外伝第6話 覚悟
この世界のしきたりなので仕方がなかったが、本当のところオサムはリムルを正室に迎えたかった。
しかしフルグリフ伯爵に属する騎士家であり、貴族に近いと言えども侍女を貴族にする訳にはいかない。
そこには厳然とした身分差が存在するのである。
オサムは悩んでいた。
「世界の決まり事を破る訳にはいかないけど、それ以外なら自分の意志でやれるはず」
そう呟いた。
オサムは正室を娶らないことにした。
いづれ戦場働きで上級貴族になれるだろう、その時に爵位を与えて正室にしてしまえばいい。
それと
誰も持っていないような指輪を作って渡そう。
噂によるとシルバードラゴンやゴールドドラゴンの牙や角、鱗で作られた物はほぼ存在しない。
一国の王ですら持って居ないものだという。
世界で最高の女性には世界で最高の指輪が似合う。
オサムは決意を固め、ドラゴンを狩ることにした。
おそらく今までの戦いの中でもっとも苦しい戦いになるだろう。
死ぬかもしれない。
しかしそれは考えていなかった。
ブラックドラゴンと戦った時にもその強さは桁外れだった。
シルバードラゴンやゴールドドラゴンでも上手くやれば倒せる自信は持っていた。
回復しながら降りるのでおそらく1~2週間はかかるだろう。
それでも普通の物では満足できない。
たとえリムルがわからなくとも、その細い指を飾るのは最高の指輪でなければならない。
オサムは不思議と恐怖は感じていなかった。
死んでも自分の世界に戻るだけ、その後換金所のリターンポイントに戻る。
しかし、その一回だけだ。その次は永遠にダンジョンと自分の世界を行き来するだけになる。
対ドラゴン用の武器も手に入れた。
それに、ダンジョンを進むにつれ、レベルも上がるはずである。
慎重に進めば必ず倒せる。
オサムは部屋に侍るリムルに向かって
「ちょっと欲しいものがあるんだけど、また1週間位冒険してくるよ」と塔へ行くことに決めた。
30階層程度なら苦労は殆ど無い。
回復薬も必要はないが、40、50、60、と進めば強敵に出会い続ける
そうなれば回復薬が尽きてしまうだろう、それは避けねばならない。
オサムはHP用とMP用のポーションやハイポーションをかなりの数揃えた。
だが、それで足りるかどうかはわからない。
オサムはレベルを上げながら戦うことにした。
無理だと感じたら戻る、そしてまた行く。
騎士の次のロードナイトになれれば・・・
必ず取ってくる。
リムルを世界一の花嫁にするため。バカだと言われようとかまわない。
オサムは塔へ向かった。