30 双子の魔人4
通常死んだら終わりですよ?たぶん
まぁ死後の世界って楽しいんでしょうね
帰ってきた人いないから
うわ、これ昔の落語のネタじゃないか
ゆらゆらと揺れる陽炎の中、二人がゆっくりとクパルに近づく
確実に息の根を止めようという殺気がその手にこめられていた
殺気は周囲を歪めるほどに強い
「ここは 絶対 通さない!」
クパルは両手を広げて立ちはだかる
その小さな体躯では二人を止めることは不可能だろう
それでも、イアとリージーを守るために精一杯の力を振り絞った
「クパルちゃん、だめだよとめちゃぁ」
「殺しちゃうじゃないあたしたち、クパルちゃんのことを」
「まぁクパルも俺たちに殺られるなら本望だろうよ」
「安心しろよちびっ子、一撃で首を飛ばしてやんよ」
クパルはさらにその寿命を魔力に代え、原初魔法を放つ準備をした
クパルの体が電気を帯びる
「原初魔法 トール!!」
雷の神の力を体現する原初魔法
放たれた雷が魔人を襲う
「おっと、いいのか?そんなに原初魔法なんて連発して」
「もう息も絶え絶えじゃないか」
「こりゃ俺たちが殺すまでもないかもな」
あっさりと雷は斬られ消し飛ばされた
クパルの髪が白く染まっていく
命が尽きようとしているのだろう
それでもなお、力をためる
「それ撃っちゃったら次は死んじゃうよ?」
「昔の好だから最後に殺してあげようと思ったのにぃ」
「確かに これで わたしは 死ぬ」
「でも これが 最後!」
「終焉魔法 ワールドエンド!」
自らのすべての力を、命を魔法に代え、自分と敵の世界を終わらせる
究極の秘術だった
「クパル様!」
光に包まれる三人を見てイアは叫ぶ
「うわ、何だこれ!」
「あたしたちの見たことない魔法!?」
「やばい、スキルが効かねぇ!」
「ぐあぁあ!」
光は強くなる
その場すべてを照らし出すほどに
まもなく光は収まった
光の中心部では三人が倒れていた
動かない、だれも
リージーの治療を終えたイアは、ミルファにリージーを任せてクパルに駆け寄った
息をしていない
氷のように冷たく固くなったその小さな体を抱えるイア
蘇生しようにもリージーの治療で生命力のストックはなかった
意を決したかのようにイアは自らの生命力をクパルに注いだ
イアの命を帯びてその顔に血色が戻る
クパルの呼吸が戻ったところで魔人のほうを見ると
彼らは動き出していた
ゆっくりと立ち上がる魔人
「死ぬかと思ったぜ、マジに、危なかった」
「クパルちゃん、ここまで成長してたのね」
「ま、意味なかったけど」
その言葉にイアは怒りが沸き上がった
「あなたたちは、クパル様の仲間、だったんでしょう?」
「どうして、こんなことを!」
「仲間だったさ」
「元の世界に戻るまではな!」
「元の、世界?」
「あぁ、俺たちが元いた世界だ」
「平和だったぜ、魔物もいない」
「剣も魔法もない」
「平和すぎて、退屈で、ただただ死ぬために生きる毎日で!」
「あんな詰まらねぇ世界に戻りたがっていた俺たちが間違ってたんだよ」
「神隠しに合い、死んだと思われてて、異世界にいたと話したら変わり者扱い」
「誰も信じてくれなかった」
「だから、もう一度死ねば戻れると思った」
「こっちに」
「二人で手を、つないで、飛び降りたわ」
「だが、ただ俺たちは死んだだけ」
「あの時の神様ってのも迎え出てはくれなかった」
「聞いたよ、あんたも、あたしたちと同郷なんだってね?」
「え?」
「あっちの世界に希望なんてなかった」
「そうでしょう?」
「それは...」
「あたしたちはまた転生できた!」
「そしてまた邪竜がいた!」
「あたしたちにまた世界を救えと!神様が言ってくれた!」
「だから、あたしたちは、救うの」
「邪魔するものは、殺す!お前も!後ろの奴らも!」
イアめがけて双剣の片方を投げるレキィ
すんでのところでかわす、が
その眼下にカルマの剣が迫っていた
その切っ先はイアの胸を切り飛ばした
「あぐっ!」
クパルを抱えて後ろにとんだ
クパルの顔にイアの真っ赤な鮮血が降り注いでいた
その傷も、すぐに再生する
「へぇ、やっぱ人間以外に転生するととんでもないスキル持ってんのな!」
「なら、次元事消し飛ばしてやるよ!」
双子の連携は見事としか言いようがなかった
防ぐだけで手いっぱいだ
追いつめられるイア
その後ろは、炎に包まれる教会
もはや、逃げ場はない...




