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終わったなら~外伝~  作者: 朝倉新五郎
8/8

外伝第8話 シャングールの征服

 オサムは砂漠の一番大きな城塞都市に降り立ち城代から話を聞いた。

 シャングールに近い都市から避難民が各都市に流れてきているらしい。

 砂漠の小都市群はそもそも人が少なく小さい。

 数十万もの軍隊を相手に持ちこたえられるわけがない。

 友好関係にある都市から援軍の要請が有ったが、1万人程度の軍などではどうしようもない。


 「逃げてきた者達は陛下のご命令通り各都市が受け入れています、しかし」

 城代はオサムに

 「ほぼ全滅状態ということです。女子供、老人も含め・・・」


 オサムはそれを聞いて自分の目で確かめる事にした。

 グレートドラゴンに乗り東を見に行った。


 途中シャングール軍と思われると見たことのない程大規模な軍が行軍していた。

 その向こう側、地図で確認できる都市を見ていったが人の気配はない。

 城壁は崩され、全て焼き払われているようだ。


 「何故こんなことが出来る・・・」オサムの怒りに火が着いた。

 「この交易路を潰してどうなるっていうんだ?シャングールの考えがわからねぇ」


 シャングールは人口が多い。50万人程度を失ってもまたすぐに編成するだろう。

 「元を断たねぇと、か。皇帝に理由を訊くか、戦を仕掛けるのは嫌だしな」

 オサムはこんなことになってもまだ戦を嫌っていた。非戦闘員が巻き込まれる。

 兵士も徴兵された者達なら帰りたいはずだ。出来れば手を下したくない。


 「いや、無理だな。この規模の軍は下手に残すと野盗になる可能性があるし、潰すしかないか」

 オサムはまずは侵攻軍を全滅させた上で、2度と出来ないようにシャングールを取る事にした。


 一旦砂漠の街へ行き、全ての城門を固く閉ざし誰も出入りさせるな。と命じた。


 5日もすればクイード達の内2人が来るはずだ。それで楽に全滅させることが出来る。

 その後は今回のような侵攻軍を作り出せないように自分がシャングールを治める。

 昔の中国には禅譲という平和裏に皇帝の座を移す儀式が有ったはずだ。

 「形式だけだろうがな」オサムは地図を見ながら今後の事を考えていた。



 考えている間にクイードとハンビィがやって来た。

 オサムは2人に

 「奴らは殲滅戦を仕掛けながら進んできている、遠慮はなしだ。鬼畜共は滅ぼす」

 オサムが悩んだ末に出した結論だった。


 「その後シャングールの帝都に向かい皇宮にグレートドラゴンで降りる。」

 そこからはどうなるかわからない。皇帝の息子達をどうするか。

 規模が大きすぎてシャングール皇帝の妻達や子供達が何人居るのか。

 はたして自分に統治できるのか、全く先が見えなかった。


 「そして、皇帝の位を譲らせる、俺がシャングールの皇帝になる」

 クイードとハンビィに言った。


 その言葉にクイードとハンビィは驚きもせず

 「陛下なら可能でしょう。シャングールにも理解者は居るはずです」

 その自信はどこから出て来くるんだと思わせるような言葉を吐いた。


 「では全力で戦いますが、帝都では指示をお願いします。」

 ハンビィはこの一戦がどのような結果をもたらすかを考えていた。



 領土に入られたので被害を食い止めるため3人は飛んだ。

 そして50万以上の軍を簡単に片付けた。


 オサム達はこれほどの人数と戦うのは初めてだったが問題はなかった。

 精神面でオサムの気分が悪くなった程度である。

 しかし自分は王であるため全ては己の責任だ。他の2人は忠実に働いたに過ぎない。


 それから3人はシャングールの帝都に飛ぶことにした。

 生き残りは一人も居ない。別働隊も居ないようだった。



 オサム達は皇宮を上から眺め、広場のような場所に降りた。


 皇帝と話をするために来たが、こんなに強引なやり方では出ては来ないだろう。

 オサムは実力行使に出た。


 すると皇帝は家臣のような男に半ば引きずられる様に出てきた。

