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真希

私は真希の声に目を覚ました。視線だけを動かして辺りを見ると彼女が頭を掻い

て何かブツブツと言いながら、そして叫んだ。


「あちゃー、これってやばくね」

「うっ・・・」

「あっ、起きた?」

「ここは?」

「多分、やば黒い奴の中じゃね」

「?!」

「まいったね」

「真希、随分落ち着いてる」

「ああ、美咲の今の状態は10分前に終わったからね。今は、どおすっかなって

 入って来たとこは、触ってみたけど閉じてるっぽいからさ。何かすれば開く

 かもだけど可能性低いかな」

「なんで」

「裂けめっていうか何もないんだよね。これが・・・」

「・・・化け物のお腹の中なのかな?」

「頂けない」


真希は両手を上げて見せた。


「まっ、幸いほんのり明るいし散策でもするわ」

「えっどこいくの?」

「あっち」


そう言って背中の方に拳に親指を立てて後ろを指さした。


「真希が、イケメンに見える」

「ふっ、あたいに惚れるなよ火傷するぜ」

「もう、手遅れ」

「あははは・・・さっ、行こ」

「うん」


二人は歩き出して、この空間がとても不思議な事に気がつく。それは光源らしき

ものがないこと、壁もモヤモヤとしていて発光している訳ではない。見えている

というより、もしかすると、感じているだけなのかもしれない。

どの位歩いたろうか?前方に見えた光が出口だと確信にも似た感覚で彼女と繋ぐ

手に握る力が強く伝わって来た。


「ぷはぁー」

「・・・」


薄暗い暗闇を抜けたそこは、禍々しい雰囲気を醸し出す広間だった。


「えっとお。誰?」


真希は物怖じもせずにマントの男に声をかけた。


「おお、さすがと言うべきかな。伝承の通りに現れたな」


警戒が真希の手から伝わって来る。


「おっと、忘れておった名だったな。余はこの国の王ワーレスという」

「あなたが、うちらを呼んだんかい?」

「いや、余は伝承の予言に基づいてこの場所に赴いたにすぎぬ」

「・・・」

「しかし、余の記憶では4人の筈だが」

「はっ、左様で御座います」

「この訪問を歓迎しよう」




☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆




「失礼致します。ご指示の通りにお客様は部屋の方にお連れいたしました」

「うむ。あの姿、あれが巫女か?」

「おそらく」

「後の2人はあちらに行ったか」


マントを翻してワーレス王は異界の門を見つめ立ち上がった。


「口惜しいものよの」

「・・・」

「氷河の魔女はどう出て来るかな」

「このドレイク。御身の命が在れば、その憂いを晴らして見せましょう」

「余が願うのは戦いではない」


絶対君主制の王政での王としての彼は、その智謀と大胆さで領民を支配しけして

武力を持っての統率を是としなかった事が指示されていた。

帝国の世になって1000年、奴隷解放令に始まり異種族がその出自に関係なく

暮らせる国となった、特に底辺で合った人族にとっての転機は彼の行動が左右し

たのは誰の目にも明らかであり、亜人種の一定の評価を勝ち取っていた。

魔物が跋扈する世界でその身を守る方法が乏しい人族は彼等の庇護下に入る事を

了承するしかなかったのも事実であるが、それ以上に彼の行いが、その正当性に

置いても明らかだった。魔族の頂点からの差し伸べられた手は暖かったのである。

50名近い家臣を前に彼は背を向けて歩き出す。


「セオール」

「はっ」

「後は任せる。余は少し考え事があるので自室に入る」

「畏まりました」


宮廷内の廊下を歩きながら、ふと視線を庭に向けると妹のネフィラが駆けて来た。


「兄様、お仕事は終わりですか?」

「まあ、次までの少しなら・・・」


そう答えると彼女は満面の笑顔で彼の手を引き庭へ誘う。


「こっちに面白い者を見つけましたの」

「ほお、おもしろいものか」

「はい。きっと驚きますわ」


そして手を引かれて行くと、花壇の中央に異界の門が開かれいた。


「門が、なぜここに」

「兄様、そちらではなく、その下です」


妹の声に導かれて視線を下げると花に埋もれて男が横たわっていた。


「どういう事だ」

「寝ているのですわ。わたくしが見つけた時からずっと」


視界の隅に入ったメイドに向かって彼は声をかけると、急いでメイドは彼の元へ

来ると「御用でしょうか」とスカートの裾を軽く持ち上げ会釈する。


「この者を部屋に」

「はい」

「それと、セオールを余の部屋に来るように伝えてくれ」

「畏まりました」


彼は妹の方へ顔を向けると、その愛らしい瞳の少女の頭を撫でる。


「よくぞ、知らせてくれた」


少女は目を細めて嬉しそうに微笑んでいた。

妹と別れ執務室に腰を降ろすと、肩ひじを立てて唸るような声で考えに没頭し

予言にない異邦人か・・・少し下を向き考えに集中していた。


「如何いたしましょうか?」

「・・・あっ、すまぬ。聞いてなかった」

「予言の巫女は必須として、その巫女が明らかに頼りにしている女性」

「確かにな・・・考えにくい」

「となると」

「・・・しかしな、明らかに門は本物であった。ネフィラが出現から見ている」

「なるほど」

「しばらくは、成り行きをみるしかないか」

「左様ですな」

「予言の解釈が間違っているという事は無いのだな」

「只今、そちらの方面からも調査をさせています」

「巫女と巫女を守る騎士。騎士と言うと確かにもう一人の方が納得はするのだが

 実際には、彼女の方が遥かに騎士らしい事も含めてな」


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