友を追いかけ三千里《前編》
小説を書くよ
この世には何故か上手くいき、ご都合主義のようにトントン拍子に事が運んでいくことがたまにあったりする。
いつまでも続くことは無いし、それが原因で疎まれたりする事が多くあるため、必ずしもそれが良いこととは俺は思わない。
後に引けなくなり期待に応えようとし壊れてしまう、なんて真っ平御免だ。
「俺はチート系無敵転生者が嫌いだ」
「あいつらマジで社会を舐めてるよ、全部上手くいって全て手に入るなんて幻想だし、逆に怖いだろ?」
「普通はそう考えるよ、何か裏があるって。だから俺はあんな馬鹿な連中が嫌いだ」
俺の話を頷きつつ、目を輝かせ聞いている少女は合点がいったとばかりに言葉を返す。
「つまり主様は他の転生者とは格が違うということでしょうか?」
「いや、だからね。俺はもっと慎ましく自分の身の丈に合った人生を送ろうと言ってるだけでさ」
「最強の名を欲しいままにしながらもその謙虚さを忘れない…流石です主様!!」
「聞けよ、俺の話を」
勘弁してくれ、俺はお前の思うような力や絶対的な叡智を持ち合わせてはないんだよ。
目を一層キラキラさせる少女を見つつ俺は溜息を吐いた。
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遡ること半年程前、俺はいつもの様に学校で仲のいい友達と他愛ない話をしていた。
やれ、隣のクラスの子はどうだとか。部活の様子はどうだとか、帰りにゲームセンターに寄ろうだとか。健全な高校生なら誰でもするような会話。
しかし、その日は少し気になるような話題が出てきた。俺の好奇心を擽るような、そんな話題だった。
「そういえば田中、最近の行方不明者の話知ってるか?」
「朝にニュースでやってたやつか?」
「そうそう、OLだとかヤクザとか小学生とか、無差別に行方不明者が出てるらしいよ」
「ヤクザって…普通に組の抗争とかじゃないのか?」
「いや、行方不明者には無差別だけどある共通点があったんだよなー」
得意げに話す友達の一人、チッチッチッとでも言いたげに指を振るその姿は少しイラつく。
肩を小突きたくなる衝動に駆られながらも詳細を聞く。
「『変な夢を見た』って話してたらしいぜ、そいつら」
「なんだそれ…」
「さぁ?ボクもネットの掲示板で見ただけだから細かいことは知らね」
「でも、気をつけなよ。田中お前、なんか巻き込まれ体質だし」
「ふぅ…中二病も大概にしとけよ。こっちまで恥ずかしい」
「あれ、あんまり響かなかったか」
「響く響かないとかの問題じゃねぇよ、そんな話より次の小テストの話してた方がまだ良いわ」
「いやいや、ボクは非日常にこそ憧れを抱くね、この田中と遊ぶ以外、なんの面白みもない、クソみたいな日常をぶっ壊して欲しいぜ」
口ではそう言いつつも、俺は聞いた話を何故か頭から吐き出し、忘却することが出来ずにいた。
夢とは深層心理の出る場所と言われている、行方不明者には皆共通して何か自らも意識せずにいた何かを抱えていたのだろうか。
そんなことを思っていた矢先、その友達もまた姿をくらませたのだった。
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「えー、昨日ニュースかなんかで見た人も居るかもしれないが、○○が行方不明になった。警察に捜索願いも出されている、何かわかった人は至急先生まで連絡するんだぞ」
何してやがるんだあのバカ、俺はそう言わざるを得なかった。電話もメッセージも何も通じない、おまけに一緒にやってたオンラインゲームもログインしてない。
マジで情報はゼロに近い、だがアイツは変なところで律儀な奴だった。俺に何の連絡も無しに居なくなる訳が無い。
となると誰かに攫われた?いや、アイツの戦闘能力的に、それは並の相手だとほぼ無理だろう、となると・・・。
あいつの事だ、見つけたに違いない。クソみたいな日常をぶっ壊してくれるほどの何かを。
「相変わらず全然連絡通じねぇな…」
「おい、田中お前、アイツと仲良かったよな?何かしらないか?」
先生が朝のHRが終わったあとに聞いてくる、しかし現状、アイツの所在地の情報が全くないので、何も言えない。
「俺も一昨日から連絡が取れなくなってて、他の人達と同じようなことしか言えません」
「そうか…友達が居なくなって辛いだろうが、警察の人に任せておくんだぞ、きっとすぐ見つかる」
「はい」
辛い?何を言ってるんだ、俺は「怒ってるんだ」。アイツだけ楽しそうなことを見つけ、俺を放っておいて遊んでるなど、断固として許さん。
だから、絶対に見つけ出し、俺もそこに行く。だから首を洗って待っとけ。
俺はムカつく顔でこちらを煽ってきている友の顔を思い出しながら、友人捜索を始めるのだった。
小説を書いたよ