プロローグ
こんにちは、こんばんは、おはようございます!お久しぶりの方はお久しぶりです!正月休みから帰還しました作者です!『色無き王~十二の色~』を読んでいただき誠にありがとうございます!ほぼ久しぶり?な世界観。変なところがあるかもしれませんが気にせず、楽しんでもらえたら幸いです。投稿日は土曜日を予備日に、月曜日と金曜日を予定しています。時間は……夕方から夜の間ですね。
それでは、長らくお待たせいたしました。文才がないかもしれない『色無き王~十二の色~』をどうぞお楽しみください。
**年前ーー
その世界に現れたのは「神」を名乗る異形な化け物だった。しかし、その世界には創造神たる者が存在した。そしてその神はこの世界での全ての神の頂点であった。
ある国のある場所。神殿のような場所。ようなと云うのは、その建物内の色が異様とでも云うのだろうか。不思議であったからだ。天井は白く、床は黒く。その中間である壁は灰色をしていた。そんな不思議な空間の中央には直径五十メートルほどの窪みがあり、窪みには水が張られていた。小さく風が吹くたびに水面が微かに揺れ、波紋を描く。そんな小池とも言えるような水場を囲むように立つのは七人。黒い床に似合わぬ質素な服装に身を包んでいる。濡れても良いようにと言わんばかりの服装だが、七人中六人各々の頭と手首、足首には質素とは打って変わった豪華な装飾を身に付けていた。金、銀と言った輝きに目を奪われそうになる。しかしそれ以上に装飾に施された彫刻は繊細で美しく、それでいて決して同じものはなく、洗礼されていた。残りの一人は頭にも手首にも足首にもなにも着けておらず、代わりと云うことか、灰色の細長い布で目隠しをしている。何処かアンバランスな格好ではあったが、この空間では正解としか言いようがなかった。そんな七人から少し距離を取ったところでは彼らを遠目に不安そうに見つめる、これまた六人がいた。こちらは先程とは違い、豪華絢爛と云う表現が合うような格好や装飾をした人々だ。しかし、豪華絢爛であろうともその主張は抑えめで静かであり、異様な空気が漂うこの場所に上手く溶け込んでいた。
すると、水面が大きく揺れた。途端に水場を囲んでいる七人が両手を組み、足首を擦り合わせてカラカラと音を奏でながら踊り出す。その躍りは繊細かつ美しく、神秘的なものだった。見ている者はもれなく感嘆のため息をついてしまうほどの美しさであり、まるで妖精達が軽やかに踊っているかのような錯覚に陥らせてくる。踊り出した七人に後ろの六人は緊張した面持ちでゆっくりと片膝をつき、こうべを垂れた。彼らがそうするあいだも七人は休むことなく踊り続ける。暫くして、水面の波紋が先程よりも大きく揺れた。それを見えているはずないのに目隠しをした人物が両脇で狂ったように踊る人々に両手を拡げて制止する。その動作を合図に踊っていた全員が両手をまるで翼のように広げ、足を止める。ゆっくりと腰を下ろして片膝をつき、両手を胸元でクロスさせてこうべを垂れた。全員がこうべを垂れた体勢になる。すると、水面上に白と黒と灰色の羽が何処から都もなく舞い降りる。三色の羽を弄ぶように白と黒の粒子が螺旋を描くように舞い踊る。それらは水面上で大きく波紋を何度も描く。と、次の瞬間、羽はあるものを形作り、粒子は色を生み出す。そうして水面上に現れたのは二人の人物。子供か大人か、女性か男性かも分からない不思議な二人。その二人は全てが対照的だった。神々しさと全てを包み込む暖かさ、慈悲深き瞳は二人が神であることを物語っていた。まぁ、羽と粒子からどのように現れたかは分からないが登場した時点で人ではないだろう。二人は静かに水面に裸足の爪先をつける。浅いわけではないのだが、確かにその二人は水面に立っていた。
「「こうべを上げよ」」
歌うような、紡ぐような、奏でるような、そんな声が響く。その声の主は先程現れた二人だ。その声に彼らは従い、こうべを上げた。こうべを上げ、二人の真っ正面に膝をつく目隠しをした人物が低い声を発する。
「お待ちしておりました。双神様」
そうまさしく二柱は神。昼と夜、表と裏、太陽と月、白と黒、陽と陰、そして創造と破壊。二つで一対の創造神、双神。それがこの二柱であり、踊りも水場もこの場所も全て双神のために捧げられた儀式の一環なのだ。此処は双神を呼び、もてなす神聖な場。
「どうでしたか?」
目隠しをした人物が軽く頭を下げつつも丁重に聞く。この中で双神と会話を交わせるのはその人物ーーおそらく彼だけなのだろう。それを示すように周囲の人々は頭を上げているものの、声を発する者は誰一人としていない。双神は片腕を絡めるようにして組み、指と指を絡ませるようにして手を繋いだなんとも仲睦まじい様子で言う。
「あれはこの世界の神でもない」
