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健治

「騎士殿、筋は中々ですな」

「くっそおぉぉぉ、1本取るわ」


剣速、太刀筋、どれをとっても私では追えないような早業で繰り出す全てを

まるで、そよ風のようにあしらわれて激昂気味の真希が木刀を振りかざして

いるのは短髪、白髪の老剣士チンさん、彼は既に引退して書館の館長だった

のを王の命令で私達の護衛になった。

そのチンさんに町に出かけたいと言ったら自分と勝負して一太刀でも当てら

れたら許可すると言われて勝負している処。


「やぁぁぁぁぁ」


真希の中段からの流れるような、胴打ちが剣速を損なわずに面へと切り替わ

る。彼女の得意とする切り返しに初めて老剣士の立ち位置が後ろへさがる。


「ほお。今のは綺麗でしたぞ」

「くそおぉぉぉ」


ニコニコと笑う老剣士は顔色一つ崩さずに片手で弾き返した。

女性部門とは言え中、高と必ずトップ5に名を連ねた彼女にとって大人とは

言っても一太刀など簡単な事だと思っていたらしい。


「まず、その掛け声で初動がバレバレです」

「うっ?!」

「そして狙いが視線でも分りますし、美しすぎる」

「くっ」

「しかし、その若さを考えると実に素晴らしい」

「あたらなきゃ・・・いっ・・・いみがない」

「ほっほっほっ、此れでもかつて剣王と呼ばれてましたで」

「まだ、若い者にはとか言うんじゃないでしょうね」

「おや、読心術も、おありですかな」

「ん、なわけあるかぁぁぁ」

「おっ」

「えっ」


掃った木剣が消えた。すでに握力が限界だったのだろう。綺麗にすっぽ抜けて

老剣士の脇を通り過ぎようとした、その時。風が吹き老剣士のタキシードの様

な服の裾に剣があたり地面に落ちた。


「やった」

「いまのは、流石に・・・」


「じぃ、それはダメ。男らしくないわ」


と、静観していたネフィラが老剣士を鋭く見つめていた。


「分かりました。約束ですからな・・・」


いつの間にか、集まって来ていた兵士達の拍手の中、照れながら笑う真希の顔

を見つめて私も拍手を送っていた。

嬉しそうに戻って来た彼女が私の横に座ると「くやしい」と一言囁くのを聞き

ながら本心では負けたと思っている事に彼女らしさを感じながら声援と喝采に

沸いた観客に手を振るのも、また彼女らしいとも思うのであった。


「御一緒してもよろしいでしょうか?」

「どうぞ」

「真希。そういう意味じゃないと思うよ」

「えっ、ああ。そっいうこと。いいよ。で姫さんの御薦めとかある訳?」

「はい。是非というところが」

「それは楽しみだね」

「ええ、期待してください」

「そんなにハードル上げちゃっていいんですか?」

「私もまだ触れる事すら出来ないんですよ」

「へぇ」

「現役剣王なんですけどね」

「「ええええ」」


私と真希が同時に驚くのを、ニッコリと笑いながら姫様は何も持っていない手

で剣を振る仕草をして見せたが、真希は咄嗟にそれを避ける動作をした。


「やはり、素晴らしいですわ」

「・・・まじか」

「どうしたの?」

「どうやるんだ?」


ネフィラは指を2本真直ぐに立て、腰に構えると軽く握った左手の中に納めて

から「はっ」と一瞬クイッと下げ左肩がグッと上がった時、抜刀して見せた。

その指先から生まれた衝撃は彼女の正面の木にぶつかると「どん」と言う音と

共に木を揺らした。


「すっ、げぇぇぇ」

「居合いと申します。抜刀術です」


実際には風を2本の指が切る時に生まれる真空か何だろうけど、よく指が無事

なものだと感心してしまった。


「じぃは、割って見せますけどね」

「まじか、やばすぎだろ」

「姫様」

「なにか?」

「例の者が目を覚ましたとの事です」

「健治が?」

「その様ですね。行きますか?」

「はい」


私達は身元不明の不審人物がいると言われて寝ている健治を見せられて確認を

取られた。同じクラスの男子だと告げると、


「そちらの世界の知人なのですね」


と念押しされて


「そうです」


と答えたら


「それはよかった」


と、明らかに安堵の表情で答えるセオールさんに、その時は疑問に思っていたが

今からよく考えれば、突然宮殿しかも王妹の前に現れた不審人物てだけで普通に

考えても下手すりゃ有無言わさず極刑もんだよね。




☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆





「ん?ここ何処だ・・・なんで」


目を覚ますと俺は、何だか高そうな部屋の中でこれまたゴージャスなベッドに

寝かされていた。学校から帰って山に登ったところまでは思い出したが、こんな

ところに寝ている理由がまったく身に覚えがない。


「やっほぉぉぉ。起きた?」

「ん。根岸か」

「美咲もいるよん」

「どうも、北村君」

「おお、これってなんなんか知ってる?

