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終わったなら~外伝~  作者: 朝倉新五郎
3/8

外伝第3話 戦士の力

 オサムはビーツの作った軽装のハーフプレートアーマーを着ていた。

 漆黒の甲冑で前のハーフプレートよりかなり動きやすい上に防御力が格段に上がっている。

 兜はオサムの世界の軍用ヘルメットをベースにデザインしており、通常の物とは形がかなり違う。

 豪華さよりも使いやすさを重視した構造になっている。


 オサムは剣士レベル38だが、夜叉の刀を腰に、背中にホーリーブレイドを挿していた。

 どちらも両手用の剣のため楯は持たない。

 今日はまた幽閉の森、そしてその向こうの常闇の森に行くことに決めた。


 ビーツに紹介されたクライアンというマジックアイテム師からマジックバッグを購入した。

 ヴァレスの革というレアアイテムで作られたそれは、普通のバッグと違い中がかなり広い。

 同様にグランパープルの革袋も小さ目のマジックバッグにした。

 合計で銀貨1万5千枚という非常に高価なものだがそれだけの価値は十分にある。


 マジックバックは取り出したいものを手で探ると見なくても取り出せる。

 ポーションやマジックポーションもクライアンの店で数百本単位で購入した。


 ビーツの打った剣はレベル55のファレルシャドウ、レベル60のレイブン

 レベル70のグランドソード、レベル80の黒竜の刀、それにスタンナイフだ。

 ファレルシャドウとレイブンは片手剣なので楯も持てる。


 夜、早めの夕食を終えるとすぐに壁の外に出た。

 夜叉の刀を抜刀したままゴブリン平原を歩いて行く。

 近寄るゴブリンやホブゴブリンを一撃で片付けていった。

 あれだけ苦労したフィールドボスのゴブリンナイトも簡単ではないがほぼ無傷で倒せる。

 幽閉の森ではやはりそう簡単には行かないが、時間を掛けて抜けていった。

 

 常闇の森に入ると様相が一変する。明らかに危険な、人を拒む森だった。

 まず最初に見つけたのはトロルだった。この森には多くいる。

 オサムは駆け出し一太刀浴びせた。


 トロルは反撃してきたが鎧の肩部分の分厚い装甲でほとんどダメージを受けなかった。

 HP250もあるトロルだがオサムはスキルを使わずに4回の攻撃で倒せた。

 「かなり強くなってるな?いや、ビーツの鎧のおかげか?」

 オサムは時間を惜しむかのように戦った。

 何を何匹倒したかはモンスター晶石でわかる。


 この2時間トロルだけで40匹、カオスビーストやドーンサバイアを5~6匹ずつ

 ゴブリンナイトや稀にだがレイスも単独で出現する。

 このフィールドのボスは恐らく危険だろう。時間を掛けてでもレベル50を目指す。

 ホーリーブレイドが使えるようになれば攻撃力が一気に倍となる。

 しかもエリアヒールを使えば1分でHPは全回復する。


 オサムの使えるスキルは武器の付加スキル”闇の剣撃”これは消費MPの割に強力だ。

 それにウィンドソード、ソードスラッシュ、ストラトブレイド。

 MPを回復するマジックポーションを持ってきているため、スキルは使いたい放題である。

 

 ここのボスは?危なそうなら”まだ”戦わずにおこうと考えていた。

 常闇の森はトロル、カオスビースト、ドーンサバイア、オーガナイト、ヒルジャイアント

 それにオークナイトとオークメイジが出現するようだ。


 苦労して倒したオーガナイトが普通に出てくる。しかしスキルを多用して確実に倒していった。

 ヒルジャイアントは4メルトはあろうかという巨体だ、通常攻撃では倒すのは難しい。

 闇の剣撃を多用してHPが1500ある巨体を倒した。

 オークナイトとオークメイジは単体では現れない、常に同時に出現する。

 オークメイジはどうやらファイアボールしか使えないようだが遠距離攻撃は厄介だ。

 しかもオークナイトが守っている。

 敵としてはそんなに強くはないが連携されると棍か魔法どちらかの攻撃を受けてしまう。

 HPが500程度なのでウィンドソードを連発して倒すことにした。


 オサムはかなりのハイペースで戦って居た。

 冒険当初から銀貨を30万枚持っている、これはかなりのアドバンテージになる。

 武器や鎧、楯も強力なものを買える。回復薬も相当な数を常備出来る。

 しかしやはり一番はマジックバックだった。ドロップアイテムを入れても重量を感じない。

 ヴァレスの革のグランパープルの革袋も晶石換金のために街に戻る必要を無くしていた。


 ただただ戦いだけに集中出来る。

 オサムは3日でレベル38からレベル50に上げた。通常なら無理である。

 これでホーリーブレイドを使える。

 常闇の森でボスのミルジャイアントとメレジャイアントの群れに出会ったがスキルで倒せた。

 何よりも戦い慣れしているのが自分でもよく分かる。

 剣の振り方、次を予測しての動作、魔法のタイミング全てをその身で経験した。


 オサムはゴブリン平原に戻り、ダンジョンに入ることにした。

 無理はしない。しかし徐々に敵を変えていかねばならない。

 

