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終わったなら~外伝~  作者: 朝倉新五郎
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外伝第4話 オサムの苦悩

 オサムはクリューズが帰った後すぐに戦闘の準備をしていた。

 ビーツの黒騎士装備と腰にはダークブレイブ、背中にルーンブレイドとナイトガードの楯


 恐らく同じレベルの騎士が居たとしても簡単に斬り倒せる。

 ブルードラゴンでさえ容易く切り伏せる事のできる強力な武装だ。


 「今回は対人戦闘か・・・殺人鬼共が・・・」

 オサムはそう思い込むことで自分が人を斬る理由にしようとしていた。


 それにリムルから聞いていた話。


 リムルは元々伯爵領内の小さな平和な村で暮らしていた。

 そこに突然軍隊が攻めて来て両親を目の前で殺された。

 幼いリムルは隠れていて助かったが、その軍隊が通った後100名程居た村人はリムルを含め5人になっていた。


 村を荒らしたのはグリオン王国の兵だという。

 この時代、傭兵は戦争を口実に金のためだけに村や町を襲う。

 騎士道などというものはない。それを見て止めることもしない騎士も同罪だ。


 その話を聞いた時オサムは怒りに震えた。

 罪もない人々の命を奪い、人生を狂わせる。決して赦すことの出来ない行為。


 しかし、自分がその野蛮人を斬る事は正当なのだろうか?

 彼らにも生活があり、家族がおり、誰かの大切な人間なのかもしれない。

 その生命を奪うのは恐ろしい行為だ。


 オサムは単純に考えることにした。

 「敵は敵」だ。

 鍛錬を積み重ねて手にした力は人々を守るために使う。

 それだけを考えていればいい。


 伯爵は戦を嫌う。常に守りのためだけに戦っている。

 クリューズもそうだ。情報を集め、被害の少ない方法をいつも考えている。

 自分は最強の駒だ、恐怖を与えるための駒だ。

 二度と攻めて来れないようにする、そのためには徹底的にやるしか無い。


 オサムの腹は決まった。

 「全滅させてやる・・・」


 通常の戦は3割も兵を失えば撤退する。

 しかしそうはさせない。誰もグリオンに帰らせはしない。


 狂気だというのならそれでいい、実際そうなのだから。

 まともな人生を送れるなんて虫のいい事はこの世界に来てから考えていない。

 狂った一振りの剣。それでいい・・・俺はそれでいい。



 行軍中ずっと考えていた。

 クリューズが

 「オサム、お前は戦をしたことがないだろう?モンスターを斬るのと人を斬るのとは違う。

  私は初めて人を斬った時は混乱してしまった。大丈夫か?」

 そう訊いてきた。


 オサムはリムルのことを思い出し

 「モンスターだろうが人だろうが、敵は敵だ、斬り尽くしてやる。」

 

 『俺は狂気の剣だ、この怒り全てぶつける』そう思うオサムと

 『敵にも家族が居る、自分の行いはそれらの人々を悲しませるだろう』

 しかしその考えを必死に押さえつけた。


 「やれることだけやるさ」オサムは誰にも聞かれないように呟いた。



 戦場にたどり着くともう戦闘が始まっており、一旦双方が引いた状態だった。

 敵か味方かわからないが兵の死体が何十人も転がっていた。


 『やっぱりこういうことなんだな・・・簡単に人生は奪われる。力の使い方を間違っている』

 オサムは押さえていた怒りを爆発させ激昂した。 


 クリューズが

 「全軍突撃!敵軍の横から討ち取れ!」と命令を下すと

 「うぉぉぉぉぉー!」という声と共に敵軍の横腹に攻撃が始まった。


 オサムは先頭を走りダークブレイブを抜いて敵の側面に突っ込んだ。

 「ウジムシ共が、罪もない村を襲いやがって!」


 「ウィンドソード!ソードスラッシュ!ストラトブレイド!ウィンドスラッシュ!ブレイドスラッシュ!」

 100人以上の敵兵が倒れた。

 そのまま斬り付け、鉄の楯も鎧も紙のように切り裂いた。

 魔剣ダークブレイブはドラゴンの鱗でもあっさりと斬れる。


 「オクタスラッシュ!ブレイブブレイク!ハードストライク!アクトクラッシュ!」

 オサムの前方の敵が吹き飛んだ。


 『俺がやっていることは正しいのか?わからねぇ』オサムは一瞬だけ考えたがすぐに消えた。

 『俺は狂った一振りの剣だ、それでいい』


 「てめーら兵士は死ぬ覚悟で来てやがるんだよな!」そう叫んでメッタ斬りにしていった。

 大将を打ち取るために後方に回り込んで群がる敵、逃げる敵全て斬っていった。


 敵が退却しようとすると追いつき、斬っていった。

 「ウィンドソード!」前方の十数騎が真っ二つになって馬から落ちた。


 クリューズが近寄ってきて

 「もう良い、十分だ」と引き止めたが

 「うるせぇ!」とオサムは逃げる敵を斬っていった。


 『今止めたら誰がこいつらの罪を罰することが出来る?』

 オサムは更に追いつき、斬っていった。


 流石に馬の脚が限界に来ているようだ、十数騎が前方に去っていった。

 オサムはゆっくりと引き返しながら自分の斬った敵を見下ろしていた。

 「攻めて来なけりゃ死なずに済んだんだよ!クソヤロウが!」


 戦場だった場所に戻ると伯爵の軍とクリューズの軍で敵は全滅していた。


 オサムはクリューズに近寄り

 「十数騎逃した、全滅させられなかった、クソ!」と血まみれになった鎧を見て

 「勝ったか?」とクリューズに訊いた。


 クリューズは「ああ、完勝だ。こちらの被害は殆ど無い」と答えた。

 混乱した兵などもはや兵ではない、反撃もろくに出来なかったのだろう。


 オサムは周りがよく見えるように兜のシールドを上げた。

 「終わったのか?」クリューズに再度確認した。

 「ああ、終わった」周囲を見渡しながらクリューズが答えた。


 「そうか、疲れたな」と呟いてクイードとタキトスとハンビィを呼んだ。


 オサムが馬から降りると敵兵が転がっていた。

 『来なけりゃ死ななかっただろうが!』

 オサムは急に頭に血が上り蹴り飛ばした。


 オサムはクリューズに諌められ、のどが渇いていることに気がついた。


 水を飲み、岩に座って周りを眺めた。

 「俺は何人不幸にしたんだろう」誰にも聞こえない声で呟いた。


 「敵が諦めるまでやってやる。もう戻れねぇよな」

 水筒が空になるまで水を飲んだ。

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