「健治さ。もちっと美咲に感謝しないとぉ」

「なんだよそれ」

「身元引受人っていうか、そんな感じ」

「意味わかんねぇよ。それよりここどこ?」

「王宮の中」

「王宮?」

「そそっ、であんたが御姫様の花壇に不法侵入して捕まったのを美咲ちゃんに

 知り合いだから許して欲しいって事になってる訳」

「冗談・・・まじ?」


俺はドアの方から騎士甲冑に身を包んだ人達を視界に入れて言葉を飲んだ。

そしてどう見てもお姫様って恰好した女性が入って来た。このゴージャスな

部屋と仮装とは思えない年季の入った甲冑と壁に掛けてある絵画を見て、それ

でもドッキリの線を捨てきれずにいた。


「百歩譲って花壇に居たとしても、記憶がねぇ」

「黒いトンネル潜ったんじゃないの?」

「ピン霧が出てさ。やばいと思って・・・あっ」

「なになに?」

「落ちた」

「んん?」

「・・・そうだ、木の上から落ちたんだ」

「また秘密基地にいたの?成長しないねぇ」

「うるせっ」

「落ちたのがトンネルだったのかな」


黙ったままの美咲が真希に向かって話しかけた。


「ああ、そっかもしれないわね」


真希が俺に向き直って


「で、ここ何処だよの答えなんだけど、あんたが大好きな異世界ってやつ」

「まてまてまて、異世界・・・理解は出来るんだが」

「理解が早くて助かるわ」

「まてぇい。まじか、まじなのか。俺のレジェンドが・・・」

「何言っているの?」

「美咲は考えなくていいから、これはこいつの病気だから」


「何も覚えていらっしゃらないと言う事ですか?」


初めて御姫様ぽい娘からの質問に思わず。


「どちら様で」

「これは失礼しました。私はネフィラ・ワーレスと申します。そして私の横に

 いますのが私の剣師チン・エスパーダです」

「ご紹介に預かりましたチンと申します。今は剣からは遠のき書館長をして

 いました。老骨です」

「これはどうも、ご丁寧に北村健治です」


「では、此方に」


3人でネフィラ王女に言われてついて行くと祭壇の様な場所に連れられて来た。


「ここは?」

「裁定の祭壇です。ここで一人づつ、そこに立ってもらいます」


背中を根岸に押されて最初に立つ。


「どうすりゃいいの?」

「何もただ立つだけです」


『失われしものよ、汝に機会と力を授けよう』


「おおお、なんか聞こえた」


キラキラとした光が降り注ぎ、消え去ると腕に腕輪となって消えた。


「ほお。銅ですか」


老剣士は髭を撫でながら、そう言っていた後に根岸が続いた

やはりキラキラとしたものが白い腕輪になる。


「白虎とは予想通りですな」


「次は私ね」


そう言って、野崎が立つと、今度は青い腕輪になった。


「青竜ですな」


それを聞いて俺はひらめきを言葉にした。


「それって四獣ですよね」

「御存じですか。四聖獣とされていますね」

「俺のは?」

「まあ。赤を期待してなかったとは言いませんがな」

「ああ、それって朱雀?」

「ほお、ご存知でしたか。3人現れた時にもしやと思ったのですが」

「なんか、今俺。カス呼ばわりされてる気がする」

「いえ、銀も中々ですよ」


王女が口を挟んでくる。


「どんな意味が?」

「えっと」

「ん?」

「何も与えられない場合もあります」

「上は?」

「赤、青、白、緑と金、銀です」

「頭の4つは四聖獣だろうから、上から3番目ってこと」

「最低ですが」

「姫それは・・・」

「あっ、はいはい。なんか立ち位置理解しました」

「わたしゃ、ちょいビックリだけどね」

「なんだよ」

「私は剣道部、美咲は弓道部。あんたは?」

「帰宅部ですよ」

「でしょ?」

「しるか」


「此れで、腕輪の魔石が武器を持った時に力を与えてくれます」

「レベルとかあんの?」

「そのレベルと言うのが強くなると言う意味ならあります」

「魔石はパワーを使うと、赤みを失って透明に変わります。そうなると補助が

 受けられまくなります。魔物を倒すと魔物の魔素を吸収して赤みが増します」

「補充は魔物を倒せと」

「もしくは、1日以上使わない事です。それと一定以上赤みが増すとさらに

 上位の力となります」

「つまり、溜められる魔素の量が増えるという事かな」

「その通りです。限界まで溜まるとランクが上がって許容量が増えます」

「武器は明日、市街に行く予定ですから、その時にでも買いましょう」

「えっ、武器って伝説のとかないの」

「あるにはありますが、おそらく今のランクでは使えないかと思います」

「ああ、レベル制限ね。了解」


根岸は剣だろうし、野崎は弓なのは間違いないだろうから俺は何にしようか?

悩むところだな。接近と遠距離が確定なんだから、バランス的には、やはり

中距離かな・・・悩むなぁ。


「北村君、天井見て何かあるの?」

「美咲、こいつの行動は無視していいから、どうせ下らない事よ」

「そうなの?」

「どうせレベル上げにソンビアタックとか考えてるのよ。こいつは」


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