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色無き王~十二の色~  作者: Riviy
第二部
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第二十二色 夕食での相談会


「はいっ!お待ち!」


ガタンッ!と勢いよくテーブルにまるで落とすように置かれた皿やグラス。皿には新鮮な肉や魚、野菜が美味しそうな味付けと湯気を出しながら並び、グラスにはキンキンに冷えた飲み物が早く飲めと催促してくる。テーブルに置かれた料理は計四品。料理を持ってきた看板娘は「ごゆっくり~」とウインク付きで去って行く。そんなことをしている傍ら、少女は次なる注文を取っている。アーサーはテーブルに並べられた食事を見て思わずお腹を鳴らしそうになった。自分も結構お腹が空いていたのだと思うと何処か可笑しく感じた。三つのグラスをそれぞれルシィとサグラモールの前に移動させるとさっそくサグラモールがグラスを手に取り、イッキに飲んだ。「プハー」と喉が乾いていたのか良い飲みっぷりだ。


「お腹が空いたから食べたいんじゃが?」

「良いよ、食べな。俺達の旅の資金だから」

「まだたくさんありますしね」

「油断してるとなくなりそうだけど」


今か今かと食事を待ちわびるサグラモールにそう言い、ルシィと二人で笑う。そうして三人声を合わせて「「「いただきます」」」と言った後、我先にと言わんばかりに食べ始める。よほどお腹が空いていた、というよりも疲れを癒そうとしているようにも思えてアーサーは肉に舌鼓をうちながら苦笑した。

武器屋を後にした三人は食事処と一緒になった宿屋を探した。食事処というよりも酒場も経営している宿屋を見つけ、そこで二部屋ゲットした。サグラモールは女性だが、ルシィはどちらでもないので一応アーサーと同室である。旅の資金で部屋を借りると早速夕食だ。宿屋の一階にあるこの酒場には多くの人々や宿泊客が集まり、夜な夜な宴を繰り広げている。あっちこっちの席で酒を頭からかぶるようにして飲む旅人や一人静かに夕食を楽しむ者。大勢とワイワイと騒ぐ者達など、阿鼻叫喚とも言えるような賑わいに包まれている。店の入り口近くでは此処の常連なのだろうか、楽器を持った集団が「騒げ!」と言うように軽快な音楽を奏でている。これだけ大騒ぎをしていれば、近所迷惑や宿泊客がいる二階以上の心配をふとしてまうが、魔法で防音にしているらしく、いくら騒いでも音漏れしないらしい。宿屋に入る前に看板娘が「私のお母さん凄いでしょ!」と胸を張って教えてくれた。


「明日からはどうします?」


グラスの飲み物、お茶を飲みながらルシィが問う。自分達はどうにかして『覇者』を見つけ出さなければならない。はてさてどうするか。


「情報集めるにしても人がたくさん行き来てしる時点で見分けるの難しそうだよね」

「ルシィの嗅覚じゃったか?……は今のところどうなのじゃ?」

「ええ……ヤオヨロズ共和国(此処)に入ってから微妙なんですよね。色んな匂い、『覇者』と微かに接触した人やしない人、あとは国特有の匂いが混ざって」

「嗅ぎ分けられない、とな」


サグラモールがそう断言するように言い、飲み物を煽るとルシィは「違います」と否定する。そして身を乗り出す。周りがどんちゃん騒ぎ過ぎて声が聞き取りずらいのだ。


「確実に『覇者』が一人います。しかし、なにか特別な魔法や物を使っているのか、上手く溶け込みすぎて見分けがつかないのです」

「うわーまさかのそっちかぁ。うん、自覚がないって話だったけど、もう一人は微妙みたいだね」

「つまり、自覚はあるが違うと考えてもいると?」

「サグラモールの言う通り」


クイッとグラスを煽り、アーサーは言う。自覚がない分、厄介だとは思っていたがその半分、意図的に姿を分からなくしているのならば余計に厄介だ。おそらく別の要因があるのだろうが、捜すこちら側からしてみれば、余計なことはせずに堂々としてもらいたいものだ。まぁ無理だろうが。それにルシィの嗅覚は時に『覇者』と関わりがある者、重要であろう人物も嗅ぎ分けることがあるらしく、油断は禁物だ。重要、と言っても接触したかしないか程度の残り香的なものらしく、六人もの『覇者』の友人がいるアーサーは六種類もの残り香を身に付けている状態だとルシィに教えてもらった。その時、一瞬残り香ではなく何故か星みたいなのを想像してしまって二人を大爆笑させた。連絡魔法で繋がっていたペリノア達も爆笑したのは言うまでもない。