 ゴブリンダンジョンはゴブリンの巣窟だった。

 多数のゴブリンに混じってゴブリンナイトも相当数居る。

 つまりはここのダンジョンのボスはゴブリンナイトではないということだ。

 オサムは1層ずつ慎重に降りていった。ゴブリンナイトはもう雑魚扱いだった。


 しかし、7層目。やたらとゴブリンナイトが居る。

 「この階層がボスの階層か?」オサムはゆっくりと進んでいった。

 すると、様子の違う部屋を見つけた。扉はないが入り口が切石で豪華に作られている。


 ある程度の覚悟はしていたが、少し部屋を覗くと巨大なゴブリンが居た。

 ゴブリンキング。HPは6000もある。


 「ヤバイな」しかしオサムは部屋へ入った。

 ゴブリンナイトが10匹程一斉に襲ってきた。


 「ウィンドソード!ソードスラッシュ!ストラトブレイド!」

 オサムは今使えるスキルを全て使い、ゴブリンナイトを全滅させた。

 すると、ゴブリンキングが椅子からゆっくりと立ち上がり鎚を振り上げた。

 オサムはとっさに避けたが、部屋全体が揺れるような衝撃だ。


 「こんな攻撃食らったらマズいな」

 オサムはマジックポーションを飲んで距離を取ってスキルで削っていった。

 6000のHPを持つと言っても一撃で400~600のダメージを与えられる。

 十分に削った後最後の一撃は剣で仕留めた。

 「ふぅ・・・倒せる相手か、良かった」オサムは言ったが、剣士レベル50では通常倒せない。


 「並の剣と鎧だとまず無理だな」オサムは自分の境遇ゆえに倒せたことを分かっていた。


 それからは城門から近いこともあり、ゴブリンダンジョンを中心に鍛錬を行った。

 ビーツに頼んでいた動きやすいフルプレートやファレルシャドウをはじめとする強力な剣それに楯。


 並の冒険者では絶対に買えないものばかりを装備している。

 レアアイテムも少ないが手に入ったのでそれも渡していた。


 早く騎士になりたかったが、レベル99で転職と決めていた。

 1週間に平均して12程度レベルを上げて行く計算だ。


 鎧が頑丈なため並のモンスターの攻撃ではダメージを負わない。

 そして次々を新作の剣が出来上がるため、攻撃力はレベルと合わせて大幅に上がっていく。


 「ビーツの剣なら一月もあれば騎士になれるな。」

 その言葉通り、一ヶ月も掛からずオサムは騎士に成れた。

 しかし普通に戦ったわけではない。ボスクラスの敵と命がけで戦った結果だ。


 ゴブリンダンジョン、オーガダンジョン、トロルダンジョン全て何回も制覇した。

 回復薬だけでも1000本は使っただろう。

 ビーツの鎧もかなり傷むため、何回も修理に出した。


 「エリトール様、あなた一体どこで鍛錬しとるのですか?」

 ビーツに訊かれたことがある。

 「安全とは言えない場所ばかりだな、パーティーを組んで行くようなダンジョン」

 「そこに一人でですか?!噂になってますよ、黒騎士の戦いは素晴らしいって」

 ビーツが口にした”黒騎士”はオサムがこの世界で初めて聞く言葉だった。

 「俺がそう呼ばれてるのか?そうか、なんかかっこいいな。黒騎士かぁ」

 オサムは童心に返ったように嬉しかった。


 「それで、騎士に成ってどうですか?」

 ビーツは嬉しそうに剣を出してきた。

 「ルーンブレイド?闇霧の大剣?ダークブレイブ?すごいなこれは」

 「今だからわかるけど、ビーツの剣と鎧じゃなければまだ剣士の70程度だろうなぁ」

 オサムは剣を持ち振ってみた。

 「レベル不足で使えない物もあるけどね、このダークブレイブは本当に良い剣だな」

 オサムは騎士レベル60の剣を腰に佩いて背中にはルーンブレイドと闇霧の大剣を装備した。

 「軽いな、鍛えられてる証拠だな」

 一旦マジックバッグに入れて屋敷に戻った。


 屋敷が出来上がって2週間、オサムはまだ夜にベッドで眠ったことはない。

 かなり早い朝食をカッシュに作らせておき、それを食べて朝風呂に入って眠る。

 そして日が落ちる夕方に早めの夕食を取って日が落ちきるとダンジョンへ向かう。


 今はアレシャルの塔と呼ばれているボスばかりのダンジョンに通っていた。

 30階層まではそんなに苦労せずに進めるが、騎士レベルがどんどん上がる。


 屋敷が出来てもうすぐ一ヶ月になろうとしていた頃、オサムは70階層のブラックドラゴンをなんとか倒した。

 しかしもう十分だ、換金した晶石も200万枚を超える。

 レアアイテムの量もビーツやクライアンが驚くほどある。


 その日を境にオサムは夜出かけることをやめることにした。

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