の階まで行かないといけないじゃん」

「つまり行くのがメンドクサイと。転移魔法使う?」

「師匠、転移魔法使えるのか?!」


まさかの衝撃の告白に一斉にグリフレットを振り返れば、彼は何処か呑気に片眼鏡を右目にかけていた。そうしてようやっと三人の視線に気付き、ギョッと体を反らせた。


「え、え、僕、変なこと言ったかな?」

「転移魔法、使えるのですか?」


ルシィの問いかけにグリフレットは「なんだそんなことか」と笑い、「使えるけど」と頷いた。それにアーサーとルシィ、サグラモールがハイタッチしたのは言うまでもない。結構良い音が響いたが、観客と選手の雄叫びに飲み込まれて行った。


「妾も、妾も使えるんじゃ!」

「えっ!?サグラモールもなの!?」

「幸先が良すぎて怖い!ねぇルシィ怖くない!?」

「興奮するのは分かりますが、落ち着いてくださいアーサーさん!」


驚愕と喜びにわく彼らにグリフレットはまるで子供だなとクスクスと笑った。まぁエルフの末裔であるグリフレットから見れば十分彼らは子供なのだが。「ん゛っん゛!」と突然、喜びと驚愕に酔しれていた三人+一人がその苛立ったような咳き込みに後方を振り返れば、そこにはアーサー達と同じことを考えていたであろう男女のカップルが彼らを睨むように見ていた。どうやらそこを通りたいのだが、廊下に広がるように立っている彼らが邪魔らしい。苛立ちと邪魔を滲ませた瞳で睨まれ、一瞬にして野次以上の感情が四散する。これは失礼しました。一瞬にして静まり返ると彼らはカップルに道を譲った。途端、「ワァ!」と観客が歓声にわく。立ち上がる観客もおり、どうやら殴り込みが入った戦いに決着がついたらしい。カップルを行かせるとアーサーは苦笑をもらしながら後方の柵に寄りかかった。


「で、なんでそんなに喜んでたのかな?」


その隣にグリフレットが寄りかかり、アーサーに聞く。その目の前ではルシィとサグラモールが手前の柵から身を乗り出すようにして興味津々と言った様子で次の戦いを今か今かと見ている。前の席にいた観客と一緒になって興奮しているところを見るになんだかんだ言って二人も観戦したかったのだろう。それにアーサーは小さく笑うとグリフレットの問いに答える。


「サグラモールも転移魔法使えるんだけどね、使える人が二人もいると色々便利だしやったねって。あとで詳しく言うけど、サグラモールは野暮用で転移魔法使う可能性あるから」

「なるほど。サグラモールは魔法の座だっけ。多くの魔法が使えるんだ。ルシィは?」

「さっきも言ったけどルシィは魔法の擬人化だから、使えないのもあるみたいでね。ほら、想属性って使い手少ないし」


ケラケラと笑って言うアーサーにグリフレットも小さく笑う。サグラモールが誘拐されて生け贄にされそうになった事件は今言うことではない。多分、この歓声で聞こえない、うん。アーサーの「あとで」にグリフレットは興味深そうに片眉を上げた。するとまだ選手が出てきていないのか、ルシィが後方の二人を振り返って言う。


「グリフレットさんにも私が何の魔法が使えるのか検証に付き合っていただきます♪」

「え」

「妾もやるぞルシィ!お主の魔法を見せておくれ!」

「もちろん良いですよ!」


キャッキャと戯れる二人にアーサーは仲が良いなぁと微笑ましげに笑う。グリフレットもしょうがないと云うように受け止め、微笑ましそうに眺める。と、次の戦いが始まった。選手が入場してくると四方八方から野太い雄叫びと黄色い歓声が大合唱を奏でる。ルシィとサグラモールもパチパチと手を叩きながら中央に視線を移す。ようやく最初から見れる戦いを横目にアーサーは気になっていたことを聞く。


