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色無き王~十二の色~  作者: Riviy
第二部
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第十八色 水辺の少女



「ルシィ、大丈夫?」

「はい。怪我はしてしまいましたがなんとか」


怪しい集団を全員気絶させ、二人は部屋の中で合流した。その後、ルシィによって回復魔法をかけてもらい、治療を完了させる。痛みが支配していたと言っても過言ではなかった体の痛みから解放され、アーサーは「うーん」と背伸びをする。そうして、儀式の部屋であろう此処と廊下に倒れた計十二人を見て肩を落とした。少女が『覇者』で早く救助しなければならないと焦っていたが、気絶させたあとの彼らのことを考えるのをすっかり忘れていた。此処に放置してはおけないし、首謀者が帰ってこないとも限らない。洗脳がとけたかも微妙だ。それに仕掛けがあったあの広間からは魔物が容易く侵入出来る。最悪、森の魔物に食い散らかされて死亡にだなんてなってしまえば自分達だって夢見も後味も悪い。ふと、アーサーは想属性に転移魔法があることを思い出した。洗脳魔法同様、使用出来る者は限られているが、ルシィがもし使えるのならば、アルヴァナ帝国に転移させ、そこからペリノア達を通じてヤオヨロズ共和国に掛け合うことも出来る。


「ルシィ、君って転移魔法使える?」


アーサーの問いかけにルシィの表情が申し訳なさそうに歪んだ。それが答えだった。


「すみません。洗脳魔法もそうですが使えないのです。結構珍しいものですし……全ての属性を網羅しても合体属性のように適正がないようで……」

「そっか。ありがと。擬人化だからかな」

「かもしれません。あとでどれが使えて使えないのか入念に確かめてみます」

「うん。まぁ想属性の魔法って使える人限られるもんね、特殊だし。なんでだろ?」

「さぁ、そこまでは」


二人して「うーん」と悩んだところで二人してまた息を吐く。本当にどうするか。この人数を運ぶ手段を二人は持っていない。ルシィの連絡魔法で伝えて来てもらうにしてもそれまで待っていなくてはならない。どちらにしろ時間を食われてしまう。『覇者』を六人集めなければならない以上、時間が過ぎるのをただ待つのは愚策過ぎた。


「洗脳魔法の解除法少ないから、今後を考えるのも難しいね……」

「はい……どうしましょう」

「どうしようねー」


二人して腕を組んでどうしようかと懸命に脳をフル回転させる。こんな時、自分も魔法が使えたらと思うが、使えたところで適正も効果も望んでいなければ意味がない。アーサーはそんなことを考えた自分に苦笑をもらすと倒れている彼らを見下ろした。片や被害者、片や加害者。はてさてどうしたものか。そう考えながらアーサーが彼らを眺めていると突然、粒子に包まれて姿が消えた。ギョッとし、目をこすったあともう一度見れば確かに数秒前にはそこにいたはずなのに一人いなくなっていた、忽然と。どうなっているんだとルシィを振り返れば、ルシィも自分と同じように目撃したらしく目を丸くしている。慌てて他の人々も確認すれば、粒子に包まれて一瞬にして消えてしまうところだった。魔法だと、しかも想属性の魔法だと云うことはすぐにわかった。だが、誰が?まだ倒し(気絶し)損ねた残党がいたのか、それとも首謀者が戻ってきたのか。一瞬にして警戒を纏うアーサーの隣でルシィがなにかに気づく。


「アーサーさん、あの粒子、転移魔法です!」

「はぁ!?誰が転移魔法を発動して……」


そこまで言ってアーサーは自分の間違いに気づいた。此処にいるのは、俺達の目的は()?答えは、云わば()()しかなくて。足元でまるで頭を擦り付けて「撫でて撫でて」と甘える猫のように水面がなびいている、触れている。それは、そういうことでしょう?


「嗚呼、君か」


そう言ってアーサーが振り返った先、そこは絡み合った龍の石像で。そこにいるのはしっかりと立った少女。自身を囲む水をまるで操るように足で弄ぶ、何処か凛とした不思議な少女だっら。彼女の指先からはルシィの云う粒子が線のように伸び、螺旋を描きながら消えていっている。


「妾はこれでも転移魔法が使えてのぅ。礼代わりと言ってはなんじゃが、転移を使わせてもらった。ヤオヨロズ共和国で良かったかの?」

「嗚呼、ありがとう」

「いや、本来ならば巻き込んでしまった妾が礼をいうものじゃ。改めて感謝する」


頭を下げて礼を云う少女。少女が頭を下げると彼女の服がまるで意思を持つかのように小さくふんわりと膨らんでいるように見える。ルシィが小さく鼻を動かし、匂いを確信するとアーサーの服を引っ張った。ルシィの動作にアーサーも頷く。それに少女は不思議そうに首を傾げていたが言った。


「お主らはどうして此処に?」

「……捜し者をしていてね」

「ほぉ、見つかったかのぅ?」


探るような、少女らしからぬ口調と色気と云うか妖艶さを醸し出しながら少女は言う。それが少女を大人びた女性として見せてくれるが、それゆえ何処か幼さと背伸びをしているのが見え隠れしている。少女の問いにアーサーが頷けば、少女は助けてくれた二人の()()()が見つかったと素直に表情を綻ばせる。


「君は?どうしてあの集団に?」


アーサーが聞くと少女は笑みを消し、明後日の方向を見ながら思い出しながら言う。どうやら意識を失っていたためあまり自信がないようだ。


「気を失わされたようでのぅ。あまり記憶がないんじゃ。まぁ、誰でも良かっ「その可能性は低いかと」……なしてじゃ?」


少女の言葉を遮るようにルシィが言えば、少女は怪訝そうに眉を潜める。ルシィがアーサーに目配せすれば、彼は強く頷いた。二人の真剣な表情に少女にも緊張が伝染する。銀色の瞳が少女を貫く。その瞳に少女は怯えることなく凛々しくも睨み返す。その凛とした姿は戦士と言っても申し分なかった。


