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色無き王~十二の色~  作者: Riviy
第二部
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第二十一色 ヤオヨロズ共和国第三都市


夕暮れ近くになった第三都市はそれでもまるで昼間のように活気に溢れていた。行き交う人々は笑顔で挨拶をかわし、店先では新鮮で豊富な食材から小物まで多種多様な商品が並ぶ。服装も様々でサグラモールと同じ服装もいれば、ルシィと同じ服装もおり、アーサーと似た服装の者もいる。ヤオヨロズ共和国には特定の権力者がおらず、十数人の選ばれた代表者によって全てが決まる。そこから派閥する機関もあり、他の国々以上の結束が求められる仕組みを採用している。また、そんな国であるために、様々な人々に門を開いており、どんな国の人でもどんな職業の人でも受け入れている。そのため、他の国々よりも多くの文化や人種が集まり交差する多文化な国だ。ダイヤ魔導国が世界の中心ならばヤオヨロズ共和国は人々の中心と言ったところだ。

そんなヤオヨロズ共和国の第三都市の賑わう街中を三人は歩いていた。サグラモールによると彼女の実家とも言うべき家は第三都市の離れにあり、第三都市は第二の故郷だと云う。行き交う人々の群れを逆走し、前進しながら三人はサグラモールの案内で武器屋と本日の宿泊先を探す。宿屋と食事処を共に経営しているところは食事もついてくるので、そんな宿屋を探している。と、アーサーの視界に「武器屋」と書かれた看板が目に入った。店先にも屋台のようにして多くの掘り出し物武器を並べており、何人かの客が武器を物色している。その店にルシィとサグラモールも気づいたらしく、大賑わいで声も微妙に聞きづらい中、視線で会話すると三人はその店に向かった。店先には多くの刃物が鞘に納められた状態で並び、装飾が美しい杖も夕焼けに照らされて宝石のように輝いていた。


「ルシィはどんな武器が見たいの?」

「そうですねぇ。臨機応変、ですからナイフや杖でしょうか」


アーサーが隣のルシィに聞けば、そう答えが返ってくる。臨機応変に対応したいと云うことと近距離を考えるとルシィの言う通り、ナイフや杖がベストだろうか。「うーん」と悩みながら武器を物色しているとサグラモールが「これはどうじゃ?」とある武器を手に取る。


「折り畳み式のナイフじゃ。しまう時に力がいるようじゃが、持ち運びには便利じゃし近距離攻撃も対応可能じゃぞ」

「鞘に納められていないから抜く手間も省けるね」


ルシィはサグラモールが持つ折り畳み式のナイフを受け取り、興味深そうに見やる。シュッとナイフを出しては軽く目を見開き、折り畳み式と言うので刀身部分を入れようとするが……サグラモールの言う通り、しまう時に力がいるようでなかなか入らない。ナイフなので切れ味が良いためアーサーとサグラモールは二人してルシィがしまう際に怪我をしないか、ハラハラしながら見ていた。一分ほどしてようやくナイフを元に戻したルシィは切れていないが少し赤くなった手を一瞥し、そっと折り畳み式のナイフを棚に戻した。


「私にはおそらく無理です」

「うん、そうだね」

「そうじゃの」


完全同意の満場一致。再び武器を物色し始め、そういえばとアーサーはサグラモールを振り返る。


「ねぇサグラモール。君は武器いらないの?」

「えっ?」

「いや、魔法凄いのは知ってるけど大丈夫かなーって」


アーサーの言わんとしていることにサグラモールは「嗚呼」と気づいたのか、手元の短い杖を手に取りながら、笑って言う。


「妾はのぅ、杖や武器があると魔法の威力が僅かながらに下がるのじゃ。ほら、杖には魔法使用者の魔力を上げる物もあるじゃろ?妾とは相性が悪いようでの。あとは普通に武術が出来んのじゃ」

「……ルシィよりも完全な後方支援型というか完全な遠距離攻撃型だね」


呆気に取られた様子でアーサーが言えば、サグラモールは「その時はよろしく!」と笑顔で二人を振り返った。魔法が苦手な者がいると言うことは逆もしかりだ。


「ある意味バランスは良いですよね。アーサーさんは剣ですし、サグラモールさんは魔法一択。私が中距離」

「あ、確かに。サグラモールが魔法で魔物を吹っ飛ばして零れたのを俺とルシィで狩れば」

「完璧……!」


グッとアーサーとサグラモールが親指を立てれば、少し遅れてルシィも親指を立てる。三人一緒になって親指を立てているのがなんだか可笑しくて、まだ始まってもいない共闘の作戦が完璧すぎて、距離が近くなって親しくなった事が嬉しくて三人は笑う。


「ということでルシィには杖も良いと思うのじゃ!」


はい、と渡された杖を受け取り、ルシィはまだ少し楽しそうに口角を緩めながら杖を見る。持ち運びが便利そうな杖で杖の切っ先には赤と青を基調とした球体が埋め込まれている。ルシィが持つとサグラモールの言う通り、魔力を上げる物、効果があるらしく仄かに力が上昇するのを感じる。しかし


