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誰もいない村

「ソンビアタック?」

「ああ、美咲ってゲームしないんだっ」

「あんまり・・・カードぐらい」

「あんたのカードってトランプとか百人一首でしょ」

「・・・うん」

「まっ、つまり強くなる方法として、死ぬ事前提で戦うのよ」

「死んだら意味なくない?」

「大抵のその手のゲームは死んでも復活するの」


「あああ、そういう事ですか」


黙って聞いていた王女が納得した様に頷いた。


「でも、期待には応じられません」


「ん?どういう意味」

「北村様が、この世界で死んだとしても、復活する方法はありません」

「まじ、デス縛りかよ。つれぇー」

「普通そうでしょ」

「そろそろ見えてきますよ」


王女が指さした方向に倉庫のようなものが見えて来た。


「これですか」

「そうです。入りましょう」


流されるように、何処から見ても店には見えない見た目倉庫へと足を踏み入れた

私達は、間違いないと確信した。ここは倉庫であると・・・。

奥から猫耳メイドルックの娘が尻尾をぶらぶらさせながら歩いて来る。


「ミミよろしくね」

「毎度言うけど、ここは問屋なんですけどね。ふぅ、注文の品は用意してあるよ」


手招きされて倉庫の一角へと案内されていくと、武器がずらっと並んだ場所に

着いた。そこで弓を1つ取って此方に猫耳が振り返る。


「これが良いんじゃないかな。青龍の加護付なんだろ」


と美咲に青い弓を渡して来た。彼女は弓を受け取ると何度か弓を弾いて

から軽く引く真似をして確かめていた。


「あんたは、剣ね」

「ん。ちょっと違うかな。もっと太いのない?」

「両手剣ってことかい。それならこれが良いかな」


そう言って奥に行ったミミはクレイモアを担いできた。


「思ったより軽いね」

「ああ、そいつはコーティングしてあるからさね」

「どうかしたのかな」


猫耳をピコピコしていた。


「何か気に入ったのがあったかい坊や」

「これってどう使うんだ」

「ああ独鈷は魔法具だね」

「杖と違いは?」

「そっさね。どっちも魔法を補助するんだが、しいて言えば独鈷は剣の分類と

 鈍器の使い方があり、杖は鈍器のみだね」

「鈍器」

「殴れば鈍器だろ」

「剣は?」

「溜めた魔素を放出して光剣になる」

「まじか、俺これにするわ」

「これも持っていきな」


猫耳が放り投げた物を受け止めると短剣だった。


「まあ、魔素切れした時に使いな」

「ああ、そういう事か」

「それと魔素集めにもね」

「えっ、つかえねーの」

「倒した魔物に独鈷が近くに在れば勝手に吸収するから武器はなんでもいいさね」

「じゃあ、最初はこれか」


健治が独鈷を腰のベルトに押し込んでから短剣を掴んで刃を抜いてみる。


「あんた達も」


そう言って、小刀を2人に渡す。


「独鈷よりは溜まり方も回数も少ない代わりに便利な固定魔法があるのさ。

 そこの此れが赤い間は『炎』が使えるさね」


説明している間に後ろでは健治が「はっ」とか声を出して剣を持ってカッコを

付けていた。


「あちらの肩は何をしているのさな」

「見ないで上げてください」


「支払はいつもの様にお願いできますか」

「あいよ。安くしとくさね」


ミミさんと別れて、実際に魔物と対峙するのが良いかもしれないと言う事で

町の掲示板へと足を運んだ。ここは正規の依頼金が支払えない様ないわゆる

下層階級の頼み事が貼られている場所で、冒険者や力自慢が内容によっては

解決してくれるかもしれない依頼がびっしりと並んでいた。


その依頼に目を通して、王女は此れが良いかもしれませんと一枚の用紙を丁寧

に剥がすと私達の方へと戻って来た。


「この依頼者は恐らく子供だと思います。そして内容はギルルの森にいる魔物が

 村の畑を荒らすので追い返して欲しいとの事です」


「その内容の難易度は初心者に手頃かと」


チンさんが納得の顔をしてくるので、俺は1つ疑問を口にする。


「それだと魔素が溜まらないような気がするんだけど」

「確かに、しかし上級者にとって倒さずと言うのが難しくもあり、この依頼は

 おそらく初心者にしかできません」


「なにけち臭い事言ってんのよ。この字みなよ。あんたは何も感じないのかい」

「おお、そうだな」

「今回は魔法で壁を作ってみましょう」

「早速、健治の出番」

「任せとけ」


依頼書にある場所へと5人は急いで移動した。王都から約半日ほどの距離にある

村である。そこは着いた時に人の気配が無かった。


「やばい気がしない?」

「静かすぎるな」

「空き地に馬車をとめて様子を見ましょう」