「グリフレットさんてさ、さっきまで片眼鏡モノクル着けてなかったけどなんで?」

「グリフレットで良いよ。片眼鏡コレは僕なりの分析眼鏡かな。魔法がかけてあるんだ」

「へぇ。どんな?」

「見てみる?」

「本当?!」


アーサーが興味津々にグリフレットに近寄れば、突然だったのでグリフレットは目を丸くしていた。恥ずかしそうに申し訳なさそうに会釈するアーサーにグリフレットはクスリと笑い、どうぞと片眼鏡を渡す。恐る恐ると言った感じで受け取り、ワクワクと浮き足立ちながらアーサーは片目に片眼鏡をつける。グリフレットが見る、『叡智』が知る風景を少しでも覗き見ることが出来る……!そうワクワクした気持ちで着けたのだが、ただ視界が歪んでフラッとしてしまっただけで普通の片眼鏡だった。あれ?とグリフレットを見上げると彼はクスクスと悪戯っ子のように笑っていた。


「グリフレットぉ~!」

「ふふ……まだまだだね。魔法でフード取られたお返しかな。これでおあいこ」

「マジか……本当に見えると思った」

「前は作ったんだけどね、踏んで壊した。それは僕の近視用眼鏡だよ。はい、返して」


手を出すグリフレットに片眼鏡を返しながら「騙された……!」とアーサーは悔しそうに顔を歪めるが、二人して愉快げに笑えば、グリフレットなりの気遣いだと気づく。目の前の二人も二人の会話にクスクスと楽しげに笑う。すると「ワァ!」とまた歓声が上がる。中央を見ると選手が相手を吹っ飛ばしたようだ。此処からでも選手が持つ武器が仄かに輝いているのが見える。魔法を付与した武器のようだ。それを見てサグラモールが興奮したように叫ぶ。


「あれは水属性じゃのぅ。じゃが、効果はいまひとつ……?」

「相手の方も同じように魔法を付与した武器を持っているようですね。ですのでおそらく地属性かと」

「相手を読んでたってところかな」

「お、防いだ」


解説者さながらの解説を誰と言うわけでもなくルシィとサグラモールの言葉に返すようにグリフレットが言えば、タイミング良く相性の悪い武器を選手が防いだ。そこから属性など後付けだと言わんばかりの手に汗握る激しい攻防戦となる。水属性と地属性の魔法が両者が武器を交差させるたびに水飛沫のように弾け飛ぶ。それらは太陽の光を浴びてまるで星が飛び散っているかのような錯覚に陥らせる。激しい中に垣間見るその仄かな美しさに観客は感嘆のため息をつく者と雄叫びを上げる者で二分される。そんな戦いを見てアーサーはペリノアとパロミデスの訓練を思い出した。両者共に今回の大会と同じように魔法を付与していて、地属性の魔法が使えるペリノアに対してパロミデスは多少使える水属性と風属性を合わせた合体属性と云うインチキにも近い戦法だった。けれども勝ったのはペリノアだった。それを思い出し、アーサーは小さく笑うと腰の剣に手を伸ばした。自分も何処か参加したいと云う気持ちがあったのだろう。だがアーサーは真剣に観戦することにした。他の人の戦い方も先程の戦い方も吸収して応用すれば、自分の糧になる。戦いを凝視するアーサーにグリフレットは片眼鏡を着けながら自身も白熱する戦いに目を向けた。その時、中央ではない場所から破裂音と爆発音が響いた。突然のことに一瞬静まり返り、続いて観客は歓声と困惑の声に分かれる。大会のパフォーマンスと思う者と緊急事態だと不安になる者で二分されたらしい。この興奮具合からしてそうなるのは無理もなかった。もちろん、驚いたのはアーサー達も同じだ。


「なんでしょう?」

「大会中にこんな音がするだなんて聞いておらんぞ?」


ルシィとサグラモールがアーサーとグリフレットを振り返って言えば、彼らの周囲も異変に気づいたようでざわついている。まさか、そう思い、アーサーがルシィを見ればルシィはアーサーの言わんとしていることに気付き、目を見開いた。


「まさ〈お知らせ致します。魔物が現れました〉」


言わんこっちゃない。その緊急事態に今の今まで歓声に包まれていた闘技場は悲鳴に包まれた。

話は続くよ何処までも~

はい、書き溜めがー溜まりましたー!

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