「これ、火属性と水属性だけですね」

「うむ、やはり上げるなら全属性が良いかのぅ?」

「その方がなにかあった時、便利ですし。偏ると少し怖いです」

「嗚呼、火属性と風属性の弱点持ちの魔物に属性わけて攻撃した時とかの片方が力少し足りなくて惜しいことになったりとかなぁ……うん、怖い」

「……サグラモールさん、あとで詳しく」

「合点承知」

「……なんの話してんの君達は……」


突然の会話に付いていけず、アーサーがそうもらせば、二人はクスリと笑った。杖を置き魔法職二人で杖やらナイフを中心に物色するルシィとサグラモールを横目にアーサーも武器を見る。ふと、目に入った自分が使っているのとは形状が違う刃物に興味が湧いた。ガヘリスが使うレイピアともマーハウスが使う大剣とも違う。チラリとアーサーは自分が愛用している剣を一瞥し、その武器を持ってみる。鍔には美しい模様と云うか絵のようなものが刻まれ、鑑賞用としても高い評価を得そうだ。そんな武器に惚れ惚れとしながら眺めるアーサーに気付き、サグラモールが言う。


「アーサー、刀が気に入ったのか?」

「刀?……これが、刀かぁ」


へぇと感嘆の声を上げながらアーサーはサグラモールに教えてもらった刀を見る。ヤオヨロズ共和国は様々な人々が流れてくるため、他の国々よりも顕著に優れた物が見つかりやすい。


「噂では聞いてたけど、切れ味凄いんでしょ?」

「フフン♪他の武器同様、手入れは必要じゃがの。買うのか?」

「ん?いや、俺は買わないよ。ノア様にどうかなーって。サグラモールも声だけは挨拶したでしょ」


鞘から抜き放ち、美しいほどに手入れされた刀身を眺めつつ、うんと頷いて納め直してアーサーが言えば、「嗚呼」とサグラモールはくうを見つめて思い出し肯定の意を示す。


「地の座を司る『覇者』の皇子様のぅ。その方がどうされたのじゃ?」

「ノア様さ、皇族の中でも武芸に長けてるからか特定の武器持ってないんだよね。だからどうかなって。皆が持ってなさそうなのでカバーしたいって言ってたし」

「訓練の際は剣を使用してましたよね」


「これどうです?」とサグラモールに短刀を渡しながらルシィが言えば、彼女は本当に武芸、武術が苦手らしく抜くのに苦戦していた。それをヒョイッとアーサーは奪うようにして取り上げ、呆気なく抜き放つと鞘をサグラモールに、刃物をルシィに渡す。

確かに『覇者』六人が揃った時の訓練でペリノアは剣を使っていた。自前の剣ではなかったが、明らかに「長年愛用していました」と言われても無理はない扱い方だった。まるで剣舞だともらしたのはマーハウスだったか。


「基本的に全部の武器使えるからねノア様。一種の才能だよ」

「馬に乗るのならば太刀はどうじゃろうて。大太刀、と言うのもあるが」

「うーん。薦めとくけど、ノア様次第だしね。ルシィは?」


サグラモールと共同作業で短刀を鞘に納めるルシィにアーサーが問えば、ルシィは「うーん」と少し困惑したような表情で手元に並べられた武器に目を落とす。どうやらこれと言った物はなかったらしい。


「難しいですね。どれが良いのかさっぱり分かりません」

「あんまり難しく考えない方が良いよ?これって感じたのが良いよ」

「……全部「全部買うとかは言わないでよルシィ」」


アーサーがルシィが言いそうなことを前もって防げば、ルシィは最終手段的にそうするつもりだったのか、ムゥと頬を膨らます。それにサグラモールは「っぶは」と吹き出して笑い出す。ピコピコとまるで後ろ髪が尻尾のように動き、彼女の爆笑具合を示す。


「全部……全部って……此処にどれだけ武器があると思っとるんじゃ……っはは」

「分からなければ全部買えば良いのでは?」

「もっと選べなくなるよ?!」

「あっ」


アーサーに指摘されてようやっと気づいたらしく、ルシィは見るからにしょぼーんとした表情をした。慣れたと思ったのにまだ慣れていないのが少し悔しかったらしい。サグラモールが笑いをどうにか納めながらルシィに云う。


「まぁまぁ、参考ということじゃったし、ヤオヨロズ共和国(此処)に何日か滞在するんじゃったら何度でも見れるぞ?」

「そうですね。私には作ると云う手もありますし」

「切り替え早いなぁ」

「私の取り柄、ではありませんが取り柄です」

「どっちだよ」


プッとまた三人で笑い合う。楽しげなこの街中の空気に自分達も飲まれているのは言うまでもなかった。暫く笑い、アーサーは言う。


「じゃ、行く?」

「行きますか。なんだがお腹が空いてきました」

「それは大変じゃ!今夜の宿屋を探そう!」


「出発!」と武器屋をサグラモールを先頭にあとにしつつ、三人は人混みに消えていった。


二人目の『覇者』捜しが始まります。

次回は月曜日です!

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