 その男はオサムの目の前にポイと皇帝を投げ捨てた。


 「私はこの国の大将軍である、皇帝陛下を連れてきた」とその将軍は言った

 「お前がシャングール皇帝か?」とオサムが言うと

 何も言わず頭をカクカク揺らすだけだった。


 「何故攻めてきた?」と訊くと

 将軍が「領土拡大のため、それで我が方の兵はどうなった?」と訊き返してきた。

 「30分も掛けず一人残らず殺した。信じられぬなら見に行けば良い」とオサムは答えた。



 『この皇帝とやらは傀儡だな、外戚辺りに国を任せ気楽に暮らしているのだろう』

 オサムはマズイ展開だなと考えた。

 これでは自分が無理矢理皇帝になったところで内乱が起きてしまう。


 オサムはそれでも禅譲を迫った。

 例の都市国家を壊滅させたのはこの馬鹿皇帝が周囲の言うままにやらせたのだろう。


 攻めてこなければ50万以上の兵も殺さずに済んだはずだ。

 オサムは激怒していた。


 オサムは一方的に脅迫した。

 「で、どうする?この国を灰にするか俺に譲るか、選べ。」

 「禅譲ならば生かしておいてやる。そうでなければ貴様も一緒に灰となれ!」

 オサムは怒りを爆発させた。


 皇帝は

 「お前などに譲る位ならこの国と共に灰になってやるわ!」と言ったので瞬間真っ二つに切り捨てた。

 強く振りすぎたので遠くの壁まで地割れが起きた。

 「民のことを考えぬ皇帝などいらぬ!死んでしまえ!」


 オサムは次に将軍を見て

 「どうする?」と訊くと後ろを向いて兵達に

 「皇帝に連なる者全て斬ってこい!全員だ!女子供も容赦するな!」

 と指示した。


 『女子供もか?しまった、やりすぎたか!?』オサムは考えたがもう遅い、兵士は皇宮に入ってしまった。


 「降伏する」将軍はあっさりと答えた。


 オサムはクイードとハンビィを呼び戻した。

 巨大なグレートドラゴンを前にしても将軍は一向に臆さない。


 しばらく何も話さずに居ると、数百人もの死体が引きずり出されてきた。


 「皇帝一族、親戚、外戚、皇帝直属の文官全て斬った。」将軍は後ろを指差し

 「並べてある、ついてきてくれ」と歩き出した。


 「これで信用してもらえるか?お前はまだ民に手出しをしていない。

  恐らく民を手に掛けることは無いのだろう、というのが俺の見立てだが?」


 オサムは正直な所ここまでして欲しくはなかった、しかしそこまで追い詰めたのは自分自身だ。

 仕方がない。こうさせた自分が責任を負おう。


 どうやらこの将軍は皇帝や皇帝一族を嫌っているようだ。

 長髪を後ろで束ね、美男子だが服の上からでもわかる程体はよく鍛えられている。


 「それでどうする?お前がこの国の皇帝になるか?俺はそれでも構わんが。」

 ロウ・ウェンという将軍は欲のない人間に見えた。


 「皇帝にはなるがお前にこの国を任せる。旧皇帝派は滅ぼせ、この国は我が国と別の帝国とする」

 まずはこの男が使えるか試す必要がある。


 オサムは約束を決めた。オサムは帝国の敵を滅ぼす。

 ロウという男はオサムを皇帝にして家臣になる。その上で帝国の運営を任せる。

 欲深い人間ならば私腹を肥やそうとするだろう。見極めるには丁度良い。


 オサムは皇帝の儀式を済ませグレイス帝国初代皇帝となった。


 「いいか、敵であろうと兵士以外は殺すな、女も襲うな。徹底させろ、わかったな?」

 オサムはロウに言い聞かせた。

 あとは様子を見るだけで良い、ロウの宰相としての手腕もわかるだろう。



 しかしオサムは気分が悪かった。そうせねばならないとしても。

 「結局は俺が招いた虐殺だな。お前達にはいつも無理をさせる、すまない。」

 オサムはクイードとハンビィに言った。


 「北方には女子供が居る、恐らく老人も。全てこの国に住まわせろ。

  資金は俺が用意する。抵抗する者だけを斬れ、後は任せる。」

 ロウにそう言ってオサム達は帰っていった。


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