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004 長屋

――とんとん拍子からの、一回休み。雨が続くわけでもないが、晴れが続くわけでもない。それが人生。

「えい、そこへ直れ。手打ちにしてくれる」

「手打ちにするんなら、その物騒なものをしまったら、どうなんだ?」

「そういう意味では無いわ、馬鹿者!」

「へぇへぇ。どうせ、初等教育しか受けてませんよ」

 アキミとフユトが長屋に到着すると、その前で警棒を持った軍服の青年と、算盤を持った和服の少年が小競り合いをしていた。フユトは、持っていたボストンバッグをアキミに預けると、ステッキの先を腰の高さまで掲げつつ、二人のあいだに割って入り、仲裁する。

「はい。喧嘩は、そこまで。二人とも、仕事道具は大切にしなさい」

――話の流れや見た目から考えると、野心家で熱血的そうなスポーツ系タフガイが軍官さんで、楽天家で社交的そうなヤンチャ系のイケメンが商人さんだとするのが妥当ね。

 フユトに言われた通り、青年は警棒を腰に差し、少年は算盤を懐にしまう。矛を収めた二人に安堵したフユトは、少し離れたところに控えていたアキミを手招きして呼び寄せ、改めて紹介する。

「この人は、アキミさんと言う。しばらく、西部屋に住まわせることになったから、仲良くするように」

「アキミ・G・白道(しろみち)です。よろしくお願いします」

 アキミが挨拶すると、二人は、そこで初めてアキミの存在に気付き、まず少年がアキミに近付き、フランクに話しかける。

「こんにちは、アキミさん。俺の名前は、ハルキ・R・青川(あおかわ)。住んでるのは、東部屋。お察しかもしれないけど、この近所の骨董屋で下働きしてる商人だよ。目下、彼女募集中で、年上のお姉さんは大歓迎で、ッテテテ」

 青年は、馴れ馴れしくボディータッチを試みようとする少年の耳をつまんで引き寄せると、続いて自己紹介する。

「みだりに彼女の半径一メートル圏内へ侵入しないように。――自分は、ナツカ・M・赤沢(あかさわ)。南部屋に居るから、こいつに何かされそうになったり、困ったことがあったりしたときは、遠慮なく声を掛けてくれて構わない。以上」

――ということは、フユトさんは北部屋か。

「なんだよ、カッコつけちゃって。ムッツリすけべのくせに」

「コラ。根も葉もない風評をバラまくんじゃない」

「火の無いところに、煙は立たない」

「この野郎!」

 へらへら笑いながらはやし立てる少年に、怒りに任せて殴りかかろうとした青年の腕を、フユトはステッキの柄を引っかけて止め、アキミに向かって心配そうに言う。

「この通り、騒々しい連中しかいないけど、うまくやっていけそうかい?」

「はい。そのうち、慣れると思います」

――先行き不安になってきたけど、いつまでもホテル暮らしをしてるわけにはいかないものね。ここは、我慢しなくっちゃ。贅沢を言っていられない。

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