「単刀直入に言います。私達は『覇者』を捜しています。貴女は自覚がないようですが魔法の座『妖術』を司る『覇者』で間違いありません」

「……はぁ?!証拠は……証拠はあるんじゃろうな?……えぇ……」


ルシィから告げられた衝撃的な事実に少女は驚きすぎて背後の石像に勢いよくぶつかってしまった。シャラン!と涼やかな音が少女のスカート部分というよりも腰辺りから響き、彼女の驚愕を表す。おそらく、彼女を拐った集団はなにも知らない。が魔牙(首謀者)は少女が強い力を持つ者として認識していた。つまり、相手にバレる可能性もあったと云うことだ。……確実とは言い難いが違うとも言い難い。突然そんなことを言われても「はいそうですか」と納得出来るほど自分達の脳は簡単に出来ていない。ふと、アーサーは少女の右目に輝くものを見つけて彼女に近づいた。それにも驚く少女に「ちょっと右目見せて」と告げて右目を覗き込む。アーサーの行動に少女は何処か諦めたように脱力していた。それが全ての答えだった。


「嗚呼、やっぱり。この紋様は魔法の座だね。さすがルシィの嗅覚」

「お褒め頂き光栄です」

「……やっぱり、右目これじゃったか」


嬉しそうに笑いながらアーサーは少女の右目を覗き込んだ。右目の眼球に刻まれた紋様。それは歴史書にもあるように魔法の座を示す紋様だった。『覇者』は何処かしらに『覇者』を示す紋様()を持つ。少女の場合は瞳だったと云うことだ。結構世界中の人々は歴史書を読んでいるため証があることは知っているが紋様となると正確な形を知ることは容易くなくなる。なので知らないと云うのもあり得るし自覚がないと云うのもあり得る話なのだ。と、いつまでもアーサーが少女を覗き込んでいたため少女の頬が恥ずかしそうに赤く染まっていた。慌てて「ごめん!」と離れれば、少女は調子を取り戻そうと言う。


「で、妾が本当に『覇者』だとしてどうすると云うんじゃ?」

「ご存知の通りこの世界は魔物と戦っています。異形な化け物と決着をつけるため、主人……双神様は十二人の『覇者』を提示しました」


アルヴァナ帝国で教えてもらったことを交え説明すると、世界情勢を知っているためか微妙な納得を少女は示した。ルシィのことも教えると目を丸くしていた。右目に紋様なにかあることは知っていたが『覇者』と言う実感がまだないらしい。ガシガシとどうにか自分なりに納得しようと、整理しようと前髪を掻き上げる。それが子供らしくて少し安心したのは少女に見えるこんな彼女でも抗って、その結果がその力だと教えてくれるからだろうか。そう思うとアーサーには彼女が眩しく見えた。そう言えばディナダンも太陽のような笑みをしていたな。……早くもホームシックが始まっているようだ。アーサーはクスリと笑えば、ルシィが不思議そうな顔をしていた。


「嗚呼ーうん。分かった、分かったがのぅ……なんとも……うん」

「戸惑うのも無理はありません。皆さん最初はそうだと聞きます。時期に分かります」

「……そうかのぅ」


微妙な表情でルシィの言葉にうんうんと頷く少女。そして、納得したのか二人を鋭い瞳で見上げた。その瞳は二人を見定めているかのようであった。そうして「よしっ!」と決心したようで少女は言う。


「よし決めた!妾はお主達に着いて行こうかのぅ。他の『覇者』にも会えるし、なにより確信が持てそうじゃし!」

「それは助かるよ!全員集まってからじゃないと帰れなくてさぁ」

「それもそうじゃろうなぁ」


アーサーの心底助かったと云うのと心底ホッとしたと云う二つの感情に少女も肩を竦める。と「だが」と前置きをする。


「本格的に行く前にヤオヨロズ共和国に寄っても良いか?先程の集団についてもあるじゃろうし」

「はい、もちろんです」

「もともと最初の目的地はヤオヨロズ共和国だったし、そんな変わんないよ」

「それは良かった」


二人の承諾に少女は嬉しそうに笑う。少女は洗脳されていたとは言え、集団の被害者だ。今後のことも用意もあるのだろう。焦らせはしない。彼女の本心を優勢させたい。


「さっきも言ったけどこっちはルシィ。俺はアーサー・ロイ。よろしくね」

「よろしくお願いします」

「これはご丁寧にどうも、じゃな。妾はサグラモール・ツクヨミ。ヤオヨロズ共和国にて魔女と巫女と云う称号?を貰っておる、まぁ魔法系じゃ」


二人の自己紹介に少女、サグラモール・ツクヨミも笑って云う。サグラモール・ツクヨミは鳩羽鼠はとばねず色のショートで後ろ髪一本だけが異様に長く、濡れ羽色とグレーの光沢が少しだけ入った髪で瞳は半色はしたいろ。だが見方によっては半色と赤茶色のオッドアイにも見える。服は上が巫女服で袖には桜が枝ごと描かれている。腰からは魔法を込めた式と呼ばれる紙が吊るされ、下は膝下までの髪色と同じ色のスカート。白い足袋に草履。

アーサーとルシィとはまた違う格好で雰囲気の少女は二人に頭を下げ、親しみを込めた笑みを向ける。


サクラとも呼ばれておる。まぁ、これからよろしくのぅ、お二方♪」


サグラモールの笑みに二人も笑い返した。


名前と座は調べた時の作者の独断と偏見によります!サグラモールって名前からして和風って感じしません?(偏見)

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