「とりあえず、ルシィはそのまま匂い探してみて。サグラモールみたいにパッと見つかるかも知れないし」

「はい。なら、明日は人が多いところに行きませんか?物によっては溶け込んでいる物が人の多さに剥がれることがありますので」

「魔法や服なら人にぶつかった弾みで外れる可能性もあるしのぅ」

「なるほど、うん、分かった。じゃあ明日は人が多い所中心に行ってみよ。サグラモール、案内お願いして良い?」

「お任せあれじゃ!」

「ふふ、頼もしいですね」


「お願いします」とルシィに頭を撫でられ、サグラモールは嬉しそうに目の前の魚を綺麗に切り分ける。それがやっぱり微笑ましくてアーサーはほっこりと笑う。それは周囲の人々にとってもそうだが。とにかく、明日の予定は決定した。ルシィは言わなかったが多分、ヤオヨロズ共和国にいる溶け込んでしまった『覇者』とは知識の座を司る人物の事だろう。知識の座は長寿で多くの知識を持つエルフになる可能性が極めて高い。先代『覇者』にもエルフの末裔がおり、知識の座ではないが別の座を司っていた。知識の違いでは知識の座になっていたとも言われているが、真実は分かっていない。が可能性は否定できない。

エルフは普通の人間よりも長い時を生きる、長寿を持つ種族だ。と言っても見た目は人間とほぼ同じだし、長生きするだけで違う人間と云うわけではないのでそんなに違いはない。長寿となった理由としては魔法を体内に溜め込むことに成功した研究者一族の賜物らしいが、詳細は明らかになっていない。長寿のため歴史を記す役職を持つ者が多く、歴史書の多くがエルフが直に見て聞き収集した出来事だと言われており歴史書発祥の種族とも言われる。しかし、エルフは歴史書に記された数百年前、先代『覇者』が活躍したある戦争によって数を急激に減らしており、今では末裔かクォーターしか血筋は残っていない。他にも人間と差異が少しあるだけの種族がいるが、その戦争で多くの血族が途絶えたらしく今はヤオヨロズ共和国とカラルス聖王国にしか住居を構えておらず、ほとんどが末裔か先祖返りとなっている。図らずもその戦争が血筋を分けたと云うことだろうか。


閑話休題。


もし、知識の座を司る『覇者』が仮にエルフの末裔だとしたら、自分の力に気付いて身の危険を案じ蓋をしようとしても可笑しくはない。またそれほどの知識を持って行動に移した可能性もある。実際、エルフの末裔と図らずもなった先代『覇者』は死ぬ直前の数十年間は自らの力に蓋をして生活していた。末裔であろうともそれほどの力を有しているはず。見つけるのは至難の技だ。


「そういえば聞きたかったのですが」


と、考え込んでいたアーサーを察してかルシィがサグラモールに問いかける。難しい方に考え過ぎていたらしい。アーサーはグラスを煽り、脳裏を一気に冷却させる。危険も難易度も百も承知だ。だからこその双神の助言なのだから。ジャガイモをスライスしたチップスを頬張りながらサグラモールは首を傾げる。


「なんじゃ?」

「以前、というよりも今朝でしょうか。魔女と巫女の称号を持っていると言っていたでしょう?あれってどういう称号なんですか?」


チップスを飲み込み、次のチップスにケチャップを付けつつサグラモールは言う。


「魔女と巫女はこの国の代表者から派閥する機関から与えられる称号みたいなもんじゃ。魔女は攻撃魔法を得意としておったヤオヨロズ共和国の先々代代表者から、巫女は回復魔法を得意としておった先程の先々代代表者の妹から取られておっての。妾はその二つの機関の試験で好成績を納めた故、称号を頂いたのじゃよ!」

「す……凄ーーっ!?サグラモール凄ーーっ!!」


パチパチと驚愕と感激のあまり、アーサーが手を叩けば、サグラモールはえっへんと誇らしげに胸を張る。ルシィも「おー」と小さく感嘆の声を上げながら手を叩く。


「え、ちなみにどんな内容?」

「うむ。確か回復魔法(巫女)は先代『覇者』のガレス・ヴァーノが得意とした想属性の回復魔法が使えるかが最大のポイント。攻撃魔法(魔女)は同じくガレス・ヴァーノがよく使ったとされる光属性と闇属性の全体攻撃魔法各一種類ずつ。機関の最高責任者全員が丸を与えれば合格」


興味津々と言った感じで聞いたアーサーだったが、サグラモールの答えに聞くんじゃなかったと項垂れた。先代魔法の座を司った『覇者』も魔法に関しては凄まじかったと言うし、サグラモールもそれほどまでに凄い可能性、いや断定は今朝確認済みだ。だが、改めて理解した。


「……やっぱ魔法の座だ……『妖術』だ……!」

「式を使うから『妖術』なのでしょうね。ある意味、『妖術(異名)』と似たようなものですねぇ」

「妾三つ持ちじゃあ~」


酔ったわけではないのに「イエーイ♪」とハイテンションでサグラモールは無邪気にもグラスを掲げる。掲げた拍子に中身の飲み物、ジュースが左右に大きく波打つ。あまりにも勢いよく挙げるので慌ててルシィが手を添えようと手を掲げようとする。しかし、サグラモールは大丈夫だとルシィに笑うとジュースを飲んだ。と全て飲んでしまったらしく、空になってしまった。よく見るとルシィのも空になりかけている。しかしまだまだ食べ物は山の如く皿に鎮座している。飲み物がないとさすがにキツイ。アーサーは自身のグラスも確認すると店員を呼ぼうと片手を挙げた。


「やめてください!」


その時、賑わう酒場をつんざくような女性の声が響いた。

なにかがおっこる~今日は二つやろうかなと。

そして結構サグラモールは凄い。


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