「美咲は万が一の為に弓を用意ね」

「わかった」

「俺は?」

「あんたは予定通り村を囲む壁を作る。こっちはちょっと周りを見て来る」


真希は大剣(クレイモア)を肩に辺りを散策し始めた。林の奥に微かに動きを感

じて剣を構える。気配を追う様に視線を動かしてみるが何も見つからなかった。


「・・・やばいかも」


走りながら大剣を右手だけで逆手に持ち替え左手で腰の小刀を掴む姿勢のまま

言い知れぬ不安を感じる方へと足を急がせた。


林の木々が横を過ぎ去る。草木の葉が進むのを邪魔する様な気さえ感じながら

駆け抜ける目の視界の端に王女から聞かされていた魔物と思われる姿を捕らえた

その口に何かを見つけ私は大声で叫んだ。


「止まれ、豚野郎」


別に豚に見える訳ではない。ただそういう言葉が出た。

魔物は咥えたままでは分が悪いと感じたのか、何かをドサッと音を立てて落と

すと此方に視線を向けて嘶いた。


その顔目掛けて「炎」を唱える。ゴルフボール位の熱球が現れ魔物へと飛翔し

その顔を焼いて爆発する。そのたぢろぎ棒立ちにになった腹へ大剣を振り下ろ

していた。渾身の力を込めた時、腕輪が光り、白い大剣となった剣が魔物に触

れた瞬間。ドスンとインパクトを感じると魔物が吹き飛び木にドカっと、ぶつ

かってその場に落ちて気絶した。


口に咥えていたものを確認すると少女であった。旋律が走り、なんとかそれでも

血だらけの彼女の首筋に左手の腹を当てて脈を診る。


「息はある」


大剣を背にしまうと少女を抱え村へと駆け戻って行った。

まだ、持っていた小刀へ意識を込めて早く走る系の魔法はないのか考える。


「加速・・・だめか」


来た道がやけに遠く感じつつ真希は走った。

生命の糸が切れそうな、そんな気配をこの手に抱きしめて真希という少女は

力を望んだ。それは殴りつけるような力でもなく、1秒でも早く治療が出来る

と思われる王女の元へと走る力を欲した。


その時、全身を包む様な目に見えない白虎を感じた。風が追い風となる。

まるで何かに運ばれるように地面から足が離れているのにも関わらず、大地を

踏みしめる感覚が伝わり、王女の馬車の前へと滑る様に進んだ。


「姫ぇぇぇぇ」


姫と呼ばれたネフィラは咄嗟に状況を見て、地の加護を展開させる。


「じぃ」

「はっ」


チンは少女の胸に左手を当て「ふん」と何かをした。


「一時、凌ぎの手当はしましたが危険です」

「町までは戻っていられないでしょう。美咲様、治療を頼めますか?」

「私が?」

「はい青龍の加護がある。あなたなら使えます」

「わかった。やってみる。治療・・・ん。いま、頭に浮かんだのはチェロット

 とか言うのだけど」

「それで合っています」

「治癒≪チェロット・ヒール≫」


美咲の言葉は少女の周りに青白い光の様なもの包み込み。彼女の傷が見る見る

塞がって行った。


「あああああ」


少女が意識を取り戻し恐怖に顔を歪める。


「助けに来ました。あなたは助かります。お聞きしたいのですが、他の方は

 ご存知ですか?」


すると、大きく見開いた目に涙を浮かべ林の奥を指さした。


「ありがとうございます。後は任せて下さい」


王女はそれだけ言うと、後ろのチンに顔を向けた。


「じぃ、訓練など言っている状況ではなくなりました。お願いできますか」


それは質問の様な言葉ではあっても、その口調は命令だった。


「暫しお待ちを」


チンは林の奥へと駆け出して行った。


「さっ彼女を寝かせて上げましょう」

「あっ、そうですね」


馬車の中で椅子と荷物で高さを合わせ布を被せて簡易的なベッドを作り少女を

寝かせながら王女はの手が硬く握り絞められたのを真希は気がついて視線を逸

らして気がつかなかった様に振る舞った。


「助かるよね」

「ええ、すでに危機は過ぎました。後は安静にしていれば・・・必ず」


そこへ健治が壁を作り終えて戻って来た。


「終わったぜ・・・おっ、そいつは?女の子か」

「北村殿、お疲れ様です。まだ行けますか?」

「おお、と言いたいところだが。魔素が」


そう言って腕輪を見せた魔石が殆ど透明になりかけていた。


「俺は経験が無いから、当てずっぽうなんだが、あと数回って事じゃないか?」

「そうですね。あと3、いえ2回程度でしょう」

「私も・・・」

「美咲様は、慣れない治癒でしたから当然です」

「いま動けるのはうちだけってことだね」

「最悪、北村殿には腰の剣で自衛を頼みます。まずはじぃ・・・チンの情報を

 待ってからになります」


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