18 姫は舞うように剣を振るう1
赤の魔人はイナカミ城下より数キロ離れた平原に立っていた
兵たちの演習も行われるこの場所は周囲に人のいない絶好の戦場だった
ハクラ姫「いたぞ、あれだ」
平原で何をするでもなくたっている赤い魔人
その姿は鎧を着た鬼だが、鬼にはない尾がそのものを魔人だと認識させた
腰には刀、顔には面をつけている
シムカ「仕掛けますか?」
ハクラ姫「いや、少し様子を見よう」
「しかしあの立ち姿..やはりシュオウか」
クパル「あれが、シュオウ?」
「禍々しい..」
険しい顔になる姫
すると、魔人がゆっくりとこちらを向いた
赤い魔人「待っていたぞハクラ姫よ」
そういわれ、姫は飛び出した
ハクラ姫「シュオウ..なのか?」
赤い魔人「だっただな」
「今は神より名を賜り、シュウエンと名乗っている」
「戦の将シュウエンだ」
ハクラ姫「シュオウ..いや、シュウエン、なぜここに来た」
「お前はあの時死んだのだぞ」
「アカネが気がかりで蘇ったか?」
シュウエン「あれはもう立派な戦士だ」
「気がかりだったのは、お前の方だよ、ハクラ」
ハクラ姫「!」
シュウエン「お前のことを、思い続けてきた」
「お前が美しく舞いながら戦う姿に惚れ込んだ」
ハクラ姫「シュウエン..わらわのもとに戻ってきて、くれるのか?」
シュウエン「クックック..」
シュウエンは不敵に笑う
シュウエン「何を言っている」
「俺が戻ってきたのは、お前と死合うため」
「お前との決着を着けるためだ!」
ハクラ姫「お前こそ、何を言っている...」
「私と、お前は..」
泣きそうな顔で姫は言った
シュウエン「あぁ、夫婦になるはずだった」
「だが、俺はあの日、アヤカシと相打ちし、死んだ」
「そして思った」
「お前が、お前のその強さが、羨ましいとな」
ハクラ姫「馬鹿な!お前はそのような者ではなかった!」
「優しく..気高い戦士だったではないか!」
シュウエン「表向きはな..」
姫は驚愕の表情を浮かべた
シュウエン「俺はな、ハクラ、この世で最も強い戦士になりたかった」
「それはこれから叶うだろう」
「そのためにハクラ!我が糧となれ!!」
そう言い放つと剣を抜き、目にも留まらぬ速さで一体に隠れていた伏兵たちをなぎ倒した
シュウエン「おっと、あとニ人残っているな」
シュウエンはシムカとクパルに目を向ける
シムカは杖を構えた
ハクラ姫「待てシュウエン!」
「この者達には手を出させん!」
「お前とわらわだけで死合うぞ!」
シムカ「お待ち下さい!一人では危険です!」
クパル「援護、する」
ハクラ姫「いや、これはやつと私の死合いだ」
「二人は下がっていてくれ」
そう言うと、姫は背中から無骨な棒を抜いた
シュウエン「ほう、それを抜いたということは、少しは本気になってくれたか」
姫の持つ武器、白月は自分の思い描く形に変わる金棒
かつて魔王を討伐した勇者の剣
それを打った伝説の刀匠が長年をかけて生み出したイナカミの宝刀だった
姫はそれを刀の形に変える
シュウエン「さぁ、殺り合おうか!」
シュオウは真正面から向かってくる
振り下ろされた剣を受け止める姫
しかし、その華奢な体は大きく飛弾き飛ばされた
すぐさま体制を整える姫
ハクラ姫「秘剣技!白神楽!」
舞うように相手を翻弄する剣技、オーガ族の王族にしか伝わらない剣技だった
全ての剣を受け止めるシュウエン
シュウエン「炎武!炎応!」
全てを焼き尽くす炎王神の加護を受けた剣技
シュウエンの得意技の一つ
剣に纏った炎があたりに陽炎をうつす
一つ一つが重い斬撃に次第に姫の体力が奪われていく
一瞬の隙ができた姫にシュウエンの剣が迫る
その時、炎のチャクラムがその剣を弾いた
飛んできた方向を睨むシュウエン
そこには、アカネが立っていた
シュウエン「アカネ、か」
アカネ「兄様..生き、て、いたのですね」
涙があふれるアカネ
シュウエン「アカネ」
近づくシュウエン
それに駆け寄るアカネ
ハクラ姫「よせ!近づくなアカネ!」
アカネ「え?」
アカネはシュウエンの刀に貫かれていた
アカネ「に、兄様、どう..して...」
力なく倒れ込むアカネ
シュウエン「俺の死合いの邪魔をするな」
ハクラ姫「何をしているシュウエン!」
「お前の妹なのだぞ!」
シュウエン「知らぬ。邪魔者は消す」
ハクラ姫「あ、あぁ」
アカネの姿を見て姫の怒りが吹き出してきた
ハクラ姫「お前は、やってはならぬことをした!」
「もはやお前をかつての想い人とは思わぬ!」
「我が剣をもって貴様を討ち滅ぼしてやろう!」
ハクラ姫の姿が変わり始める
純白の髪は黒く染まっていき
目はいっそう赤く光った
シュウエン「それだ!その姿になるのを待っていた!!」
「その姿のお前に勝ってこそ、我が悲願が果たされるというもの!」
再び二人の刃が火花を散らした
激しい戦闘を書きたかった