「故に偽物と云う判断」
低い声と高い声がまるで合唱するかのように響く。双神の答えに人物は頷き、周囲の人々は驚愕と納得を心の内に秘めて聞く。
「「しかし」」
「あれも混乱していた。だから、考える時間をあげて」
「神ではないけれど、答えを聞きたい」
「少ししたら答えを聞きに行こうと思う」
「何か質問ある?」
先程の威厳がありつつも威圧感であった雰囲気とは打って変わって優しく語りかけるように双神は言う。神ではないが、この世界に来たからには受け入れようと云うことらしい。ただし、敵対しなければの話だが。落ち込んでいたようなあの様子を思い出したのは、条件反射だった。
「いえ、双神様が御決めになったことです。有難い助言として受け取らせていただきます」
「もし、何処かに来たら対応してあげて。大丈夫だか」
そこで双神の言葉は遮られた。理由としては足元から響く地響きが起こったからだ。そしてもう一つ、建物の外で破裂音が響きその数秒後、阿鼻叫喚の悲鳴が響き渡ったからだ。膝をついていた人々が一斉に覚束ない足取りで立ち上がり、「どうなっている?」「誰か至急確認を!」と各々叫ぶ。状況を把握しようとしている。双神もそうしようとしてか目の前の人物に頷けば、彼も頷いた。その時、バンッ!と勢いよく壁と同化していた両開きの扉が開かれた。
「突然の入室失礼します!ご報告します!ば……化け物が襲撃してきました!」
叫ばれた報告に誰もが目を疑い、驚愕に声を失う。双神が与えた交渉は簡単に決裂し、どちらと言うまでもなく破滅へと導かれていく。世界は再び、戦争状態に入った。
……*……
そして、数年後。
ドドド、と地響きがそこら辺から響き渡っている。それと共に反響するは阿鼻叫喚の嵐。悲鳴、怒号、絶望、いくつもの感情が重なり、大きな嵐となる。それは逃げ惑う人々の足音と脅威が迫る音、そして救いの手が伸ばされる音。冷静にも状況を理解してしまった哀れな行動。
「殿下!南区で数人逃げ遅れた国民がいるとの報告が!」
「第四部隊が南区で避難誘導と討伐しているはず。第四部隊隊長に連絡魔法、そのあと第四部隊の援護に入れ」
「了解!保護の援護も?」
「嗚呼、頼んだ!」
「はっ!」
武器と武器が交差し、肉が切れる残酷も不気味な音が響く中、全ての人々に伝えるような大声が響く。しかしそれらは意図も簡単に喧騒に掻き消され、聞こえなくなってしまう。それでも雄叫びを上げ、仲間を鼓舞し、彼らは戦う。醜い、不気味な姿をした化け物に向かって武器を振るう。
〈北区、避難完了しました!〉
「負傷者数名!撤退します!」
〈敵が侵入したと思われる穴、修復完了!〉
「西区に敵侵入!撃退します!」
周囲で様々な情報が錯綜する。どれが重要で重要ではないか、緊迫感と緊張と殺気で分からなくなってしまいそうだ。不協和音が響き渡る。そんな不協和音が響く中、建物と建物の間、簡素な住宅街の道でひときわ大きく化け物を切りつける白銀の刃があった。その人物の髪も白銀で人物が振るうたびに同じ色がキラキラと輝く。人物、青年は化け物の攻撃を後方に一歩下がってかわすとその頭に剣を振り落とす。相当戦っていたらしく、化け物は脳天に突き刺さった剣を受けて倒れてしまった。しかし、そんな味方を隠れ蓑に別の化け物が人物に襲いかかる。が、人物は回し蹴りを放ち、壁に叩きつける。化け物はすぐさま立ち上がろうとするがそれよりも先に別の人物、男性が化け物に攻撃し消滅させる。その男性は気品、カリスマ性を持つ美青年と云う感じでもあるが、その凛々しい眼差しには青年と同じ強い意志が宿っている。いや、青年と同じくらいにも見えるので青年と云っても良いかもしれない。
「報告は聞いたな。これから反撃だ」
「了解……て、あれ」
男性はどうやら先程指示を出していた人のようで青年に話しかけながら同じ服装の人達の情報をもとに指示を出している。忙しそうな男性を見、青年はトンッと目の前の階段の踊り場から飛び降りる。それに男性と話していた人が悲鳴にも似た声を上げる。
「っ!なにしてるんですかロイさん!」
「アーサーなら大丈夫だから安心しな。だろうアーサー!」
声を荒げた人は「分かってるけどー分かってるけどー!」とモヤモヤとするのか地団駄する。分かっている、自分達はあれ以上にも危険な事をやってもいる。けれど、不安にも心配にもなる!そんな人を宥めながら男性が駆けていく青年に呼び掛けると彼は片手を挙げて答えた。
「任してくださいよノア様!」
「これより避難誘導が全て完了したものとし、反撃とする。敵は残さず刈り取れ!」
威厳ある、全てを鼓舞する声が青年の背後で響いた。それに青年は小さく笑みを溢し、強くコンクリートの道を蹴った。
今回は予備日ですが、区切りが良いところまで投稿するつもりです。